大きな岩を墓標にしたのは、
簡単に墓をほりかえせぬようにしたともみえた。
ーすると、ここにスサノオがねむっているのかー
手をあわせ、スサノオにたずねてみたとて、
返事などかえってくるわけがない。
日御碕ちかく、平らな草原の真ん中にすえられた墓石に
夕日がにじみだしてきていた。
「おおなもちは・・?」
スサノオの後をおったといってはいたが、別の場所で自害したということにしているのだろう。
にぎはやひを案内させたアマテラスもまた、ともにやってきており、ともにスサノオの墓にぬかづいていた。
「おおなもちは、天まで届く社のほうにうつしてやろうとおもうておる」
ーえ?-
「社はスサノオのためではないのか?」
アマテラスは不思議な顔でにぎはやひをみつめた。
「スサノオとともにということか?」
にぎはやひは尋ねなおした。
「いや」
はっきりとアマテラスが否定した。
「な?なにゆえ?」
おおなもちは、スサノオのために社の築造をねがったのではないか?
その心をくんでやったのではないか?
「出雲を捨て、逃げ出したスサノオをなぜ、まつってやらねばならぬ」
ーえ?-
「ひきかえ、おおなもちは、国を譲り、多くの争いに民衆までがまきこまれまいと心を砕いた。出雲の長はスサノオでなくおおなもちである」
ーうそだー
天に届く社は血筋殺しの怨念をふさぎこむためのものだ。
ーあ・・・-
気が付いたことが、にぎはやひを怒りに震えさせていた。
その社にスサノオをまつれば、アマテラスがおこなった惨殺が明白になる。
アマテラスはそこまで先をよんだということになる。
だから、スサノオを祀りながら、スサノオを祀ったとはいえない。
かわりにもっともらしい理由でおおなもちを祀りあげる。
おそらく、祀りの祭壇はもとより、社には、スサノオを封印する仕組みがほどこされていく。
だが、外聞は国譲りの功、民衆を思う出雲族の長、おおなもちの御霊を慰めるためということになる。
かてて、スサノオのあとをおった儀に厚い男ともいわれよう。
ーそこまで、考えてスサノオが逃げ出したという発案だったのか・・-
ずるがしこいといえば、それまでだが、
民衆の心をいかにひきつけ、あやつるかにたけすぎている。
ーそらおそろしい・・・-
にぎはやひはこの先、この国がアマテラス一色になると思った。
ーそらおそろしいほど、頭がまわるー
そして、巫としてのアマテラスがもう一人の巫女の存在を握りつぶすのは
もうまもないことだとおもえた。
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