野生生物を調査研究する会活動記録

特定非営利活動法人 野生生物を調査研究する会の会員による活動記録です。

石生(いそう)の分水界

2023-04-15 | 兵庫の自然

石生(いそう)の分水界

 

             

本州の中央分水界で最も低い分水界です。標高約95mの中央分水界です。

一方は由良川に流れ日本海へ、もう一方は加古川にながれ瀬戸内海へと流れます。

 

近畿の地形は太平洋プレートとフィリピン海プレートの二つのプレート運動に影響を受けています。

とくに二つのプレートの力で丹波地域は東西方向に、山地と低地が交互に連なる「うねり構造」をしています。現在、由良川と加古川の流域は低地になっています。

 

50万年ほど前の加古川は、現在の由良川の下流公庄付近まで広がっていました。それで、京都府の福知山盆地あたりが由良川との分水界になっていたと考えられています。

 

50万~60万年前に六甲山地の隆起が激しくなり、氷上地域は周りに比べて低地となっていきます。

そのため氷上や福知山は盆地となり湖や湿地となりました。

そして、福知山付近にあった湖が由良川のほうにあふれだし、由良川水系が加古川水系の上流部を奪う「河川争奪」が10万~15万年前に起きたのです。

 

いまの地形になったのは最後の氷河期が終わり、温暖化がはじまり高谷川は扇状地をつくりました。

現在の分水界ができたのは、1万~1万5000年前以降と推定されます。

 

ここは本州の太平洋側と日本海側を分ける分水嶺が最も低くなっている場所です。写真の高谷川は右が川上で左へ流れています。ここから降った雨は加古川を経て瀬戸内海側へ約70km、中央から右側が由良川を経て日本海側へ約70km流れて行きます。

 ここの地形は緩やかな扇状地形となっています。高谷川は天井川となっているので、この川の堤防が分水界となっています。扇状地の扇頂から扇端までで、約1250m続いており、この高谷川を境にして北に降った雨は由良川水系、黒井川、竹田川、由良川を経て日本海に流れていきます。南に降った雨は加古川水系となります。高谷川は佐治川、加古川に注ぎ瀬戸内海に流れていきます。

氷上回廊

石生の分水界付近は標高100m以下という低地の分水界で、氷上回廊と呼ばれています。古くからの動植物の分布にも大きな影響を与えているといわれています。他の場所では高山にさえぎられて移動できなかった動植物が、 氷上回廊では比較的容易に分布拡大できたと考えられています。

 

氷上回廊を移動してきたと考えられる植物に、六甲山で見られるユキグニミツバツツジがあります。これは日本海側の植物です。

1~2万年前の氷期に南下してきた植物が気温の変化(上昇)で六甲山に置き去りにされた植物だろうといわれています。六甲山には、他にもイワカガミ、タニウツギなどたくさんの日本海側の植物が見られます。

 氷上回廊には旧石器時代から奈良・平安時代まで続いた西日本最大規模の複合遺跡である、七日市遺跡があります。ちょうど氷上回廊の中間点にあたる場所にあります。

 旧石器時代の遺跡であることがわかったのは、姶良(あいら)カルデラから、2万数千年前に噴出した火山灰(姶良・丹沢火山灰=ATと呼ばれている)が堆積し、旧石器時代の遺物はこのATの下の層から出土したことからです。

 そのころの人はまだ土器を作ることを知らず、石や木、骨を使って道具を作っていました。氷河の影響で海水面が下がり、日本と大陸が陸つづきになり、絶滅動物のナウマン象やオオツノジカが、日本にいた時代です。

 ナウマンゾウの群れが北の日本海側から南の瀬戸内海側へと移動してきました。

それを追ってきたマンモスハンターの旧石器人は氷上回廊を狩猟の拠点として選んだかもしれません。ナウマンゾウやオオツノジカなど大型動物が移動するのをここで追い込み、狩猟したと想像するはできないでしょうか。

 また、瀬戸内特有の横割型ナイフと日本海側特有の縦割型ナイフが出土するなど、 旧石器時代からこのルート沿いに人とモノの交流が活発だったことを示す例もたくさん出土しています。

 このように動植物ばかりでなく人にとっても影響の大きな場所です。

  • 丹波市立博物館・科学館水分れ資料館

〒669-3464兵庫県丹波市氷上町石生1156

TEL 0795-82-5911

開館時間:10:00~17:00

入館料 大人:210円 小・中学生:100円

 

2021年3月20日にリニューアルオープン

模型や映像そして音声でわかりやすく中央分水界地形の説明や高瀬舟の原寸大模型、付近に生息している魚、絶滅した魚などの資料を展示しています。特に今回特に参加型の展示に力を入れています。プロジェクションマッピングなどの映像を通して氷上回廊の生き物や歴史を学ぶことができます。

 


山笑う コナラとクヌギ

2023-04-15 | 自然観察会

山笑う コナラとクヌギの花

 

春の山の草木が一斉に芽吹きはじめた。例年より1週間以上早い。

周辺の雑木林のコナラ、銀色の新芽から新しい葉を出したとおもったら、さっそく雄花をさかせています。

クヌギもコナラの葉に比べて大きい葉をひろげると、コナラよりおおきな雄花をたらしています。

コナラやクヌギは秋のドングリの時は注目される木々ですが、春はスルーされることが多いようです。

コナラの雄花は黄緑色をして垂れ下がって咲いています。雌花は、茶色っぽい色をしています。

 

コナラは伐採すると容易に萌芽するので、かつては薪炭材や水田の緑肥として重要な樹種でした。里山でも貴重な木でしたが、利用されずにどんどん大きくなっています。現在はシイタケ栽培のほだ木として利用される程度になっています。

 

クヌギも同じような状況です。

台場クヌギ

川西市の黒川は、炭の原材料を得るため、クヌギの根元から1〜2mの所で幹を伐採して、そこから発生する芽を新しい幹として成⻑させて台場クヌギとよばれる特殊な仕⽴て⽅で有名です。「猪名川上流域の⾥⼭(台場クヌギ林)」は、平成25年度に林業遺産に認定されています。