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自分の自分による自分のためのブログ。
だったけど、もはや自分の備忘録としての映画やドラマの感想しかないです。

人類史上最も難しいチームビルディングを実現させた『クレッシェンド 音楽の架け橋』

2022年02月10日 22時13分33秒 | 映画

【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:17/25
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★★★
映画館で観るべき:★★★★★

【ジャンル】
ヒューマンドラマ
パレスチナ問題
音楽

【原作・過去作、元になった出来事】
・楽団
 ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団

【あらすじ】
世界的指揮者のスポルク(ペーター・シモニシェック)は、
紛争中のパレスチナとイスラエルから
若者たちを集めてオーケストラを編成し、
平和を祈ってコンサートを開くという企画を引き受ける。

オーディションを勝ち抜き、
家族の反対や軍の検問を乗り越え、
音楽家になるチャンスを掴んだ20余人の若者たち。
しかし、戦車やテロの攻撃にさらされ、
憎み合う両陣営は激しくぶつかり合ってしまう。

そこで、スポルクは彼らを
南チロルでの21日間の合宿に連れ出す。
寝食を共にし、
互いの音に耳を傾け、
経験を語り合い、
少しずつ心の壁を溶かしていく若者たち。

だが、コンサートの前日、
ようやく心がひとつになった彼らに、
想像もしなかった事件が起きる――。

◆民族紛争の当事者たちによるオーケストラという強すぎる設定

今回題材となったのは、
イスラエルとパレスチナの若者たちを集めて作られたオーケストラ。
実在するウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団がモデル。
長らく対立を続ける両者が、
オーケストラという
最も一致団結しなければならない環境に置かれるっていう設定は、
コンテンツとして強いよね。

イスラエルとパレスチナの問題は、
以下にわかりやすくまとめてあるので、
よかったら読んでみてください。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/news_seminar/jiji/jiji97/

気が合う合わないとか、
そういうレベルの話じゃない。
厳密に言えば、
2000年という長い歴史にわたる争いなので、
民族としてお互いに憎しみや嫌悪感が積もりに積もってる。
事あるごとに、
相手を罵り、
口論に発展し、
大騒ぎになり、
オーケストラの練習すらままならない。

◆無理ゲーすぎるチームビルディングの過程が見ごたえあり

会社勤めをしていても、
組織をどう作っていくかってことに
頭を悩ませる人は少なくないだろう。
それが今回は民族レベルでの不和である。
その状況をまとめていくのが、
世界的指揮者であるスポルクの役目。

まずは、自分たちのやるべきことは何かを、
みんなの共通認識として持つ。
メンバーだって、
ケンカするために集まったわけではないし、
そもそも敵意があるわけでもない。
だから、その共通認識さえしっかり握れれば、
後はとにかく話し合いの連続。
あえて相手への不満をぶちまける時間を作ったり。
相手の立場になって考えるロールプレイングをしたり。
自分や家族の身に起こった悲劇を共有したり。
そうやって、徐々にお互いを知っていくことで、
ひとつのチームになっていく過程は面白かった。

ちなみに、実際の撮影現場も、
この映画と同じような流れだったらしい。
最初はいがみ合っていたけど、
最後にはみんな打ち解け合うみたいな。

◆印象に残る"鍵"の話

これはあまり本編とは関係ない話なんだけど。
劇中に出てくるメンバーのおばあちゃんが、
首から鍵をぶら下げてるっていう話があって。
現実でも、昔のパレスチナ難民は、
首から鍵をぶら下げて生きていたらしいんだよ。
それは、追い出された人たちが、
いつか自分の家に帰れることを願ってのことなんだけど、
そういう実際のエピソードを入れ込んでくるのはいいなって思った。

◆クラシックの名曲が心地いい

ヴィヴァルディの『四季』から《冬》、
ラヴェルの『ボレロ』、
パッヘルベルの『カノン』など、
今でもいろんな場面で使われるクラシック音楽は、
いつ聴いても心が安らぐ。

しかも、演奏している楽団員役の人は、
みんな本物の演奏家たち。
映画の設定に沿って、
メインの4人以外は、
ユダヤ人とアラブ人の演奏家からキャスティングし、
演奏指導もしたとのこと。
その作り込みが素晴らしいよね。

◆そんなわけで

あまりにも溝が深い対立を背景にしながらも、
徐々にお互いを受け入れ、
一致団結して音楽を奏でていく様子はとても見ごたえがあった。
これはぜひオススメしたい映画!