憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

-ジンクスー 5

2022-12-06 15:41:31 | ボーマン・ボーマン・5 -ジンクスー

「問題はそこさ。

俺はその言葉どおりの意味にしか、考えてなかった。

だけどな、ハロルドが言ってる意味は違う。

お前はハロルドが居なくても、一人になっても

ハロルドを思いながら生きていかれる女だって意味さ。

多分な、今の女はハロルドがいなくなったら、

ほかの男をさがす。

だけど、お前はほうっておいても、ハロルドを思ってる。

ほかの男にとられるかもしれない。

ほかの男にひかれるかもしれない。

そういう心配をしないでおける女はもう手放したってかまわないわけさ。

ほうっておいたって、お前はハロルドのものでしかない。


ハロルドはそこに安心しきっている。


そして、ほかの男じゃだめな、お前を熟知してる。


だから、お前がほかの男にたよったり、よりかかることはない。


そういう風におまえのことをなめてんだよ」


「そ・・そんなことないわよ・・・・。

ううん・・そうかもしれない。

だって、私は・・本当に・・ハロルドのことしか・・」


「まあ。そこだよ。

誰にも頼らず、誰にも寄りかからず、ハロルドだけを思う。

そこは確かに美談だよな。

だけどな、その強さが逆にアダになっちまってる。

おまえのそういう馬車馬目線ってもの自体がかわらないと

ハロルドもかわらないさ」


「ハロルドがかわる?」


「そうさ。もっと、しっかりお前をつかまえとかないと

ほかの男にとられちまう。

いい加減、おまえにあまえてる場合じゃないなって

きがつくわけさ」


「私が馬車馬視線?」


「そう。

ハロルド教の信者さまだよ。

一生懸命信じてるハロルドがおまえをどうあつかってる?

俺は目には目をなんて、みみっち考え方じゃなくてな、

世のなかにはいくらでもいい男がいるんだってこと。

そこをわかってほしいわけだ。

いい男がいて、その上でハロルド教をやってるならいいさ。

でも、そうじゃない。

色んないい男がいて、その中からハロルドをえらんでる訳じゃない。

選ばれたって満足もない男だから、なおさら、おまえのことなんか

どうでもよくなってしまう。

そして、もうひとつ・・」


「な・・なに?」


「本当はおまえは、おもいっきり、頼りたい甘えたい。

それをほかの男を代替でやったら、

そのまま、その男のものになっちまう弱い女でしかない。

だから、自分をくずすまいと必死になってるけどさ・・。

それって、本質的にはハロルドの弱さと同じじゃねえか?」

「そして、これが、一番決定打かもしれねえ。

おまえは自分なんか、ほかの男にかまってもらえねえって思ってる。

こんな自分なんか、かまってもらえないって、ことを

ごまかすために、ハロルドだけ。って、かんがえるけど、

それって、ハロルドにしたら、誰にも相手にされない女のなぐさめ相手じゃねえのかな?

そんな女に貴方だけよっていわれたって、

ありがたくもねえどころか、お前のコンプレックスの生薬でしかねえわけさ。

お前がそうやって、自分の亭主をコンプレックスの穴埋めにつかってるんだから、

当然、そいつは、自分のコンプレックスをほかで埋め合わせる。

本当に必要。

あるいは、ほかにいくらでもいい男がいるのに、自分をえらんでくれたって

思える女のところにいって、コンプレックスを解消したがる。

だけど、俺にいわせりゃ、

そんな思いではじまったことが、たとえば、おまえのような、結果をうむんだったら、

ハロルドだって、おなじ結果をうむよ。


相手の女だって、馬鹿じゃない。


女房への不満を穴埋めさせられる役目なんか、断るさ。


で、女に振られて、行き場所がなくなったハロルドはお前のところに戻る。


いぜんとして、問題は残ってる。


また、同じ結果だし、おまえも、ハロルドしかいないって、コンプレックスの裏返しで

しかない思いで、ハロルドをうけいれるけど、

これも、また、ハロルドにとっては、惨めなことだろう。


まあ、お前も惨めだと思うよ。


そんな風にしか扱われないってことはな。


だけど、その原因はおまえのコンプレックスのせいさ。


いくらでも、ほかの男にたよっても、かまわないし、

おまえは、かまわれるだけのものは、もってるよ。


そこのところをきちんと、たてなおして、

ハロルドがもどってきたら、どうするか、

決めるべきだと思う」


ま~~~。なんちゅう長い科白をくっちゃべるボーマンなんでしょ。

言いたいことはわかるけど、現実問題、リサをかまってるのは、

ボーマンなんだよ。

それ、俺にたよってこいっていってることにもなる・・・。

そんなこと、いっちゃって・・

大丈夫なのかな?

いわゆる、ボーマン理論を黙って聞いていたリサだったけど、

確かにボーマンの言うとおりかもしれないって、

リサはおもっていた。


「そうね。

私、ハロルドじゃなきゃだめだって、思い込もうとしていたところがある。

でも、それが、なぜなのか、って、ことも、

その事がハロルドをおいつめていたなんて、ことも、

かんがえてみたことがなかったわ」


リサがそう思うのなら、話は早い。

「俺さ、おまえは、もっと、理想をたかくもっていいしさ、

それだけの男を手にいれられる女だと思うよ。

優しいっていうのか、

責任感重大ってのか、よくわかんねえけどさ、

つまんねえ男をふりすてちまったら、

お前は自分が罪を侵したような気分になるんじゃねえか?

それだってさ、

結局、自分が大事なだけだろ?

悪人になりたくないためだけに、自分をがんじがらめにしてさ・・

なあ・・

こうやって、離婚つきつけられた以上、もう、

お前は自由なんじゃねえか?


新しく、ほかの男とやり直せっていってるわけじゃないんだよ。

自分を縛ってるコンプレックスをほどいちまったらどうだよ?

そうしたら、本当にお前は自由でさ。


そのうえで、ハロルドをえらびなおそうが、

ほかの生き方をかんがえようが、

俺はどっちでも良いと思う。


ようは精神的にハロルドと切れて、

お前自身になるってことじゃねえのかな?」


なんだか、ボーマンの言葉がひどく温かい。

リサという人間の生き方を本当に思ってくれる。

「ボーマン・・・・ありがとう・・」


気丈なリサにやっと涙があふれてきた。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿