元プロボクサーの建築家という帯につられて手に取った。
ハードカバーにしては、とてもページがめくりやすい。
しおりが緑色だと気がついた時に、買おうと決めた。
読み始めてすぐに「ゲリラ的」という信念が出てきた。
「共通の理想を掲げ、信念と責任を持った個人が我が身を賭して生きる」
さすが元プロボクサー。個人主義。
あんまり面白いので一気に読んだ。
最高のページは最後のページ。こんな本は珍しい。
素人の僕が楽しめたのだから、建築を学ぶ人には安藤忠雄の凄さがもっと伝わると思う。
いくらなんでもコンクリート打ちっぱなしの建築物を造りすぎだろうと思いながら読んだけど、
それって小説家の得意分野みたいなものなのかな。時代小説家を書くSF作家ってほとんどいないはず。
写真が多く使われているけど、それら全てが白黒なのはコンクリートの無機質性と関係あるのかな。
写真ならネットで見れるからいいけど。白黒も渋いし。
自伝とはいえ、近代日本史やガウディの建築について意外なことを知ることもできた。
無知な自分には新鮮。
詳しく書かれていないけど、建築界でも学閥や権力が幅を利かせているらしい。
当たり前なことだけど、やっぱり面白くない。
もう一つ心に残った当たり前なこと。
大がかりな工事を施行するには大金が必要で、おのずと行政と大企業の財力が必要になる。
小さな家の設計でも、仕事である以上、常に施主という客がいる。
その状況で、奇抜な設計を施工させる苦労は、建物を見るだけの僕には想像もつかない。
行政と意見が食い違う場合、たいてい個人が折れる。でもこの人は違う。
それは、ただの頑固ではなく、自分の作品にとても誠実で自信を持ってるからこそ保てるプロ姿勢だと思う。尊敬する。
実行に移されなかった計画が無数にあるという。
それでも腐らない。強い。ここが僕と一番違う。
その違いは、対象に対する想いの違いから来る、、、資質と言ってもいい。
設計せずにはいられない人なのだと思う。
仕事場についての記述を読んで、従業員の管理の仕方に驚いた。(すばらいし制度もあるけど)
ブレない志がないとゲリラにはなれない。
プロを育て上げる場所というのは、きっとどの世界でもそうだろう。
僕がいる場所はヌルい。