憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

風薫る丘の麓で・・8

2022-12-19 10:41:39 | 風薫る丘の麓で

「あの・・。なんで、母さんがでていっちゃったの?」
父さんは大きく息を吸った。
はきだしおえると、おもむろに言葉が続きだした。
「いずれ、判ること・・なんだけど、もうすこし、お前が
大人になってから、話したかった」
それは、話すという意味なんだろうか?
話したくないという意味なんだろうか?
「でも、おまえが、とっくに知っていたのなら・・・」
父さんが迷っていた。
「大丈夫だよ。僕は少々のことじゃおどろかない」
父さんは、僕の目をじっと見た。
「おまえの本当の母さんは、父さんの妹なんだ。
シングルマザーってきいたことあるかな?」
え?
それ、
つまり・・・。
父さんが本当の父さんじゃないってこと?
「しってる・・」
やっと、答えた僕を父さんがじっとみてた。
「冴子は、道ならぬ恋・・だったんだろうな。
どうしても、相手の名前を口に出さなかったんだ。
おじいさんが、おこりまくって、居場所をなくした冴子が父さんのところににげてきたんだ。
父さんがお前を産みたいという冴子をかばって、
お前がここで、生まれた」
「う・・ん」
「そして、父さんのほうも、結婚がきまっていたから、
まもなしに、かあさんと結婚することになったんだけど・・
冴子が、でていったのは、かあさんと結婚するちょっと、前だった。
まだ、眼がはなせないよちよち歩きの子供をだかえて、生活などできないし、
両親がそろっていない環境のうえ、保育所に子供をあずけるしかなくなる。
母さんがな、預からせてくれないかって、そういってくれたんだよ。
冴子も自分の人生をあゆみたかったんだろし、父さんの新しい生活を考えて、ここに残ることもできなかったんだろう」
「両親揃った生活・・」
「そうだよ。冴子はお前の父親と結婚することもできなかったから・・
父親がいない暮らしと父さんと母さんの居る暮らしと
よくよく、考えて決心したんだと思う」
「僕の父さんって?」
かなしそうに、父さんは首をふった。
「冴子は話さない。お前と離れたあとは、もう、その人とも別れたんだと思う。多分、お前にすまないという思いだったんだろう。
冴子は捨てられたのかもしれない。だから、いっそう、話したくないのかも・・」
「そう・・」
父さんが父さんじゃなくて、
「叔母さん」が本当の母さんで、
本当の父親はだれかわからない・・。



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