<以下の記事は2014年7月11日に書いたものですが、原文のまま復刻します。>
日本とロシアの関係は今のところ平穏だが、両国の間には懸案の北方領土問題、そして平和条約締結の課題が残っている。今後、両国間で交渉の進展が期待されるが、どうなっていくかは分からない。ただ、戦後70年近くたっても、旧ソ連の時代も通じて不正常な関係が続いていることは、両国にとって不幸なことだろう。一刻も早い関係改善が望まれるが、果たしてどうなるか。
両国の関係について、最近のプーチン・ロシア大統領の発言は積極的とも受け止められるが、日本側も決して消極的ではない。詳しくは、以下の外務省の文書(「日ソ・日露間の平和条約締結交渉」http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/hoppo/hoppo_rekishi.html)を読んでもらえれば分かるが、両国とも前向きな姿勢だと思われる。
そこで、外交交渉のことは素人なので分からないが、両国、特に日本側にとってぬぐい切れない問題点を幾つか整理してみようと思う。それは国後・択捉など北方領土の問題以前の嘆かわしい歴史的事実のことだ。
ご承知のように、先の大戦の終了(1945年8月15日)直前、旧ソ連は「日ソ中立条約」を一方的に破棄し、わが国の北方領土や南樺太などに侵攻してきた。これは誰でも知っていることだが、重大な“国際法違反行為”である。
特に南樺太(今のサハリン)では、軍人や民間人ら合わせて約4000人が殺害され、このほか引揚げ船がソ連軍に撃沈されて1700人ぐらいが死亡するなど、いたる所で戦争の悲劇が繰り返された。また、捕虜になった多数の日本兵はシベリアに抑留されたのである。
こうした不法行為は戦争の悲劇とはいえ許されないものであり、逆に旧日本軍が中国などで犯した不法行為も断罪されている。戦後、日本は中国や韓国などに戦争犯罪行為を謝罪し、全部とは言えないが賠償を行なっている。だから、ロシアだけが許されるものではない。その辺は、平和条約締結交渉で当然 議題になろうが、ロシアが第2次大戦前後の不法行為を謝罪することが、すべての大前提にならなければならない。
日本はサンフランシスコ講和条約で、南樺太の領有権を放棄した。これは厳然たる事実である。しかし、旧ソ連はこの講和条約に調印していない。したがって、南樺太は国際法上は「所属未定地」であり、今のロシアが実効支配しているにすぎない。その辺も平和条約締結に当たって整理されなければならないが、北方領土帰属との関連で重要な“取り引き材料”になるかもしれない。
以上、南樺太や北方領土問題について簡単に述べたが、戦後70年近くたって日露関係は大きく前進する時を迎えたかもしれない。そんな予感がするこの頃である。(2014年7月11日)
南樺太・真岡の日本人慰霊碑(今のホルムスク)