こんな木を見た 寒さに耐え 葉を落とすまいと‘ハ’を食いしばるもみじ 不安げな静脈血流を見守るように 私はもみじを見ていた こんな池を見た 汚れ果てた 臭い汚いと無視されることに慣れた水面 不安げな獣の叫びを岩清水に見立て 私は水の澱みを見ていた 木よ水よ そして汝に平安あれ 願うばかりの無力感を味わいつつ 何事も無かったかのように人は飯を喰らう 己のために 飯を喰らう