

北海道沖 千島海溝 巨大地震起こしうる程度までひずみ蓄積か | NHK 2025年3月9日 18時20分
巨大地震と大津波の発生が想定されている北海道沖の千島海溝では去年までの海底の地殻変動観測の結果、海側と陸側のプレートが非常に強くくっつく部分があり、「ひずみ」をため続けていることが確認されました。
観測を行った東北大学などの研究グループはこの「ひずみ」の蓄積がすでにマグニチュード9クラスの巨大地震を引き起こしうる程度まで進んでいる可能性もあるとして、改めて揺れや津波への備えを確認するよう訴えています。
北海道の沖合にある千島海溝沿いでは、前回、17世紀に発生したと考えられる巨大地震からおよそ400年が経過し、政府の地震調査委員会は30年以内にマグニチュード8.8以上の巨大地震の発生する確率を「7%から40%」としています。
陸側と海側のプレートの境界で「ひずみ」がどの程度たまっているのか、正確に把握するため、東北大学や北海道大学、JAMSTEC=海洋研究開発機構の研究グループは海底にGPSの観測点を設置する方法で2019年から5年間にわたって調査しました。
その結果、海側のプレートでは観測点が年間およそ8センチ陸側へ移動していた一方、陸側のプレートのうち、海側のプレートが沈み込み始めている場所に置いた観測点も同様に年間およそ8センチ、陸側に移動していることが観測されたということです。
この結果は、海側のプレートが沈み込み始めている場所でプレートどうしが強くくっついている=「固着」している場所があり、「ひずみ」をためていることを示します。
17世紀の巨大地震以降、年間8センチ程度の「固着」が続いていると仮定した場合、すでに巨大地震でプレートがずれ動いた量と同じ程度の「ひずみ」をためている可能性があるということです。
研究グループでは今後、北海道の十勝沖にも観測点を設置して詳しく調べることにしています。
東北大学災害科学国際研究所の富田史章助教は「2011年の巨大地震からまもなく14年となり記憶が失われつつある中で、改めて同じような巨大地震が起こりうるという可能性を意識して、事前の対策を考えておいてほしい」と話していました。
観測方法と意義
千島海溝ではこれまでも陸上に設置されたGPS観測点のデータからプレートどうしが強く固着し、ひずみをためていることがわかっていました。
一方で陸地から遠い部分、つまり、海側のプレートが沈み込み始めている「海溝軸」付近でひずみがたまり、一度にずれ動けば東日本大震災のような大津波を引き起こすおそれがありますが、陸上からの観測データでは詳細に把握できませんでした。
そこで東北大学や北海道大学、JAMSTEC=海洋研究開発機構の研究グループが行ったのが海底での直接観測です。
海側のプレートが沈み込み始めている「海溝軸」を挟むようにGPSの観測点を設置し、2019年から5年間にわたって調査しました。
もし、海側のプレートの観測点が移動している距離に比べ、海溝軸に近い、陸側のプレートの観測点があまり移動しない場合、プレート境界はあまりくっついておらず、ひずみがたまりにくいということになります。
一方、海溝軸に近い陸側のプレートの観測点が海側のプレートの観測点と同じように移動した場合、陸側と海側のプレートの境目はしっかりとくっつき、ひずみをためていると考えられるのです。
今回の観測の結果、海側のプレートに設置した観測点で年間でおよそ8センチ陸側へ移動していた一方、陸側のプレートで「海溝軸」に近い場所設置した観測点も同様に年間およそ8センチ、移動していました。
つまり、「海溝軸」付近でプレートどうしがしっかりとくっついている「固着域」があり、「ひずみ」をためていることが直接、確認できたのです。
千島海溝では津波堆積物の調査などから17世紀に巨大地震が起きて大津波が押し寄せたと考えられています。
この時、プレート境界がずれ動いた量は25メートル程度だったと考えられていますが、もし、およそ400年にわたって年間8センチ程度の固着が続いていると仮定した場合、すでに、同規模のずれを引き起こしうるところまでひずみをためている可能性があると、研究グループは分析しています。