大船渡市の渕上清市長
岩手 大船渡の山林火災 市が鎮圧宣言 発生から11日 NHK 2025年3月9日 19時11分
岩手県大船渡市の山林火災で9日夕方、大船渡市は火の勢いが収まり、延焼のおそれはなくなったとして火災の「鎮圧」を宣言しました。
市は引き続き避難指示を出しているすべての地区について、10日正午までに解除する見込みです。
2月26日に岩手県大船渡市で発生した山林火災では、市の面積の9％を焼失しましたが、新たな延焼は確認されていません。
9日夕方の記者会見で、大船渡市の渕上清市長は、火の勢いが収まり、延焼のおそれはなくなったとして火災の「鎮圧」を宣言しました。
渕上市長は「誰も体験したことがない大規模な火災となったが、消防の総力を結集した懸命な消火活動と雨が降ったこともあり、火の勢いが制御下に入り、延焼拡大の危険がないことから鎮圧を宣言する。長期にわたり困難な状況の中で消火活動に尽力いただいた消防の対応力の高さに敬意を表するとともに、市民を代表して感謝申し上げる」と述べました。
今回の火災では、これまでに78棟の住宅や空き家などの被害が確認されていましたが、市は、避難指示が出ている地区を含むすべての地域で調査した結果、210棟の建物で被害を確認したと明らかにしました。
住宅は102棟にのぼり、このうち76棟が全壊だということです。
また、大船渡市は、9日午後、新たに赤崎町の蛸ノ浦地区、清水地区、永浜地区、大立地区の361世帯882人に出していた避難指示を解除しました。
引き続き避難指示を出している三陸町綾里の全域と赤崎町の長崎地区、外口地区、合足地区についても10日正午までにすべて解除する見込みです。
大船渡市では、今後、鎮火に向けて残り火の消火を行うとともに警戒活動を続けることにしています。
また、住宅が被害を受けた人たちに向けて、岩手県と仮設住宅の建設を調整しているほか、民間のアパートを活用する「みなし仮設」や空いている公営住宅のリストアップを進めています。
「り災証明書」の交付 3月14日から
山林火災で建物に被害を受けた住民に対して、市は被害の程度を証明する「り災証明書」の交付を、3月14日から始めると発表しました。
申請は午前8時半から市役所の税務課資産税係と綾里地域振興出張所で受け付け、本人確認ができるマイナンバーカードや運転免許証などが必要です。
注意事項として、建物を片づけたり修理したりする前に、内部も含めて被害状況を写真に撮るよう求めています。
避難生活続ける人たちは
避難生活を続ける人たちからは安どの声が聞かれました。
三陸町綾里から避難していた新沼潔さん（56）と新沼美恵さん（50）夫婦は避難先のホテルの駐車場で、防災無線の鎮圧宣言を聞きました。
2人は、避難指示が出た先月26日から避難所やホテルのほか、車中泊をしながら避難を続けていたということです。
潔さんは「泣きそうです。とりあえず今夜は安心できます。避難生活も1週間を過ぎると精神的にやられることもありました」と涙ぐみながら話していました。
一方で「家が全焼してしまった人もいると聞いています。鎮圧されてうれしいけれど複雑です」と話していました。
およそ230人が避難している三陸町の「三陸公民館」では、人々が窓を開けて耳を澄ませていました。
赤崎町から親戚の家に避難していた30代の男性は「なかなか寝られないし親戚にも迷惑をかけると思っていたので、やっと普通の生活ができると思うとうれしいです。避難生活が長かったのでみんな待ち望んでいたと思います」とほっとした様子でした。
三陸町綾里から避難している50代の男性は「当初はこんなにひどい事態になるとは思っていませんでした。自宅に帰れるのはうれしいですが、ライフラインなどの状況は帰ってみないと分からないので心配です」と話していました。
綾里地区公民館で館長を務める男性は「本当にほっとしました。みんなで協力して避難生活を続けてこられたことに感謝しています。家が焼けた人もいるので仮設住宅などのケアが必要になると思います」と話していました。
9日午後、避難指示が解除された赤崎町の蛸ノ浦地区に戻った80代の男性は「消防隊の皆さんが全国から集まって一生懸命活動してくれたおかげです。本当にありがたいです」と話していました。
三陸町綾里にある自宅から避難している40代の女性は「消防団員の夫からワカメ養殖の仕事道具が燃えてしまったと聞きました。あした帰れるとしても、灰色の世界になっていると思うと、とても怖いです。つらいですが、命があってよかったと思い、これからまた頑張ります」と話していました。
