剛之進・・・・・その1
題名が剛之進で有るに、関わらず
新之助である。
出仕が叶い、新之助は殿の傍役として、
重鎮にあたいする存在になったのであるが・・・。
今日は久方ぶりの連日非番の初日である。
しばらくぶりに道場に顔をだしてみようと、
出向いた新之助である。
で、あるのに、
「あれ?」
誰も居ない。
う~~~ん。
よくよく、考えてみれば
今日は出稽古だと師範代がいっていた気がする。
それでは、仕方が無い。
新之助は一人で素振りをしてみたり、
黙想をしてみたり、
今で言うストレッチをしてみたり、
とにかく、皆が帰ってくるのを
待つことにしたのである。
出稽古とはいうものの、
簡単に言えば他流試合である。
その試合ぶりがどうであったか、
他流の技がどうであったか、
新之助は聞いてみたいのである。
いろんな事をしながら、
ひたすら、みなの帰りを待つ新之助であるのに、
皆はどうしたことか、
ちっとも、帰ってこない。
さては一献かたむけているのだろうか?
そうだとすれば、
それは、とてつもなく良い試合をしたということであろう。
ならば、是が非でも其の話を聞かねば成らない。
都合の良い事に明日も休日である。
時間はたっぷり新之助の自由である。
外もとっぷり暮れると、
新之助は暗い道場に独り座ってみた。
皆の声が、足音がすぐ聞こえるようにと。
そして、
新之助はただじっと、まつことにした。
ところが・・・。
道場の外に人の気配がする。
でも、それは、皆じゃない。
暗い道場に
暗い外から顔を/たぶん/覗かせた
其の気配の主は
道場の中の暗い塊に声をかけてきた。
「しんのすけ~~~」
な?
なんと。
聞き覚えのある其の声は
まちがってもこんな所に
現れることの出来ないはずの御仁である。
「と・・・との?」
新之助を周知の皆様であれば、
殿のあるところ、
無事に事がおさまらない。
なんてことはこの物語において常識の範疇であろう。
「ど・・・どうなされたのですか?」
「だって~~~。しんちゃんにあいたくて~~~」
なぞと、またもなまめかしく、新之助に
すりよってゆく殿であれば、
この先、
人気の無い
この道場の中でおふたりが
どういう進展をみせてゆくか、
これもまた、暗黙の常識である事も
いわずもがなであろう。
剛之進・・・・2
暗い道場の真ん中でお二人さんが
えっちらおっちら、何事かに執心なさってる余り、
外になんだか、人の気配がすることなんか、
さっぱり、わかりゃしない。
あらぬ声をついつい、もらしてしまう新之助に殿は
もそもそと、ささやきかけているが、
このさい、
なんといっているかは・・・・。
気になる?
ま、でも、今回はそんな二人の密かな会話?を聞きにきていただいたわけではない。
題名が示すとおり、
いちおう、主役は剛之進・・・の、筈である。
で、あるので、
道場の外の気配はやはり、剛之進ということになるのであるが、
それだけでは、役者がたらないので、
師範代に友情出演をしていただくことになるのである。
が・・・。
この先の師範代と剛之進の熱い?怪しい友情が
ここから、はじまってゆくとは、
夢にも思わぬのである。
師範代と剛之進・・・やっと、出稽古から帰ってきて、
道場に竹刀をおさめにいくことにしたのである。
え?
他の仲間?
それ、そこが、都合のいい展開というか、なんというか。
皆は剛之新と師範代に片づけを任せておけといわれた言葉にあまえ、
それぞれ、帰宅の途についたのであるよ。うん。
だから、竹刀を抱えもち
道場にやってきたのは、師範代と剛之進だけだったんだ。
ところが・・・。
「ん?」
剛之進がたちどまって、疑問符をつぶやいた。
師範代も剛之進の疑問にすぐさま気がついた。
道場の暗闇の中だろう。
変な声が外までもれきこえてくる。
それなりに経験豊富?なふたりであれば、
その声がどういうてあいのものか、
直ぐにわかる。
「ふ・・不届き者が・・・」
「神聖な道場で、なんといううらやましい事を・・」
・・・・ん?
多少私感が混ざったものの、
二人は
竹刀の中から、
木刀をぬきだし、
道場の中のばか者をこらしめてやろうと
意気投合したのである。
剛之進・・・3
剛之進と師範代。
忍び足で道場にはいりこむのであるが、
洩れ聞こえてくる変な声と
男のささやきが気になって仕方がない。
クダンのふたりに悟られないように
そっと息をひそめて、ちかよってゆくのは、
どうやら、おふたりの変な声を
ききもらすまいという
妙な嗜好もあるようである。
暗闇に慣れ始めた目は
道場の真ん中で一塊になった、
黒い影を認めるのであるが、
なんだか、
変な声は通常の変な声とは
異質なのである。
『な?なんじゃ?』
剛之進も師範代も同じ事を思ったに違いない。
暗闇の中の影の正体に目をこらすのか
師範代の動きが止まると
やはり、剛之進が感じた疑問を
師範代も感じていたのである。
剛之進に小さな声で
「剛之進。あやつらは、男同士ではないのか?」
変な声も確かに男の声であるが
黒い影が描く輪郭は
やけに無骨でたくましい。
「はい。私もそう・・・おもっておりました」
なおも正体を見極めるかのように
二人は二人を観察しつづけたのであるが、
「ふむ・・・やはり、そうだの」
なんたることであろう。
神聖な道場でうらやましい・・・いやいや、
不埒な行いを遂行するはよいとして、
いやいや・・・
よくないが、
其の快さに浸りあうのが、男同士である。
「なんという、すきものであろうか・・・」
いやいや・・・。
そういう事に感心している場合でもない。
「よほど、相手にことかき・・・」
「よほど、適切な場所がなかったとも・・・」
ひとつになって、もつれ合う黒い塊の
嗜好と選地をはかってみてもしかたがない。
正体を見極めてやらねばならぬ。
ぶん殴ってやらねばならぬ。
そんな気持ち半分と
覗き半分とで、にじりよってゆくふたりであるが、
近寄れば近寄るほど
其の黒い影がかもし出す雰囲気に・・・。
「なんか、煽られちゃいますね」
「男同士というのも、よさ気だの」
などと、
協賛する興味がわいてくるのであるから、
この二人の
武士道もあまり、上質のものと
いえないようである。
剛之進・・・4
師範代と剛之進。
一つになった塊に
にじりににじりよると、
「そりゃああああああ」
暗闇の中で二人を取り押さえたのである。
が、
そこはそれ。
やはり、殿である。
幼き頃からそれ相当に武術もこなしてきているのであるから、
ぬけさくふたりの
どうま声に異変を察知するや、いなや、
新之助をほっぽりだし、
すたこらさっさと、にげだしていくそのみのこなしの
素早い事、
本当にあのごくらくとんぼの殿であるのか?
と、
書いてる筆者もこの設定にかなりの都合のよさを
感じぬでもない。
「むむ、にげられたか・・」
道場の戸口に黒い影がきえてゆくのが、みえたきがする。
「まあ、良い。もう独りはとりおさえておるわい」
なんだか、もう一人は丁度よい気分になりきったところらしく、
蛸のようにぐにゃぐにゃとふんのびているから、
逃げるどころでなかったようで、
とりおさえたという言い方も正解ではない。
「はああ?こら、面をみせてみろ」
師範代の言葉にやはりしたっぱである剛之進が灯りをとりにいくことになる。
師範代は闇になれた目で
闇の中に浮かび上がる男の半穴を木刀でつついてみた。
「女子に相手にしてもらえぬからとて、
男なぞに妙な事をする奴も
する奴だが・・・」
それにそれ相応に感じ入っているお前も奇妙な奴よ。
「ふむむ・・・」
師範代の心の中にわいてきたのは
ちょっとした、悪戯と好奇心だった。
『そのような場所になにか、つっこまれて、
気持ちがよいものなのだろうか?』
むろん、突きこまれていたほうは、師範代の前でかくのごとくと
ふんのびているのである。
『つきこむ方もおもしろいのだろうか?』
大の男がふんのばすくらいに「おかまい」をしているのだから、
おもしろいのであろう。
「どりゃ」
師範代はなにかで試してみようかとおもった。
だけど・・・。
なにも、ない。
あるのは、手に持った木刀だけである。
『ウムム・・・まあ・・・これでよいか・・・』
し・・・師範代?
それは、ちょっと・・・。
剛之進・・・5
だけど、こらしめ半分
興味半分。
師範代は男の半穴の谷間にむけて、
木刀を
ぐいっ!!
悲鳴が返ってくるとおもいきや、
「あふ~~ん~~」
なんて、妙な反応がかえってくると、
なんだか、師範代もおもしろくなってきた。
「こりゃ、気色の悪い奴め、こんなものでも、いいのか?」
師範代はなじりとともに、木刀をつきつき~~!!
そこに、剛之進がかえってきた。
灯りの中に、背を見せた男がいる。
その白いでん部に師範代が木刀をつきつき~~~!!
実に奇妙な光景であるが、
男の反応が妙にいろっぽい。
「き・・・気味のわるい奴ですね・・・」
「ふむ。じゃが、おもしろい」
「そのようですね・・・」
二人は正体を確かめる事も忘れ
つきつき~~~~。
「あ、かわってください」
「よっしゃああ」
と、変わりばんこに男をつつきまわすのであるが・・・。
おい?
神聖な道場であんたたちも
いったい、なにをやりはじめているんだ?
そのうちに、なんだか、男に対して
妙な愛着がわいてくるのは、
男が妙な行為にかわいく?反応するせいだろうか?
「ふむむ。まあ、おしおきは、このくらいにして・・・」
おしおきになっていたのかどうかはこのさい不問にして。
「いったい、どこのどいつだ」
なんだか、かわいい奴めと顔が見たくなったのが本音であるが・・・。
「剛之進。そいつをひっくりかえせ!!面をおがませてもらおうじゃないか」
面倒な役目は直ぐ私におしつけるんだから、嫌になると、思いながら剛之進は
息絶え絶えに悶絶する男をひっくり返して見た。
!!!!!!!
「し・・・・し・・・・・」
「え?あ?」
「しん・・・しん・・・」
しん・・じられない?
しん・・・じゃった。
そうじゃない!!
二人の声が揃った。
「新之介~~~~~~~????」
嘘だろ~~~~~。
剛之進・・・・6
木刀相手にふんのびきった酔狂な御仁が
新之助だとわかると、
剛之進も師範代もまっ青である。
「まずいですよ。師範代~~~」
なにが、まずいといったって、
この新之助は
こんな恥さらしをやってのけているが、
これでも、れっきとした
家老の嫡男なのである。
最初の男の行為が狼藉にあたるかどうかを詮議してみても、
新之助にすれば、新之助の意志であったことだろう。
へんてこな行為をたのしんでいたとはいえ、
これも、新之助のプライベートであり、
余人がかんよするべきことではない。
なのに~~~。
「こんなもので・・・つつきまわしちゃいましたよ~~~」
手に持った木刀がうらみがましい。
「こんなものさえ・・・もってなければ・・・」
いや・・・。問題はそんなことじゃないんじゃない?
「我々がやった事は暴行であるのかのお~~」
それを暴行と決めるか、
お遊戯ととらえるかは、
新之助の判断と感情しだいであるが・・・。
「こんなもので、つつきまわしたと、ばれちゃあ、
新之助だっておこりますよね~~~」
なんだったら、怒らないっていうんだ?
と、突っ込みをいれたくなるが、
二人の話は核心からどんどん、外れていきそうである。
「いや・・・。それより・・・」
新之助を見てみれば、あいかわらずふんのびているのである。
「新之助はきがついておらぬ・・・」
「そうですね・・・」
三十六計、逃げるにしかず。
なにも、事実を暴露する必要はないじゃないか・・・。
「ここは、なかったことに・・・」
「みなかったことにしましょう」
こういう姦計だけは、さっさとまとまるんだから、
あんた達のタッグってのは、ある意味すんばらしい、コンビネーションではないのだろうか?
結論がまとまるとそののちの
動きの早い事、
道場の入り口にさも、中までは、はいってませんと、
道具をおいて、
ふたりは、トンズラしたのである。
そのうち、目覚めた
新之助・・。
「う・・・寒い・・けつが寒いぞ・・」
それもそのはず、
新之助は、
道場の板の上に半穴むきだしのままであった。
剛之進・・・・7
「でも・・・」
かんがえてみれば、たしか、殿があらわれて・・・。
いつものごとく、
殿の術中にしっぽりはまりこんで・・・。
?
なのに、殿の姿はない。
夢でない証拠は新之助の半穴むきだしが
如実すぎる。
「も~~~。ご自分だけが満足なされたら、
さっさと、帰っちゃうんだから~~~」
と、責める言葉がにやけてくる。
だって、
新之助もそれ相当に満足したんだから、
「ま、いいか~~」
殿はやはり、殿。
城中をぬけだして、こんな所に
いつまでもいるわけにはいかないし、
なによりも、
新之助に逢いにこっそり、城をぬけだしてきてくれたんだ。
今頃は何事も無かったように
広間に座っていることだろう。
あと、1日。
非番がおわるまで、おとなしく、待っててください。
心の中で殿におねがいをすると、
新之助は辺りをみわたしてみた。
あれから、どれだけ、たったのか、よくわからないが、
道場の皆はまだ、かえってきてないようだ。
「う~~~ん。
とまりこみかなあ?
明日も試合だといってたよなあ」
そうなのかもしれない。
だったら、
明日、もう一度でなおすことにしようと、
やっと、新之助は半穴のむきだしのおしりを、
袴の中におさめた。
そして、暗闇の中、
道場の入り口にあゆんでいった。
「あり?」
はいな。
ありますがな。
「稽古道具だ・・・」
入り口の横に無造作に置かれた
竹刀や木刀。
「え?いつ、かえってきたんだろ?」
皆は新之助に気がつかず
道具をおくとかえってしまったんだ。
「・・・・・」
このさい、きっと、見つからなかった事が
良かったといえる。
半穴の新之助を見つけられたりしたら、
どう、言い訳をすればいいんだろう。
「よかった~~~」
何も知らないことほど
しあわせなことはないのである。
自分の身におきたことも、
剛之新と師範代の目の中に映ったことも
なにも、知らず、
新之助は帰途についたのである。
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