「ここ――」
と、ウミが青い鳥を見つけた場所に駆け寄り、指をさした。
ニンジンは、ソラの肩から飛び降りると、「ここか……」と言いながら、ウミが指さしている場所に近づいた。
「特になにも見あたらないな」と、ニンジンは地面になにか落ちていないか、じっと目をこらしながら言った。「怪我をしてたって言ってたけど、傷はあったのかい」
ウミは首を振った。
「ただ――」と、ソラが思い出したように言った。「首になにか繋ぎ目みたいなのがあったんだ。まるで、本物そっくりのぬいぐるみみたいだった」
「おかしいな……」と、ニンジンは首をかしげた。「青い鳥をはじめて見たときは、探している鳥かと思ったけど、もしかすると似ているだけで、まったく関係のない鳥を追いかけてたのかもしれないな」
「あっ、おまわりさん……」と、ウミが息を飲むように小声で言った。
ニンジンとソラが、ハッとして顔を上げた。
「――君たち、ちょっと話を聞かせてもらってもいいかな」と、制服を着た警官が一人、こちらに歩きながら、穴が開くほど鋭い目でソラ達の様子をうかがっていた。
「なんだよ、捕まえられるような悪さはしてないぜ」と、ニンジンが小さな体に似合わず、大人びた口調で言った。
目の前にやってきた警官は、首を振りながらため息をつくと、困ったような顔をしてニンジンを見下ろした。
「お宅さん達のお子さん?」ソラとウミの顔を交互に見ながら、警官が言った。
二人はキョトンとしていたが、どちらからともなく、自信なさげに首を振った。
「逃げろ!」
ニンジンは大きな声で言うと、ウミの手を引いて走り出した。
「こらおまえら、待て――」
警官の手がソラの肩に伸びたが、ソラはさっと屈んでよけると、宙をつかんだ警官は勢いがついたまま、大きく前につんのめった。
「捕まえられてたまるかよ」と、走りながら後ろを見たニンジンが言った。
「どこに行くの」と、ウミを追い越したソラが、ニンジンを見ながら言った。
「このまま街に出よう。人混みに紛れた方が、見つけにくいはずだ」
うん、とソラはうなずいたが、息を切らせたウミがあわてて口をはさんだ。
「――だめ、きっと学校に向かってるんだよ」
振り返ったニンジンが見ると、ウミが走りながら空を見上げていた。
「どこ見てんだ、おまえ」
「見て、青い鳥」と、前を走っていたソラが、大きな声を上げた。
「なんだって」