「あの・・。なんで、母さんがでていっちゃったの?」
父さんは大きく息を吸った。
はきだしおえると、おもむろに言葉が続きだした。
「いずれ、判ること・・なんだけど、もうすこし、お前が
大人になってから、話したかった」
それは、話すという意味なんだろうか?
話したくないという意味なんだろうか?
「でも、おまえが、とっくに知っていたのなら・・・」
父さんが迷っていた。
「大丈夫だよ。僕は少々のことじゃおどろかない」
父さんは、僕の目をじっと見た。
「おまえの本当の母さんは、父さんの妹なんだ。
シングルマザーってきいたことあるかな?」
え?
それ、
つまり・・・。
父さんが本当の父さんじゃないってこと?
「しってる・・」
やっと、答えた僕を父さんがじっとみてた。
「冴子は、道ならぬ恋・・だったんだろうな。
どうしても、相手の名前を口に出さなかったんだ。
おじいさんが、おこりまくって、居場所をなくした冴子が父さんのところににげてきたんだ。
父さんがお前を産みたいという冴子をかばって、
お前がここで、生まれた」
「う・・ん」
「そして、父さんのほうも、結婚がきまっていたから、
まもなしに、かあさんと結婚することになったんだけど・・
冴子が、でていったのは、かあさんと結婚するちょっと、前だった。
まだ、眼がはなせないよちよち歩きの子供をだかえて、生活などできないし、
両親がそろっていない環境のうえ、保育所に子供をあずけるしかなくなる。
母さんがな、預からせてくれないかって、そういってくれたんだよ。
冴子も自分の人生をあゆみたかったんだろし、父さんの新しい生活を考えて、ここに残ることもできなかったんだろう」
「両親揃った生活・・」
「そうだよ。冴子はお前の父親と結婚することもできなかったから・・
父親がいない暮らしと父さんと母さんの居る暮らしと
よくよく、考えて決心したんだと思う」
「僕の父さんって?」
かなしそうに、父さんは首をふった。
「冴子は話さない。お前と離れたあとは、もう、その人とも別れたんだと思う。多分、お前にすまないという思いだったんだろう。
冴子は捨てられたのかもしれない。だから、いっそう、話したくないのかも・・」
「そう・・」
父さんが父さんじゃなくて、
「叔母さん」が本当の母さんで、
本当の父親はだれかわからない・・。
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