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小学校の玄関の扉が勢いよく開き、下校時間を迎えた元気のいい低学年の子供達が、担任の先生達に見送られながら、次々と外に駆けだしてきた。
まだ小さな体には似合わない、もてあまし気味の真新しいランドセルが、踊るように大きく弾みながら、それぞれの帰り道へと分かれていった。
楽しそうにおしゃべりをしながら歩いている子供達が、足早に通り過ぎていく中、赤いランドセルを背負った三人の女の子が、道の脇に建てられた電信柱の影で、ブロック塀を向きながら、ぴったりと肩をつけ合うように立っていた。
「ねえウミちゃん、どうする?」と、眼鏡をかけた女の子が、すぐ横に立つ女の子の顔を見ながら、困ったように言った。「私の家、動物は飼っちゃいけないって、ママが怒るの――」
真ん中にいる女の子が小さくうなずくと、背の高いもう一人の女の子が、確かめるように言った
「私のお母さんも、だめだって」
クラスメートの男子が何人か、三人の女の子に気がついてからかうように声をかけたが、男の子よりも背の高いメグミがげんこつを構えて見せると、全員おどけるように頭を抱えて、急ぎ足で逃げていった。
「ふん、弱虫」と、逃げていく男子の後ろ姿を見ながら、メグミは顔をしかめて「ベェッ」と舌を出した。
「私の家も――」と、自信なさげに目を伏せたウミは、ちょっと考えてから、覚悟を決めたように顔を上げて言った。「お兄ちゃんに話してみる。この鳥、家で飼ってあげようって」
女の子達は、ウミの顔を心配そうにのぞきこんだ。
「大丈夫? もしだめだって言われたら、この鳥どうなっちゃうの……」と、ずり落ちてきた眼鏡を戻しながら、ユカリが言った。
三人の足下には、青い空のような色をした鳥がうずくまっていた。ハトよりは小さく、けれどスズメよりは大きな見たこともない種類の鳥は、どこか怪我でもしているのか、ブルブルと小刻みに震えながら、首をすくめてギュッと目をつぶっていた。
痛みをこらえているのか、じっと動かない青い鳥は、女の子達がすぐそばにいるにもかかわらず、駆け出して逃げようとすることも、翼を羽ばたかせて舞い上がろうともしなかった。
「どうしたの、どこか痛いの……」
ウミは言いながら、膝の上に両手を置いてしゃがむと、やさしそうな目で青い鳥を見下ろした。
「鳥さん、大丈夫?」
メグミとユカリもしゃがむと、ウミと同じように両手を膝の上に置き、やはり怖くて手を伸ばせないまま、けれどどうすればいいのか、困ったような顔をしながら、青い鳥をはげますように声をかけ続けた。
小学校の玄関の扉が勢いよく開き、下校時間を迎えた元気のいい低学年の子供達が、担任の先生達に見送られながら、次々と外に駆けだしてきた。
まだ小さな体には似合わない、もてあまし気味の真新しいランドセルが、踊るように大きく弾みながら、それぞれの帰り道へと分かれていった。
楽しそうにおしゃべりをしながら歩いている子供達が、足早に通り過ぎていく中、赤いランドセルを背負った三人の女の子が、道の脇に建てられた電信柱の影で、ブロック塀を向きながら、ぴったりと肩をつけ合うように立っていた。
「ねえウミちゃん、どうする?」と、眼鏡をかけた女の子が、すぐ横に立つ女の子の顔を見ながら、困ったように言った。「私の家、動物は飼っちゃいけないって、ママが怒るの――」
真ん中にいる女の子が小さくうなずくと、背の高いもう一人の女の子が、確かめるように言った
「私のお母さんも、だめだって」
クラスメートの男子が何人か、三人の女の子に気がついてからかうように声をかけたが、男の子よりも背の高いメグミがげんこつを構えて見せると、全員おどけるように頭を抱えて、急ぎ足で逃げていった。
「ふん、弱虫」と、逃げていく男子の後ろ姿を見ながら、メグミは顔をしかめて「ベェッ」と舌を出した。
「私の家も――」と、自信なさげに目を伏せたウミは、ちょっと考えてから、覚悟を決めたように顔を上げて言った。「お兄ちゃんに話してみる。この鳥、家で飼ってあげようって」
女の子達は、ウミの顔を心配そうにのぞきこんだ。
「大丈夫? もしだめだって言われたら、この鳥どうなっちゃうの……」と、ずり落ちてきた眼鏡を戻しながら、ユカリが言った。
三人の足下には、青い空のような色をした鳥がうずくまっていた。ハトよりは小さく、けれどスズメよりは大きな見たこともない種類の鳥は、どこか怪我でもしているのか、ブルブルと小刻みに震えながら、首をすくめてギュッと目をつぶっていた。
痛みをこらえているのか、じっと動かない青い鳥は、女の子達がすぐそばにいるにもかかわらず、駆け出して逃げようとすることも、翼を羽ばたかせて舞い上がろうともしなかった。
「どうしたの、どこか痛いの……」
ウミは言いながら、膝の上に両手を置いてしゃがむと、やさしそうな目で青い鳥を見下ろした。
「鳥さん、大丈夫?」
メグミとユカリもしゃがむと、ウミと同じように両手を膝の上に置き、やはり怖くて手を伸ばせないまま、けれどどうすればいいのか、困ったような顔をしながら、青い鳥をはげますように声をかけ続けた。