0281_神々の合議(006)裕也の冒険-未曾暫廢②-
--未曾暫廢②--
裕也の体は、天照大神の屋敷の前に湧出した。
「もう。戻れないわね。本物ね。いつも見てたわよ」
女性は、裕也の手を握っている。
嬉しそうでも楽しそうでもある。
「はいはい。分かりましたよ」
裕也は、観念(かんねん)した。
女性は、裕也を屋敷の客間に案内する。
玄関でショートブーツを脱ぐ。
少し高座の玄関。木彫りの鷲が飾られている。
高座を上がり木の板の廊下を進む。
左手に庭がある。
せせらぎが流れている。
屋敷の中ほどにある畳の部屋に通される。
「少しお持ちください」
部屋の真ん中に一枚座布団が置かれている。
裕也は、その上に胡坐(あぐら)をかいて座った。
暫くして、大勢の人が入ってくる。
裕也は、周りを囲まれた。
先ほどの女性が案内人役をする。
「それでは、みなさん。自己紹介をお願いします」
「鬼子母神の一族です」
「十羅刹女の一族です」
「八台竜王の一族です」
「阿修羅大王の一族です」
「八幡大菩薩の一族です」
「天照大神の一族です」
概(おおむ)ね、自らみんな紹介した。
「諸々の鬼神のみなさんです」
案内人は付け加える。
西では神は祭られた数だけ生まれるのである。
だから、一族と名乗っている。
どうやら、ここに坐した神仏の挨拶は終わったようである。
「南の地球に暮らしている裕也です。
よろしく願いします」
裕也も挨拶した。
「裕也さん。赴(おもむ)いた要件をお願いします」
案内人は言う。
「『全神仏の和平宣言』をお受けいただきたい。
要件は、それだけです」
裕也は、恭(うやうや)しく頭を畳に下げた。
天照大神の一人が答える。
「私は、裕也を認めているのですが、
認めない昔気質(むかしがたぎ)の神がいるのです。
裕也。自身で説得してみてくれませんか?」
また、違う天照大神の一人が言う。
「『南無妙法蓮華経』に帰依していないものと和平は出来ない。
裕也が言う南無妙法蓮華経は、偽りだ。
『南無妙法蓮華経』とは、仏だ」
裕也は、ピンチである。
つづく。 次回(未曾暫廢③)
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