僕が考え付いた事が本当か、どうか、判らない。
RH-が血縁者の中にいるということだけが、本当のことで、
それが、母さんだとおもいこみたいだけなのかもしれない。
事実をしっているのは、父さんだけだ。
そして、父さんは、僕が血液型にきがつくことを
おおかれ、すくなかれ、覚悟しているんじゃないのだろうか?
父さんに聞いたほうが早い。
それはわかっていたけど、父さんにきりだしていく
大きな理由がつかみとれなかった。
尋ねる以上は、本当の答えを聞きたい。
本当の答えをひきだせる、僕の理由が
「実の母親がいきてるか、どうか?一人ぼっちじゃないのか?」
だけでは、薄すぎると想った。
もう、此処に本当の生活がある以上、とうさんは、すんだこととして、
答えてくれない気がした。
看護師のいう事と、同じ。
それをしったからとて、変わらない物事を穿り返す必要は無いだろう。
僕は考えることをやめた。
父さんがもってきてくれたCDプレーヤーからは、相変わらず、
パイレーツ・オブ・カリビアンが流れていた。
僕はブーツ・ストラップのビルを思う。
呪いにかけられた父をすくおうとするウィルを想う。
僕もまた、かあさんの面影という呪いの金貨を手にしたウィルなのかもしれない。
そのまま、金貨を元にもどせば、ビルが救われたように
父もすくわれるのかもしれない。
「圭一君」
看護師の声がして、もう一人の看護師をつきしたがえていた。
「抜糸だよ」
二人がかりでストレッチャーに僕をのせかえると処置室にはこばれた。
胸部のコルセットをはずせるとのことだったが、そこらじゅうの糸をぬきはじめ、その痛みに僕の目から涙がにじんだ。
先生が僕の腹部を軽く触診する。
ここにも、大きな傷があるようだけど、僕はまだ見た事が無い。
「うん。良好だね」
いいながら、腹部の傷の抜糸がおこなうと、先生が僕をのぞきこんだ。
「随分、回復したようだから、話しておこう」
先生の言葉に僕はすこし、怖気づいていた。
先生はそれをさっしたのだろう。
「ああ。大丈夫だよ。普通に生活をおくることができるんだ。
ただ、ちょっと、食事とか、運動とか、気をつけてもらわなきゃいけないからね。それをはなしておこうとおもってね」
先生が話し出したことは手術のことだった。
「腕や胸部や足は、まあ、たいした怪我じゃなくて、骨折だけですんでるのは、奇跡としかいいようがないんだ。何か、スポーツでもやっていたのかな?」
いいえと僕は答える。
「ふ~~ん」
と、長い返事をして、おもむろにいいだした。
「腎臓というのはね、ふたつあるんだ。ひとつなくなっても、もうひとつで補える」
つまり、それは、僕の腎臓がひとつなくなったということだろうか?
「自転車のハンドルがくいこんだのかもしれない。右側の腎臓が破裂していたんだ。腹部内出血がひどくて、君は人事不肖におちいったわけだけど・・」
こうやって、助かって、抜糸の痛みに涙を流していられる。
大きな手術だった理由も、僕が昏睡状態になっていたのもそういうことだったんだ。
「だからね、やはり、腎臓がふたつある人と・・くらべると・・」
食事のことや、運動のことなども説明されていたと想うけど
僕は上の空だった。
僕は全然、違うことをかんがえていた。
僕は自分の命が助かったことを考えていた。
そして、僕を助けてくれた人々を。
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