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自分の自分による自分のためのブログ。
だったけど、もはや自分の備忘録としての映画やドラマの感想しかないです。

アメリカの闇。疑わしきは徹底的に白でも黒にする国が生んだ悲劇『モーリタニアン 黒塗りの記録』

2021年11月11日 01時08分30秒 | 映画


【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:46/238
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【要素】
ヒューマンドラマ
無実の罪
司法
9.11

【元になった出来事や原作・過去作など】
・出来事
 アメリカ同時多発テロ事件(2001)

・人物
 モハメドゥ・ウルド・スラヒ(1970~)

・書籍(手記)
 モハメドゥ・ウルド・スラヒ『グアンタナモ収容所 地獄からの手記』(2015)

【あらすじ】
2005年、弁護士のナンシー・ホランダー(ジョディ・フォスター)は、
アフリカのモーリタニア出身である
モハメドゥ・スラヒ(タハール・ラヒム)の弁護を引き受ける。
9.11の首謀者の1人として拘束されたが、
裁判は一度も開かれていない。
彼はキューバのグアンタナモ収容所で
地獄のような投獄生活を何年も送っていた。
ナンシーは「不当な拘禁」だとしてアメリカ合衆国を訴える。

時を同じくして、
テロへの“正義の鉄槌”を望む政府から米軍に、
モハメドゥを死刑判決に処せとの命が下り、
スチュアート中佐(ベネディクト・カンバーバッチ)が起訴を担当する。
真相を明らかにして闘うべく、
両サイドから綿密な調査が始まる。

モハメドゥから届く手紙による“証言”の
予測不能な展開に引き込まれていくナンシー。
ところが、再三の開示請求でようやく政府から届いた機密書類には、
百戦錬磨のナンシーさえ愕然とする供述が記されていた──。

【感想】
すでに本になって出版されているため、
結末は書いてしまいますのでご注意を。

アメリカって怖い国だなと思う映画。
時の大統領はジョージ・W・ブッシュ。
9.11の首謀者の1人という容疑で逮捕されたモハメドゥだけど、
疑心とこじつけによって、
無実の人を死刑にしようとしていたアメリカ政府に衝撃。
しかもこれ実話。。。

もちろん、アメリカ側の気持ちは理解できる。
9.11によって罪のない大勢の人々が犠牲になったのだから。
しかも、アメリカって自分たちに絶対の自信を持っていそうだしね。
売られたケンカは何倍にもして返しそうなイメージもある。

がしかし、これはあまりにもずさんすぎる話だ。
ただ「疑わしい」というだけで、
きちんとした裏付けをせず、
モハメドゥを逮捕。
彼は一度も裁判が行われないまま、
8年も拘禁されていたのだ。

モハメドゥに関する調書は極秘扱い。
仮に見れたとしても、ほとんどが黒塗りという始末。
普通だったらここでお手上げ状態だろう。
それでも、ナンシーとスチュアートはそれぞれ別の立場から調査を進め、
やっとのことで、MFR(=Memorandum For Recordの略で、収容所での尋問の記録用覚書のこと)にたどり着くも、
そこには驚愕の真実が。。。

資料にはモハメドゥに対して行われた尋問の実態が書かれていた。
それはもう、殴る蹴るがマシに思えるぐらいの精神的嫌がらせの数々。
苦痛を伴う姿勢での静止が20時間、
水責め、女性看守との強制性交、
睡眠妨害、家族を襲うといった脅迫などなど、
明らかに「人を中から壊す」行為。

そんな状態での彼の自白は到底証拠として使えないとし、
ようやく裁判までこぎつけるも、
そこに至るまで実に8年だからな。。。
長すぎる。。。
ずっと夢見ていた裁判ができるシーンで感極まって涙出たよ。。。

モハメドゥの国では、
警察も信用できないし、
政府も腐っている。
そんな彼はアメリカが正義と自由の国だと信じていた。
ところが、実体はこれである。
恐怖で彼を支配していたのだ。
ショックなんてもんじゃなかったろうな。。。

最終的に彼は裁判で勝つことができたのだけれど、
オバマ政権に入ってからも、
さらに7年も拘留され続けたらしい。。。

アメリカのエンタメは面白いし、
日本よりも進んでいる分野も多いけれど、
メンツを保つことと、
そのために白を黒にしようとする執念深さは恐ろしいなと感じたよ。
ただ、それを覆すために、
正義と信念を貫き通す国民がいることもまた忘れてはならないけど。

ちなみに、本編とはまったく関係ないけど、
マーベルのドクター・ストレンジ役のベネディクト・カンバーバッチと、
DCのシャザム役のザッカリー・リーヴァイが出てるから、
アメコミ好きは注目されたし(笑)

映画『モーリタニアン 黒塗りの記録』公式サイト

10月29日(金)TOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー。あれから20年…暴かれたアメリカの闇。9.11同時多発テロの首謀者の1人として...

映画『モーリタニアン 黒塗りの記録』公式サイト

 

マルジェラの生まれやブランドを去った経緯が本人の口から明かされる『マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”』

2021年11月11日 00時16分33秒 | 映画


【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:162/237
   ストーリー:★★★☆☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【要素】
ドキュメンタリー
ファッション

【元になった出来事や原作・過去作など】
・人物(ファッションデザイナー)
 マルタン・マルジェラ(1957~)

【あらすじ】
公の場に一切登場せず、撮影・対面インタビューにも応じない。
型破りでエレガント、
突然の引退から10年以上経った今も大きな影響力をもつ謎の天才デザイナー、
マルタン・マルジェラがついに沈黙を破る。

本作の監督のライナー・ホルツェマーは、
難攻不落と思われたマルジェラ本人の信頼を勝ち取った。
「このドキュメンタリーのためだけ」という条件のもと、
ドローイングや膨大なメモ、
初めて自分で作った服など、
プライベートな記録を初公開し、
ドレスメーカーの祖母からの影響、
ジャン=ポール・ゴルチエのアシスタント時代、
ヒット作となった足袋ブーツの誕生、
世界的ハイブランド、エルメスのデザイナーへの抜擢就任、
そして51歳にして突然の引退――
これまで一切語ることのなかったキャリアやクリエイティビティについて
カメラの前でマルジェラ自身が語る。

【感想】
マルタン・マルジェラについて知ることができる貴重なドキュメンタリー。

ファッション好きでなくとも聞いたことぐらいはあるであろうその名前。
「ファッション業界における最後の革命児」
「19世紀にまでさかのぼっても10本の指に入る」
インタビューを受けた人から出る彼への言葉は絶賛の嵐。

彼がファッションデザイナーになったのは、
祖母の影響が大きい。
幼い頃のマルジェラは、
仕立て屋だった祖母の仕事を間近で見て、
将来の夢は「パリでファッションデザイナーになること」
と言っていたそうな。

とはいえ、彼には才能があったのも事実。
そうでなければ、ファッション学科における世界の御三家のひとつ、
アントワープ王立芸術アカデミーに入れるわけがない。
さらに、そこで"アントワープの6人"と並び称されるほどなのだから。

この手のドキュメンタリーは、
対象となる人物がいかに革新的で、
歴史を変え、
多くの人々を魅了したのかが重要になってくる。
マルジェラもその要素はあった。
日本に来て影響を受けた足袋にヒールをつけた靴のデザイン。
モデルの顔を覆うことで、
服や動きを際立たせるショーの作り方。
服のタグを見て、
「これは〇〇の服だ」と言われるのが嫌で、
あの四隅にステッチをつけたタグにしたこと、など。

でも、彼が他のファッションデザイナーと違った一番の特徴と言えば、
公の場に姿を現さなかったことじゃないかな。
表に出ることが好きというイメージが強いファッション業界において、
とても意外なスタンス。

ただ、それは「自分を守るため」。
辛辣な言葉を浴びせられることの多いこの業界は、
彼の性格には合わなかったようで。
若い頃に傷ついたこともあってか、
人前に姿を見せることはせず、
取材にすら応じない。
自分が作ったものについて逐一説明するのが嫌だったというのもあるけれど、
作品作りに集中する意味合いもある。
インタビューの予定を組んだら、
それだけでスケジュールが埋まってしまう。
彼はあくまでもファッションデザイナー。
創作こそが本分なのだ。

だからこそ、オンリー・ザ・ブレイブ(ディーゼルを持つイタリアのアパレルメーカー)に買収されたあたりから、
彼は自身のキャリアに悩み始める。
本職はファッションデザイナーとして服を作ること。
しかし、だんだん立場が上がり、
アーティスティック・ディレクターという立場になってしまった。
こうなると、自分で何かを作ることは難しい。
だから辞めた。
まさに、モノ作りとビジネスの狭間で、
前者を取った形かな。

ところで、この映画を観て、
しきりに出てくるひとりの日本人の名前があることに気づく。
それが、川久保玲だ。
ご存知の通り、
『コム・デ・ギャルソン』の生みの親。
ここまで海外の有名ファッションデザイナーに影響を与えていたのかと改めて痛感すると共に、
同じ日本人として誇りに感じる。

ちなみに、僕はマルジェラの服を持っていない(笑)
どちらかと言えば、
アレキサンダー・マックイーンのように、
アイコン(マックイーンでいえばスカル)となるものがあるデザインの方が好きなので、
マルジェラには手が伸びず。

「マルジェラが語る “マルタン・マルジェラ” Martin Margiela: In His Own Words」公式サイト

大ヒット上映中!公の場に一切登場しない。撮影・対面インタビューにも応じない。謎の天才デザイナー、マルタン・マルジェラがついに沈黙を破る。