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乱鳥の書きなぐり

147; 『漆の文化史』 四柳嘉章 著  岩波新書 2009年



 (写真は奈良県の田原本考古学ミュージアムにある、盾持人埴輪です。)






2010年度 147冊目     『漆の文化史』

記録のみ




 四柳 嘉章  著

  著者紹介 

四柳 嘉章 (ヨツヤナギ カショウ)       
1946年石川県生まれ。國學院大學史学科卒業。歴史学博士。現在、石川県輪島漆芸美術館長、漆器文化財科学研究所長、美麻奈比古神社宮司。専攻、漆器考古学、文化財科学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


 岩波書店

 岩波新書  新赤版 1223

 2009年12月18日 

 224ページ 本体 798円




 久しぶりに図書館に行く。

 残念なことに『木々高太郎探偵小説選』(ミステリ叢書)が貸し出し中。

 だが、先月から求めていた『漆の文化史』が書棚に。

 これはラッキーとばかり、手にとる。


 
『漆の文化史』は思った通り、興味深い。

 特に前半は漆や赤の持つ意味合いが丹念に記され、わたしにとってはおもしろい。

 読書中に貼った付箋は前半に集中した。


 
 奈良県某町展示室には赤く(実際には茶色)染まった木棺(あと)が置かれている。

 残った赤は、水銀朱。

 あれれと読みすすめると、水銀朱が産出する地方は限られており、全国的には漆が主に使用されていたらしい。

 水銀朱は伊勢地方でとれたそうなので、伊勢との関係が深いの某町ならば、納得がいく賭場借り、一人妙に納得して遊んでいた。



 漆は9000千年も前に使用されていたとのこと。

 ホンマかいな?とばかり、読み進め、うなずく。



 奈良時代は黒漆、平安時代には赤漆。

 あとに著者の考えも付け加えられ、楽しい思い。



 黒炭や柿渋を下塗りする方法には感心。

 特に柿渋。

 京都に生まれ育ったわたしには、友人宅などでごわごわとした柿渋紙を目にする機会は多かった。

 柿渋紙は強く厚く、友禅の輪郭を描くゴムにも耐える。

 おそらく、烏帽子や紙衣にも使われていたのだろう。

 ここで話題が歌舞伎にずれてはなるまい!と、歯をくいしばる。



 ベンガラが漆の一種だとは、この本を読むまで知らなかったわたし。
   (注意:ベンガラは顔料です)
 京都祇園の壁など多くの地方で美しく彩っている。

 そうだったんだとわかりもせずに、妙に納得。

 古くは 壁に漆や赤を塗り、外からのケガレの侵入を防具といった意味合いもあるのだろうか。

 妄想はつきない。



 後半、わたしの関心ごとの一つである「文様」にも触れられている。

「蝶文様」について多くを語られていたが、これは中国の吉祥文様に通じる。(これは本文でも書かれていた)

 不思議なことに、イランでも「蝶文様」は古くから多く描かれる。

 イランも中国や日本と同様、吉祥や祈願を込めた模様、絵柄が多い。



「百足文様」も書かれていた。

 百足は毘沙門に関係が深いので、奈良県の信貴山 朝護孫寺にも金色の百足が描かれているよと嬉しい思い。

 

 全体を通して、おもしろい^^

 この本は、お勧め致します。






 岩波書店より ▼

[要旨]
 日本を代表する工芸品として誰もが認める漆器.しかし,その文化の成り立ちや,技法,社会的な広がりについては,意外にも未知のままであった.著者は,縄文から近代まで,土中より発見された漆製品に科学分析の光をあて,その謎に迫る.民俗学の手法や絵巻物・文献資料も活用し,名品鑑賞からだけでは到達できなかった,初めての文化史を描き出す.(カラー口絵一丁)


[目次]
第1章 漆をさかのぼる―縄文漆器の世界(縄文ウルシの発見;九〇〇〇年前の赤色漆塗りの衣服 ほか)
第2章 漆器が語る古代国家(古墳時代の漆の祭;捧げ、祭られる漆 ほか)
第3章 暮らしの中に広がる漆器(食品で作る「時間の物指し」;各地で働く工人たち ほか)
第4章 日本の各地で生まれる漆器―食文化の変遷の中で(広がる近世の漆器産地;合鹿椀―木地屋が塗った漆器 ほか)

コメント一覧

乱鳥より pinky様
こんばんは ☆
 pinkyさん
 いつもコメントを下さって、色々教えていただいて ありがとうございます。
 感謝!感謝!デス^^

 漆の木でかぶれたのですか?
 たいへん!たいへん!
 苦い思いでといったところでしょうか? 
 すぐに ひいたのでしょうか?

 赤は不思議ですね。
「火」「血」に通じるのと、漆はかぶれて顔などがはれ、また元に戻るという理由で、呪術的魔力が要素があったそうですね。
 昔の人も、よく考えたものです、ネ^^

 pinkyさん
 ベンガラは腐食防止に役立っていたのですか?
 ありがとうございます☆^^☆いつも教えていただいておりまする^^ワタシ
 上記録の水銀朱も腐敗防止で、木や体(遺体)にぬったそうです。
 我町自慢の出土品の一つですが、考えれば人が・・・お眠りになっていたのですね^^;;

 話はそれますが、サンガが山の岩穴で暮らされていた頃、赤の器を里の人(行事など)に貸し出したそうです。
 お願いすると山の人は姿を見せることなく穴の外に赤い器を置いてくれたそうです。
 漆とも焼き物とも書かれてないので何とも言えませんが、持ち運びから考えると漆ではないとは言い切れないのでしょうか?
 そういうと司祭に使った船も赤にぬられているものがありますね。
 衣服や顔に赤をぬったり。頭蓋骨に赤をぬったり。

 何でぬったかまでは記されてないものが多いですが、なんだか気になってきました^^
 
 柿渋を塗った味噌桶ですか?
 素敵だな*^^*
 桶の呼吸とか染みないとか腐敗しないとか、いい具合になって、おいしいでしょうね。
 手作りお味噌^^いいないいな☆

 渋柿からそんなに色々使えるなんて、どうやって発見したのでしょうね。先人はすごいですよね。
 
 漆の器は面倒なので出番が少ないのですが、これから使用する時はうんと感謝しなきゃ*^^*
 お正月が楽しみです☆
pinky
こんばんは!
http://blog.goo.ne.jp/lavieenrose_3317?fm=rss
日本に古くからある効した技法って 本当に素晴らしいものですね。

漆の木でものすごくかぶれた経験のある私にとって
その液を使ってこんなに美しい工芸品が生まれることにいまだに納得がいきません。

なんでも合成のもので済ませれてしまう今
もっといろんなものが見直されていくべきですよね。

ベンガラは木材の腐食防止に役立っていたそうです。

そういえば 母の実家にあった柿渋を塗った味噌桶をおもいだしました。
あの樽で作った味噌は プラスチックのもので作ったものとは
一味違って美味しいものでした。

Ranchoさんのおかげで またひとついいことを覚えました。
ありがとうございま~す。

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