谷中分水界と河川争奪(生きている由良川より)
山に雨が降ると、稜線を境として、雨水は互いに反対方向に流れていきます。雨水が集まると川の源流となります。その先の稜線の反対側にも、別の源流があります。稜線を境として、それぞれの源流は別の川の始まりとなるのです。それぞれ別々の川の始まりが接する点を分水界といいます。また、分水界が山脈である場合には、分水嶺(ぶんすいりょう)と呼びます。
降った雨が、太平洋側と日本海側とを分かつ分水界を、中央分水界といいます。 一般的に、中央分水界の標高は1,000m~3,000mあり、本州の背骨になる山脈が分水界となっています。
分水界はたいてい高い山々の尾根にあります。
中央分水界は日本列島の北から南までつながっているので、この線を境に気候はもちろん、動物、植物の生態も特徴的なものになっています。
分水界が谷の中にできると谷中分水界(こくちゅうぶんすいかい)といいます。谷の中に流域の境界ができるのは、河谷の一部に隆起などの地殻変動が起こった場合や、「河川争奪」という川が流域を奪い合う現象が生じた場合に形成されるのです。
由良川には谷中分水界が、6カ所あります。
石生分水界
本州の背骨(中央分水界)で最も低い分水界です。
兵庫県氷上(ひかみ)町石生(いそう)に、標高約95mの中央分水界。
一方は由良川に流れ日本海へ、もう一方は加古川にながれ瀬戸内海へと流れ下ります。
栗柄分水界
兵庫県篠山市栗柄(くりから)に、複雑な地形の谷中分水界があります。
篠山川、加古川を経て瀬戸内海へ、もう一方は大きく向きを変えて滝の尻川、竹田川、由良川を経て日本海へ注いでいます。
胡麻分水界
高屋川と大堰川水系との争奪になった分水界です。
京都府船井郡日吉町胡麻新町に、由良川水系の畑郷川と淀川、桂川水系の胡麻川との幅700mにも及ぶ平坦な谷中分水界があります。一方は、淀川を経て太平洋へ、もう一方は由良川を経て日本海へ注いでいます。
夜久野高原の分水界
田倉山の溶岩流によってできた分水界です。
京都府天田郡夜久野町平野、兵庫県朝来郡山東町夜久野ケ原、兵庫県朝来郡和田山町に標高約200mの谷中分水界。田倉山が買って噴火したときの火山活動で分断されたと考えられています。
上杉の分水界
八田川と伊佐津川を分ける分水界。
京都府綾部市上杉町ある、標高約100mの谷中分水界。
八田川は由良川へ、伊佐津川は舞鶴湾へ北流します。
井尻の分水界
土師川と高屋川を分ける分水界。
由良川支流・土師川の最上流部の井尻川と支流高屋川の上流・曽根川が、標高200mの瑞穂町井尻の地で谷中分水界となっています。