家づくりの依頼先を探す際、迷われるのがその依頼先の断熱工法の違い
だと思います。
断熱工法にもいろいろありますが、大きく分けると皆さんご存知の通り
「外断熱」と「内断熱」
の2つに分けられます。
ちなみに、この「外断熱」・「内断熱」という呼び方に慣れてしまわれている
かもしれませんが、正確には、
◆外断熱 → 『外張(そとばり)断熱』
構造材の外側を包むように断熱材を張る工法
◆内断熱 → 『充填(じゅうてん)断熱』
構造材の間に断熱材を入れる工法
という呼び方が正しい呼び方です。
見学会で来場されるお客様からも、
「矢野さんのところはどんな断熱工法なんですか?」
とよく質問されますが、弊社で用いている断熱工法はグラスウールを用いた
「充填断熱」の工法ですのでそのようにご説明差し上げると、
「な~んだ、外断熱じゃないんだ・・・」
と少しガッカリしたような顔をされる方も中にはいらっしゃいます。
こういった方に改めて聞いてみると、
◆外断熱(外張断熱)は高級で高性能
◆内断熱(充填断熱)は欠陥が多く結露する
などといった「先入観」を持たれているように思います。
充填断熱は欠陥が多い??
確かに、北海道や北日本・北陸のような豪雪地帯では外張断熱もそれなりに
意味があると思いますが、関東より南の地域で木造の一戸建てを建てる場合は、
充填断熱でも十分「目的」を果たしてくれるはずです。
住宅の断熱の「目的」は、『省エネ』と『住まいの快適化』の2つだと
思います。
『省エネ』とは、エネルギーの無駄遣いを省くこと。
断熱性能の良い住宅ほど冷暖房機器を付けている時間が短くて済むので、電気
やガスなどの光熱費を減らすことができます。
『住まいの快適化』とは、家の中の温度差を解消して1年中快適な住環境を
つくることです。
冬になると、家の中でのお年寄りの死亡事故が増えるといわれます。
その主な原因は、心臓発作や脳内出血などの血管障害です。
家の中に暖かいところと寒いところがあると、移動のたびに血圧が急激に変化
します。これが皆さんご存知の「ヒートショック」です。
これまで、床の段差をなくす「バリアフリー」が住まいの安全対策として取り上げ
られてきましたが、家の中の温度差をなくす『室温のバリアフリー』
も実はとても大切なことで、断熱化を進めればさほど光熱費をかけずに、温度差
の少ない快適な住空間をつくることができます。
もともと、「外張断熱」はマンションやビルなど鉄筋コンクリートの建物に
用いられている断熱工法です。コンクリートは、レンガや石と同じように、
温まったり冷めたりするのに時間がかかり、一度温まったり冷めたりすると
今度は長い間その温度を保とうとする性質があります。
そのため、内側に断熱材を張ると、コンクリートは外気と同じ温度環境におか
れることになって、夏は暑さを、冬は寒さをためこみます。また、冬場は特に
コンクリートが冷えるので、コンクリートの室内側表面で結露が起こりやすい
といわれます。
これに対して、コンクリートの外側に断熱材を張り、室内で24時間空調をして
いれば、コンクリートは常に室内の温度を同じになって、冷暖房効率が上がり
ます。
よって、鉄筋コンクリートの建物では理論上、冷暖房効率と冬の結露対策の点
に限っていえば外張断熱が優れているといえるかもしれませんが、日本の一戸
建てに関しては2x4や木質パネルを含む「木造」が大部分です。
そして、鉄も木もコンクリートに比べればほとんど熱を蓄える
ことがありません。
そもそも、一戸建てで外張断熱にすると、外壁が厚くなるので敷地が狭いと不利
です。また、外張断熱は発泡プラスチック系の素材を使うのでコストが高く、
さらに特殊な部材を使用した「オリジナル工法」が多い点でもコストアップに
なりやすいといえます。もっというと、「オリジナル工法」ということは、将来的に
リフォームや増改築の計画を立てた際、依頼先は必然的にその工法を施工
できる会社に絞られてしまいますので、選択の幅が非常に狭くなってしまいます。
ただし、一つ付け加えておきますと、一戸建てでも鉄骨造の場合、木と同じ
ように鉄は蓄熱性はありませんが、熱を非常に伝えやすい性質があります。
そのため、充填断熱では鉄が外気の寒さを伝え、鉄の表面で結露が起こりやすい
といわれていますので、「次世代省エネルギー基準」でも鉄骨造は
外張断熱を基本としていることは知っておいて損はありませんよ。
ここで、充填断熱のメリットをいくつか挙げておきます。
① コストパフォーマンスに優れている
充填断熱に使用するマット状のグラスウールは市場にもよく出回っている部材
なのでコスト的にも安く、また、専用部材もほとんど必要としないので施工も
簡単です。
②柱と柱の間の「空間」を利用して断熱施工するので合理的
この空間にはどんな材質のものでも入れることができるので断熱材を選ばず、
設計上の自由度が高い。また、断熱性能を増したい場合には断熱材の厚さを
簡単に増やすことができます。
③ ほとんどの大工さんが施工可能
グラスウールを用いた断熱工法は最もポピュラーな工法のためほとんどの大工
さんが施工可能。そのため、ちょっとしたリフォームや増改築の際にも専門の
業者へ依頼することなく近くの大工さんに相談することができます。
④ 防火性能
燃えやすいイメージがあるかもしれませんが、グラスウールは不燃材料認定の
とれたれっきとした防火材料です。
⑤ 外装材の自由度が高い
外張断熱の場合、重量によって使用できる外装材に制限がありますが、充填断熱
の場合には外装材の制限がなく、選択の自由度が高い。
⑥ シロアリの食害が少ない
外張断熱に使用する発泡プラスチック系板状断熱材のようにシロアリなどの食害
を受けにくい。
もちろん、外張断熱にも充填断熱にもメリット・デメリットがありますので、
一概にどちらの工法が優れているとはいえませんが、しかし、家づくり全体を
考えた際、
「壁の断熱方法の選択が家づくりの総て」
という考え方だけはしないでほしいと思います。
なぜなら、本当に快適な生活をおくるためには家づくり全体の「バランス」を
考えることが大切だからです。
断熱性能を追求し過ぎて予算オーバーの無理な計画で新築したばかりに家計が
苦しくなりゆとりのない生活は、いくら断熱性能が良くても快適な生活とは
言えませんからね。
参考になりましたか?
以上、木村でした
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます