過去の作品をまとめる必要が出てきたので、この場を借ります。ご了承ください。
秩父の山々
http://blog.goo.ne.jp/yajimatakehiro/e/49f159f20789e49b145abdd836a786f3http://blog.goo.ne.jp/yajimatakehiro/e/e48fd1f70490af08d5193a882b959248http://blo . . . 本文を読む
第5場[12月中旬、東京・下谷にある松本カヨの借家。 カヨと日下藤吉が話し合っている。]
カヨ 「ハルさんが上京することになって、良かったですね」
藤吉 「ええ、このあと妹と相談して、母も呼ぶつもりです」
カヨ 「お母さまやハルさんと話し合えば、藤吉さんも今後の身の振り方が決められると思いますよ」
藤吉 「そうですね。でも、僕は追われる身だから、良い考えが浮かぶかどうか・・・」
カヨ 「 . . . 本文を読む
第5幕
第1場[11月中旬、東京・下谷(したや)区内の住宅街。 松本カヨが“借家住まい”している平屋に、友人の山中ハツが訪れてくる。]
ハツ 「こんにちは、カヨさん。お久しぶりです」
カヨ 「ハツさん、ずいぶん待ちましたよ」
ハツ 「ごめんなさい、東京は初めてなので何度も道に迷いました。怒っていらして?」
カヨ 「ええ、とても、ホッホッホッホッホ。いえ、あなたに会 . . . 本文を読む
第11場ーA[11月9日午後、南佐久郡・野辺山原の高原。 追跡してきた高崎鎮台の吉野大尉、前川中尉の率いる兵隊、並びに警官隊が、困民軍の一隊を追いつめている。]
前川 「中隊長殿、敵は戦う気力を無くしたようですね」
吉野 「うむ、我々が執拗に攻撃を繰り返したからな。ここで息の根を止めてやろう」
前川 「ご覧なさい、人夫どもが荷物を放り出して逃げ出していますよ」
吉野 「駆り出された百姓達だ . . . 本文を読む
第5場[11月7日夜、大日向村・本郷部落の龍興寺。 困民軍幹部の宿営地になっており、菊池貫平、坂本、伊奈野、島崎、新井寅吉、大野喜十郎らの他に、地元の菊池恒之助がいる。]
坂本 「十石峠からここまで、アッという間に制圧しましたね」
貫平 「うむ、極めて順調に事が運んだ。この辺の農民はほとんどが負債に苦しんでいるから、我々にとても協力的なのだ。 借金返済の延期と税の減免は、以前から佐久自由党が強 . . . 本文を読む
第4幕
第1場[11月6日午後、群馬県南甘楽郡の楢原(ならはら)村。 菊池、坂本、伊奈野ら困民軍が行進している所に、日下藤吉が駆けつけてくる。]
藤吉 「菊池さん、坂本さん、日下です!」
坂本 「おお、藤吉君か、無事で良かったな」
菊池 「君と別れてから、どうしてるかとても心配だったぞ。元気でやっていたか」
藤吉 「はい・・・しかし、児玉町で敵軍と戦い多くの同志を失いました。大野苗吉さん . . . 本文を読む
第16場ーA[11月4日深夜、児玉町・金屋の農村地帯。 大野苗吉、大野又吉の率いる困民軍が戦闘隊形を取っている。]
苗吉 「敵の軍勢は我々の前に現われた。いいか、人数では我々の方が圧倒的に多い。敵を包囲して“もみ潰して”やろう!」
又吉 「鉄砲隊は出来るだけ相手に近づき、一斉射撃を行なう。その後、抜刀隊と竹槍隊が突撃する。肉弾戦になれば、人数の多いわが軍の方が有利なはず . . . 本文を読む
第10場[11月4日午後、皆野にある荒川の渡し船場。 東京憲兵隊の小笠原大尉、隈元少尉、内田少尉に率いられて、憲兵隊員が進撃の用意をしている。]
隈元 「小笠原大尉、きのうは参りました。銃を撃っても、弾が飛んでいかないのですからね」
小笠原 「ハッハッハッハッハ、それは参ったろう。しかし、きょうは大丈夫だ、新品の弾薬を沢山持って来たからな」
内田 「きょうこそが、村田銃の本当の“ . . . 本文を読む
第5場[11月3日夕刻、皆野にある困民軍の本営・角屋旅館。 田代、菊池、小柏、柴岡、井出ら幹部の他に、藤吉もいる。]
菊池 「憲兵隊が親鼻の渡し場に現われましたが、鉄砲隊がこれを撃退しました。まずは幸先の良い緒戦です」
田代 「それは良いが、敵は確実に包囲網を狭めてきたようだ。予想以上に早く皆野に現われたではないか」
菊池 「そうかもしれませんが、憲兵隊を撃退するなど、わが軍は非常に良く戦っ . . . 本文を読む
第3幕
第1場[11月3日早朝、秩父郡役所。 田代、加藤、菊池、井上、高岸、落合、新井周三郎、小柏、飯塚、井出、大野苗吉の他、困民党の主だった幹部が作戦会議を開いている。]
高岸 「きょうは“天長節”だから、ちょうど良い。天皇の軍隊でも警察でも、一網打尽にやっつけるにはもってこいの日だ」
大野 「お恐れながら天朝様に敵対するので加勢しろ、と言ってきたからな」(笑)
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第19場[11月2日午後、武甲山の麓の坂道。 伊藤栄郡長と郡役所の役人数人が、大きなカバンやふろしき包みを持って歩いている。彼らは制服を脱ぎ捨て、農民の身なりをしている。]
伊藤 「やれやれ、酷い目に遭ったものだ。大宮郷を暴徒どもに占領され、逃げ延びるだけとは情けない」
役人1 「郡長、これからどちらへ向かいましょうか?」
伊藤 「このまま名栗村(なぐりむら)へ行くしかないだろう。あそこはま . . . 本文を読む
第14場[11月2日午前、小鹿坂峠に近い音楽寺(札所23番)の境内。 田代、加藤、菊池、井上ら困民党の幹部の他に、大勢の農民が勢揃いしている。]
田代 「諸君、我々はいま小鹿坂峠を越えた。眼下には大宮郷が広がり、秩父の山々全体が我々の前途を祝っているようではないか。 武甲山の頂きは美しい紅葉に彩られ、荒川はゆったりと流れてわが軍勢の進撃を待っている。この美しい秩父は我々のものだ。間もなく、偵察隊 . . . 本文を読む
第7場[10月31日午後、風布(ふうっぷ)村の路上。 大野苗吉、大野長四郎、木島善一郎の他に、農民多数が参集している。 多くの者が白鉢巻きに白たすき姿で、手に手に刀や槍、猟銃を持っている。]
苗吉 「みんな、ついに決起する時が来たぞ~っ! いいか、われわれはこれから秩父の中心を目指して進撃する。 すでに、大野福次郎君らの先発隊は荒川へ向って進んだが、警官隊と衝突し逮捕者が何人も出ているという。ぐ . . . 本文を読む
第4場[10月下旬のある晩、上吉田村にある日下の家。 藤吉がそっと忍び込んでくると、母のミツと妹のハルが驚いた表情で迎える。]
ミツ 「藤吉・・・大丈夫なの?」
藤吉 「うん、何とかやっている。二人とも元気だった?」
ミツ 「こちらは大丈夫だけど、お前のことが心配で夜もおちおち眠れなかったよ」
ハル 「兄さんったら何の連絡もないし、言(こと)付けでも良いからしてくれれば安心するのに」
藤 . . . 本文を読む
第2幕
第1場[10月下旬、長野県南佐久郡の北相木村。 養蚕農家・菊池貫平の家に、萩原勘次郎と日下藤吉が訪れている。]
萩原 「初めまして、萩原勘次郎と申します。こちらは日下藤吉と言って、同じ秩父に住む若い者ですが、よろしくお願い致します」(藤吉、頭を下げる)
菊池 「こちらこそ、よろしく。 さて、田代さんと言う方からの“使者”と聞いていますが、きょうはどういうご用件 . . . 本文を読む