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2010年3月2日配信
記事の紹介(抄出)です。
日米同盟を破壊する2つの最悪シナリオ
元大統領補佐官が普天間基地問題で警告!
マイケル・グリーン 米戦略国際問題研究所(CSIS)日本部長に聞く
普天間飛行場の移設問題で日米関係がもつれるなか、鳩山政権は移設先としてキャンプ・シュワブ陸上部を検討している。はたしてこの案は米国側に受け入れられるのか。もし鳩山政権がタイムリミットの5月までに移設先を決定できない場合、日米関係はどうなるのか。ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長などを務めたマイケル・グリーン氏に聞いた。(聞き手/ジャーナリスト 矢部武)
―キャンプ・シュワブ陸上案は米国側に受け入れられるか?
まず断っておかなければならないが、私はいま米国政府の仕事に携わっていないので、政府のために発言するわけではない。
鳩山政権が提案しようとしている普天間飛行場のシュワブ移設案の詳しい内容は知らない。しかし、この案は以前にも日本側が提案し、米国側は慎重に検討した結果、海兵隊のオペレーション上の障害が大きすぎるということで拒否した。今回、米国政府がどう対応するかわからないが、過去の状況をふまえて考えると、難しいのではないかという印象だ。
マイケル・グリーン
(Michael J. Green)
ワシントンにある米戦略国際問題研究所(CSIS)の日本部長。ジョージタウン大学国際関係学部准教授を兼務。ブッシュ前政権で国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長を務めた、米国を代表する知日派の一人。ジョンズ・ホプキンス大学にて国際関係論修士号、博士号を取得。フルブライト奨学生として東京大学大学院に留学。国会議員秘書など5年間の滞日経験をもち、日本語に堪能。
Photo(C)AP Images
―結局、辺野古案がベストということか。
それが唯一の現実的な選択肢だと思う。外務省や防衛省はこの問題に15年も取り組み、沖縄の政治状況や海兵隊のオペレーション、アジアの軍事・政治などを考慮すれば辺野古案しかないことを知っている。日本政府が新たな移設先を提案すれば、米国側はいちおう話を聞くだろう。でも、従来案を修正するなど実現可能にするための最大限の努力をせずに、他の案を受け入れてくれと言っても難しい。
―名護市長選で反対派の候補が当選し、辺野古移設は難しくなったが。
その通りだ。鳩山政権はこの選挙結果を尊重しなければならない。しかし、これは安全保障に関わる政策であり、最終的には中央政府が決定すべきだ。
一つ言わせてもらえば、もし日本政府が在日米軍に出て行ってほしいと言えば、米軍は出ていくだろう。日本は主権国家なのだから。しかし、この15年間、日米両政府は沖縄の負担を減らすために交渉し、努力してきた。そして普天間飛行場を辺野古へ移せば沖縄住民の負担を著しく軽減でき、かつ戦略的にも意味があるということで同意したのである。
―米国側はいつまで我慢できるか?
米国側はもちろん、多くの沖縄住民の支持を得ることの大切さは認識している。しかし、それと鳩山政権が普天間問題を解決するために政治的な実行力を示すことは別問題である。移設案をいろいろ検討するだけで何の決定も行わないまま時間だけが過ぎていけば、取り返しのつかない事態になりかねない。
―日米は最悪のシナリオに向かっていると?
まずは2つの悪い事態が予想される。1つは普天間飛行場の移転先が決まらなければ、米議会が海兵隊のグアム移転のために計上した予算を打ち切る可能性がある。そうすれば在日米軍の再編計画全体が暗礁に乗り上げてしまう。
2つ目は沖縄県知事選である。現在の知事は辺野古移設を容認しているが、もし次の選挙で反対派の知事が当選したら、問題解決は非常に難しくなるだろう。
普天間飛行場を移設できなければ海兵隊はそのまま沖縄に駐留し続けることになり、非常にリスクの高い状況だ。そこで新たな事件・事故が起これば、日本政府は場合によっては海兵隊を沖縄から追い出さなければならないような厳しい状況に追い込まれるかもしれない。そうなれば米国側も従わざるを得ないだろう。
たとえ両国政府がこの危機に対応できたとしても結果的に日本が米軍基地を追い出すような形になれば、日米同盟だけでなくアジア全体の安全保障にとっても非常にダメージが大きい。なぜなら沖縄の米軍基地のプレゼンスは東アジアの潜在敵国に対し、“日本や他の国に武力を行使することはできない”という戦略的シグナルを送っているからである。とくに北朝鮮がミサイル増強や核開発に取り組み、中国がミサイル、レーダー、潜水艦などを含む軍事力を拡大し続けている状況では、沖縄の基地は戦略的にも戦術面でも非常に重要なのだ。
―普天間問題の混迷は日米安保50周年にどう影響するか?
日米安保50周年の記念式典では、日米同盟の強化などを謳った共同宣言が発表された。そしてこれから日米の協力分野を拡大するための共同作業が行われていくかもしれない。しかし、普天間問題が未解決のままだったら、両国のリーダーがどんなに同盟の深化を強調してもあまり説得力がない。
―「日米同盟は基地問題だけではない」との考え方もあるが。
まったくその通りだ。日米は共にG7、APECなどに参加し、対テロ戦争、エネルギー、イラン、北朝鮮などの問題でも協力しており、普天間は一つの問題にすぎない。しかし、この問題を無視することはできない。なぜなら、在日米軍は日米同盟の基盤であるからだ。
記事の紹介(抄出)終わりです。
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