先日、京都国立博物館『暁斎展 Kyosai』に行く。
暁斎は一度見て見たいと思っていたので、これがいい機会と勢いだつ私。
京都国立博物館は入場制限あり。長蛇の列で、待つこと二時間という場合もよくある。
私は朝一で会場に滑り込んだ。
入場はすんなりできたが、会場内は 人の山、また山。
案内監視員が、声高らかに、
「順番はございません。空いているところから、見て下さい。」
と、連呼していた。
作品群は面白かった。
私はあまりの面白さに、メモをとりながら見ていた。
明治の新しい作品だが、馴染みの歌舞伎の演目の絵や役者絵や文楽をモチーフにした物も多い。神話や民話や民衆の生活をユニークに描き上げた物、天狗やカッパなどの妖怪や幽霊、酒に事欠いて酔いで一気に描きあげた物、『暫く』を妖怪仕立てに四時間で描きあげた歌舞伎の段幕、拷問を描いた恐ろしい羽織の内側などなど・・・・・・。
これだけ多くの題材を画にしてしまうことを考えると、空恐ろしや。一体全体暁斎とはどういった人物なのか。頭の中を覗いてみたいと思うた。多趣味な画家である。
それらの内容は、私の頭の中にも 非常に強くインパクトが残る。また、メモをとった部分を考え合わせると、相当すごいことになる。
かなりの長文になるため、今回は記録だけにとどめておこう。
この展覧会は急いで観ても、ゆうに4時間以上はかかった。
部屋数は十一部屋。一部屋における作品総数の多さには圧倒され、威圧感を覚え、驚くばかりである。
大きい物から小さい物まで丹念に観ていると、正直面白さと心地良い疲れ。心とは裏腹に、足はへとへと…。
初めの部屋から、細やかに見過ぎた。初めの三室くらいは、人々の殺気さえ感じる。それくらいに楽しい作品の数々…。
グループで来ている人は良い。だが、一人で来ている人たちはこの面白さを誰かと共有することができず、ジレンマに陥る。自分の中で、感じたことや妄想が満タンになって、パンクしそうだ。へらへらとにやけながら、独り言を言っている方が多いのは、そのせいとも言える。。
多分、例外に漏れず、一人で観ていた私も…相当 イタイ!
知らない女性が、ぶつくさ笑いながら、私に、
「ねぇ!」
と、同意を求める。こういった瞬間も、また『暁斎展』の醍醐味というべきであろう。
五部屋目くらいからは、見ている人がぐっと減り、ゆっくりと楽しむことができた。
結構疲れた方が多く、後半は巻き上げて観た可、或いは二回に分けて観られたのであろうと思われる。
私とで、今回のこの展覧会は疲れ、いつもならばもう一度戻って、興味ある作品だけは二度、三度と観るのだが、今回はあきらめた。
楽しみすぎて、躰がへたった。『出口』の文字を認めると同時に、私はその二文字に吸い寄せられた。
出口で遭遇した 美術にも感心を持っていそうな、学生カップルが、
「今日はまじ!疲れた・・・。」
と言ったのが印象的。
彼らのまじめな鑑賞態度に、拍手を送りたい。
河鍋暁斎記念美術館 公式HP ↓
http://www2.ocn.ne.jp/%7ekkkb/Kyousaij.html
暁斎についてのHP ↓
http://www.kawanabe-kyosai.org/
京都国立博物館HPより『暁斎展 Kyosai』説明抜粋 ↓
河鍋暁斎(1831~89)は、かぞえ7歳で歌川国芳に弟子入りし浮世絵を学びますが、数年で狩野派に移り、11歳から19歳まで、基礎固めの時期には、徳川幕府の表絵師筆頭の駿河台狩野家で、徹底した絵画修業を積みます。独立後、明治維新をはさむ激動期には、「狂斎」と名乗って江戸の地で風刺画などを描き人気を博しました。 ところが明治3年、描いた風刺画が官憲にとがめられて逮捕・投獄され、笞打ち五十で放免という辛い目にあいます。以降、「狂」を「暁」の字に改め「暁斎」と号するようになったのでした。以降、文明開化の劇変にもけっして自らを見失うことなく、東洋画の伝統手法に工夫をくわえた魅力的な絵画を描きつづけました。 暁斎は、イギリス人建築家コンドル、ドイツ人医師ベルツ、フランス人実業家ギメをはじめ、来日外国人たちとも交流しています。急激な西欧化に走る日本の風潮を危惧した彼らは、失われつつある江戸文化に魅せられ、暁斎のとりこになったのでした。 暁斎のユニークな画風は、特に海外で関心を呼んできましたが、その全貌をつたえる大規模な展覧会は開かれたことがありませんでした。今年4月は、明治22年(1889)4月26日に暁斎が他界して120回忌にあたります。その節目をとらえ当館が企画した展覧会で、他会場へは巡回しません。 出品作は、暁斎の初期から晩年まで、選りすぐりの重要作品130余件。すべて肉筆絵画で、イギリス・オランダからの里帰り作品が24件、初公開作品は22件(うち新出11件)におよびます。展示は、8セクションで構成。奇想的な作品はもとより、暁斎の骨格を形づくった狩野派的側面をしめす作品もあわせた初の体系的な展示となります。 当館では、若冲、蕭白と、強烈な個性を紹介してきましたが、暁斎はそのラインナップに加わる画家。個性というものが、単なる奔放ではなく基礎的修練によってのみ生まれることを教えてくれます。 キャッチフレーズは「泣きたくなるほど、おもしろい」。実際に絵の前に立てば、こんなおもしろい絵描きがいたのかと、驚きと発見の喜びにひたれるはず。見逃す手はありません。