野生生物を調査研究する会活動記録

特定非営利活動法人 野生生物を調査研究する会の会員による活動記録です。

栗柄の分水界 (生きている由良川より)

2023-04-17 | 兵庫の自然

栗柄分水界

由良川の6つの分水界があるといいましたが、そのつづきです。

 

分水界があるのは栗柄峠という場所にあります。

県道春日栗柄線は、つづれ坂の連続でしたが現在は道路が整備され解消されています。

その峠を上がりきった場所に分水界の看板があります。

峠の上は田畑の広がる盆地となっています。ここが分水界であることは、この標識がなければたぶんわからないでしょう。

 

昔この場所は峠より西に急坂を下れば春日に、南になだらかに下れば篠山へ、北にあがれば京丹波へ向かう文字通りの交通の要衝になっていた場所でした。

 

 

栗柄は三方を山に囲まれ、栗柄集落を境とし、つづみ峠に源を発する宮田川(加古川水系)と、無名峠(杉ヶ谷)に源を発する杉ヶ谷川が同じ谷内でわずか150m余りの幅をおいて平行に流れています。

 

宮田川は、篠山川~加古川を経て瀬戸内海に注ぎます。杉ヶ谷川は、写真左の観音堂とその奥に高王山(たかおやま)観音堂横から急に西へ向かい、滝の尻川~竹田川~由良川を経て日本海側に注ぎます。

 

本来、一筋の流れに吸収されるはずの河川が突然方向を分かち、前者は加古川水系として南の瀬戸内海に下り、後者は西に流路を変え、栗柄峠を下り由良川水系として日本海に流れ下ります。

 

この地形は、約2万年まえの河川争奪によって形成されたものです。原因は、2万年前、篠山盆地は湖だったことに起因します。そのため、古宮田川はその湖に注ぎ込むのですが、水面の上昇すると河床の上昇がおこります。傾斜が緩やかになり、川の水の流れ緩やかになり、春日方面の傾斜が急なため、そちらに水の流れが強くなり、侵食をはじめ、分水界になったのです。

 

この栗柄峠から北にある鼓峠も由良川水系と加古川水系とにわかれる分水界です。

この地域は二つも分水界がみられる全国的でもめずらしい場所です。(「生きている由良川」に加筆)