壊れた住宅 修繕工事始めることすらできない 深刻な人手不足 NHK 2025年3月1日 16時19分
能登半島地震の発生から1年と2か月がたつ中、壊れた住宅の修繕工事を始めることすらできないケースが出ています。背景にあるのは工事にあたる地元業者の深刻な人手不足で、本格的な復興が急がれる中、専門家などはこのままの状況では人口減少がさらに進むおそれがあり、対策が必要だと指摘しています。
工事開始まで さらに1年近くかかるケースも
石川県穴水町で妻と暮らす小川満さん(71)は、自宅の屋根や玄関が壊れたほか窓ガラスが割れ、自宅は全体の10%以上20%未満が被災した「準半壊」と判定されました。
建物の解体などを自治体が費用を負担して行う「公費解体」の対象ではなく自分で解体費用を負担する必要があるため、修繕工事を行って住み続けることを決めました。
去年2月に七尾市内の工務店に工事を依頼しましたが、職人が自宅を確認するなどして工事の見積もりを取ることができたのはそれから10か月ほどたった12月でした。
この工務店によりますと、被災者からの工事の依頼が1000件を超えるなど殺到し、職人の数が足りないため対応が追いつかない状態で、小川さんの自宅の修繕工事が開始できるまでには今後さらに1年近くかかるとみられるということです。
小川満さん
「人手不足なので我慢はしないといけないとは思いますが、できるだけ早く工事が始まってほしい」
工事の依頼殺到 人手不足で対応困難
石川県能登地方の工務店や建築会社には被災者からの住宅の建て直しや修繕の工事の依頼が殺到し、人手が足りないため対応が追いつかない状況となっています。
珠洲市にある住宅の新築や修繕の工事などを行う工務店「盤戸建築」は、地元の被災者の生活再建をできるだけ早く進めたいと市内に住む人に限定して工事の依頼を受けています。
この工務店によりますと、被災者からこれまでに依頼があった住宅工事の件数は100件を超えていて、地震前の1年間の件数と比較するとおよそ10倍に増加したといいます。
このため体制を強化し、2人の職人に加え100キロ以上離れた金沢市にいる2人の職人にも応援で入ってもらっていますが、珠洲市にある宿泊施設も地震で被災し泊まる場所の確保が難しくなっています。
こうした状況に対応しようと工務店は去年12月、珠洲市内に応援の職人などが2人宿泊できるプレハブの宿舎を設置しました。
それでも被災者からの工事の依頼には追いつかない状況だということで、最も遅いケースでは依頼を受けてから住宅の工事開始まで2年かかるとみられるケースも出ていると言います。
盤戸建築 盤戸巧也専務
「依頼を受けた被災者からは仮設住宅で住むことができる間に自宅の工事を終えたいという話を多く聞きます。1棟でも多く被災者に住まいを提供したいですし、早く元気な地域に戻すことができればと思います」
専門家「さらなる人口減少のおそれも」
専門家は、能登半島地震の被災地は過去の災害の被災地と比べても都市部から離れた場所にあるため、住宅工事の人手確保が難しいとしています。
一方で本格的な復興に重要な住宅の再建が遅れれば、さらなる人口減少につながるおそれもあると指摘します。
能登半島地震の被災地で住宅再建の現状などについて調査を進めている金沢大学融合研究域の豊島祐樹講師は「能登地方では高齢化が進んでいて、工務店の数が減る中で能登半島地震が発生したため、工事などでの人手不足は深刻化している。能登地方は都市部から交通アクセスが悪く宿泊できる場所が少ないという要因もある」と指摘しています。
そのうえで「いまのような状態が続くと、新しく建物を建てたり建物を直そうとしていた人も能登地方で生活することを諦めることで人口流出に拍車がかかってしまう。遠方の業者を活用するために、業者が滞在できる場所を提供する必要がある」と話しています。
さらに豊島講師は「能登地方は空き家が多い地域なので、空き家となっていて大きな修繕が必要ない建物も一定数にあるはずだ。建物の所有者と丁寧に対話をしながら、活用を希望する業者とマッチングさせることも必要になる」としています。
奥能登地域4市町 1年間で人口8.4%減少
去年1月に発生した能登半島地震では住宅の被害も相次ぎ、石川県のまとめによりますと、県内で被害を受けた住宅は2月25日の時点で11万5000棟余りに上っています。
石川県によりますと、奥能登地域の4つの市と町では能登半島地震の発生から1年間で人口が8.4%減少していて、ふるさとを離れてほかの地域へ移る動きが続いています。
石川県建築住宅課は「費用面の支援だけでなく、住宅の相談会やホームページで情報提供も行い、1日も早く住宅の再建が進むように取り組みたい」としています。
能登半島地震の発生から1年と2か月がたつ中、壊れた住宅の修繕工事を始めることすらできないケースが出ています。背景にあるのは工事にあたる地元業者の深刻な人手不足で、本格的な復興が急がれる中、専門家などはこのままの状況では人口減少がさらに進むおそれがあり、対策が必要だと指摘しています。
工事開始まで さらに1年近くかかるケースも
石川県穴水町で妻と暮らす小川満さん(71)は、自宅の屋根や玄関が壊れたほか窓ガラスが割れ、自宅は全体の10%以上20%未満が被災した「準半壊」と判定されました。
建物の解体などを自治体が費用を負担して行う「公費解体」の対象ではなく自分で解体費用を負担する必要があるため、修繕工事を行って住み続けることを決めました。
去年2月に七尾市内の工務店に工事を依頼しましたが、職人が自宅を確認するなどして工事の見積もりを取ることができたのはそれから10か月ほどたった12月でした。
この工務店によりますと、被災者からの工事の依頼が1000件を超えるなど殺到し、職人の数が足りないため対応が追いつかない状態で、小川さんの自宅の修繕工事が開始できるまでには今後さらに1年近くかかるとみられるということです。
小川満さん
「人手不足なので我慢はしないといけないとは思いますが、できるだけ早く工事が始まってほしい」
工事の依頼殺到 人手不足で対応困難
石川県能登地方の工務店や建築会社には被災者からの住宅の建て直しや修繕の工事の依頼が殺到し、人手が足りないため対応が追いつかない状況となっています。
珠洲市にある住宅の新築や修繕の工事などを行う工務店「盤戸建築」は、地元の被災者の生活再建をできるだけ早く進めたいと市内に住む人に限定して工事の依頼を受けています。
この工務店によりますと、被災者からこれまでに依頼があった住宅工事の件数は100件を超えていて、地震前の1年間の件数と比較するとおよそ10倍に増加したといいます。
このため体制を強化し、2人の職人に加え100キロ以上離れた金沢市にいる2人の職人にも応援で入ってもらっていますが、珠洲市にある宿泊施設も地震で被災し泊まる場所の確保が難しくなっています。
こうした状況に対応しようと工務店は去年12月、珠洲市内に応援の職人などが2人宿泊できるプレハブの宿舎を設置しました。
それでも被災者からの工事の依頼には追いつかない状況だということで、最も遅いケースでは依頼を受けてから住宅の工事開始まで2年かかるとみられるケースも出ていると言います。
盤戸建築 盤戸巧也専務
「依頼を受けた被災者からは仮設住宅で住むことができる間に自宅の工事を終えたいという話を多く聞きます。1棟でも多く被災者に住まいを提供したいですし、早く元気な地域に戻すことができればと思います」
専門家「さらなる人口減少のおそれも」
専門家は、能登半島地震の被災地は過去の災害の被災地と比べても都市部から離れた場所にあるため、住宅工事の人手確保が難しいとしています。
一方で本格的な復興に重要な住宅の再建が遅れれば、さらなる人口減少につながるおそれもあると指摘します。
能登半島地震の被災地で住宅再建の現状などについて調査を進めている金沢大学融合研究域の豊島祐樹講師は「能登地方では高齢化が進んでいて、工務店の数が減る中で能登半島地震が発生したため、工事などでの人手不足は深刻化している。能登地方は都市部から交通アクセスが悪く宿泊できる場所が少ないという要因もある」と指摘しています。
そのうえで「いまのような状態が続くと、新しく建物を建てたり建物を直そうとしていた人も能登地方で生活することを諦めることで人口流出に拍車がかかってしまう。遠方の業者を活用するために、業者が滞在できる場所を提供する必要がある」と話しています。
さらに豊島講師は「能登地方は空き家が多い地域なので、空き家となっていて大きな修繕が必要ない建物も一定数にあるはずだ。建物の所有者と丁寧に対話をしながら、活用を希望する業者とマッチングさせることも必要になる」としています。
奥能登地域4市町 1年間で人口8.4%減少
去年1月に発生した能登半島地震では住宅の被害も相次ぎ、石川県のまとめによりますと、県内で被害を受けた住宅は2月25日の時点で11万5000棟余りに上っています。
石川県によりますと、奥能登地域の4つの市と町では能登半島地震の発生から1年間で人口が8.4%減少していて、ふるさとを離れてほかの地域へ移る動きが続いています。
石川県建築住宅課は「費用面の支援だけでなく、住宅の相談会やホームページで情報提供も行い、1日も早く住宅の再建が進むように取り組みたい」としています。