http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100514-OYT1T00356.htm
2010年5月14日配信
記事の紹介です。
B型肝炎訴訟、国側が和解協議入り表明
2010-05-14
乳幼児期の集団予防接種でB型肝炎に感染したとして、全国の患者ら計420人が国に損害賠償を求めて10地裁に起こしたB型肝炎訴訟のうち、和解勧告が出されている札幌地裁(石橋俊一裁判長)で14日、口頭弁論が開かれ、国側は和解協議に入ることを正式に表明した。
国が話し合いのテーブルに着いたことで、10地裁での集団訴訟は新たな局面に入ったが、原告と国の主張には大きな隔たりがあり、今後の協議は難航も予想される。
午前10時からの口頭弁論で、国側は「裁判所の仲介のもとに和解の席に着くことにします」と和解協議に応じることを明らかにした。しかし、患者・感染者の救済範囲や賠償額など和解の具体案については「議論が尽くされていない」として提示しなかった。原告側弁護士によると、その後の進行協議で、国側は「7月上旬にならないと具体案は出せない」と述べたという。
B型肝炎の感染ルートは集団予防接種以外にも複数ある。このため訴訟では、〈1〉乳幼児期に集団予防接種を受けたことの証明方法〈2〉出産時の母子感染ではないことの証明方法――が争点となったが、国と原告の主張には大きな開きがある。
国はこれまで、集団予防接種を受けたことは母子手帳で確認する必要があり、母子感染の否定には母親の血液検査が陰性であることが求められると主張してきた。これに対し、原告側は「日本の乳幼児はみな集団予防接種を受けており、母子手帳は必ずしも必要ない」として、より広く救済するよう求めている。
賠償額について原告側は、少なくとも薬害C型肝炎被害者の救済基準(症状に応じて4000万~1200万円)並みを求める方針。弁護団によると、420人の原告全員を救済した場合、薬害C型肝炎被害者と同水準なら総額約93億円になるという。
ただ、B型による慢性肝炎、肝硬変、肝がんの患者は推定で計約7万人、未発症の感染者を合わせると計約110万~140万人と推定される。原告以外にも救済対象を広げた場合、「兆単位の財源が必要」(厚生労働省幹部)との見方もあり、協議は曲折が予想される。
◆「適切な検討を希望」厚労相が談話◆
国の和解協議入りを受け、長妻厚生労働相は「広く国民の理解と協力が得られる解決策を探るため、和解協議の席に着くこととした」などとする談話を発表。この中で、救済案を示さなかったことについては「和解対象者の範囲やその確認方法、和解金額など、いまだ議論が尽くされていない論点も多く、裁判所において、適切な検討を進めていただくよう、希望する」としている。
◆B型肝炎訴訟=2008年以降、全国10地裁に計420人が、集団予防接種の注射器使い回しでB型肝炎に感染させられたとして、国に賠償を求めた裁判。今回の訴訟に先行して札幌地裁に起こされた訴訟で、最高裁が2006年、国の責任を認め、原告5人全員に1人当たり550万円の賠償を命じている。10地裁のうち、札幌、福岡地裁で今年3月、和解勧告が相次いで出された。弁護団は、札幌地裁の和解協議で、他の地裁も含めた全体の枠組みを決めたいとしている。
(2010年5月14日14時08分 読売新聞)
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