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まぶしさに目がくらみ、とっさに顔をうつむかせたソラが、しばしばと瞬きしながら顔を上げると、弱々しく舞い上がった青い鳥の姿は、もうどこにもなかった。
すぐ近くにいたはずのニンジンも、魔女も、サングラスをかけた怪力の男達も、駆け足でソラの所に向かっていたシェリルも、目が開けられないほどまぶしい光の中、飛び去った青い鳥を追いかけて行ったのか、煙のように消え失せていた。
どういう訳か、サングラスの男達に放り投げられ、仰向けにひっくり返されたはずの車までもが、跡形もなく消え失せていた。気がつかないほどわずかな時間で元に戻し、物音ひとつ立てずに移動させたとしか、考えられなかった。
(みんな、どこに行っちゃったんだろう……)
と、ソラは腕に重さを感じ、見上げていた顔を下ろした。
青い鳥が、目もくらむような光をほとばしらせた直後、ウミが「まぶしいっ」と、腕にしがみついてきたはずだった。ところがいつの間に入れ替わったのか、ソラの腕に抱きついていたのは、見たことのない女の人だった。
「――ちょ、ちょっと」
ソラは迷惑そうに言うと、気を失っている女の人の肩を揺すり、驚かせないようにそっと腕を引き抜いた。
「お兄ちゃん……」と、顔を上げた女の人が、寝ぼけたように言った。
「えっ?」と、ソラは思わず聞き返した。
はっとして目を見開いた女の人は、あわてて両手を引っこめ、逃げるように「誰?」と、後じさりして言った。
「――誰、ですか」
不思議そうな顔をしたソラがたずねると、女の人は「ここにいたお兄ちゃん、どこに行ったか知りませんか」と、不機嫌そうに言った。
「妹がいたはずなんですけど、知りませんか……」ソラが頼りなげな表情を浮かべると、「――嘘つき!」と、女の人は怒ったように言った。「私、あなたの妹なんかじゃありませんから。お兄ちゃんがどこに行ったか、教えてください」
ソラが、困った顔をして言った。「まさか、ウミじゃないよね」
「えっ――」女の人は息を飲むと、唇を噛みながら目を伏せ、確かめるように何度もちらちらとソラを見ると、どぎまぎしながら、ぼそりと口を開いた。
「眞空、お兄ちゃん、なの?」
こくり、とソラはうなずいた。
「私、海密だけど」顔を上げた女の人は、わずかに笑みを浮かべながら言うと、目の前に立っているソラを、あらためて信じられないというように、ためつすがめつして見た。
まぶしさに目がくらみ、とっさに顔をうつむかせたソラが、しばしばと瞬きしながら顔を上げると、弱々しく舞い上がった青い鳥の姿は、もうどこにもなかった。
すぐ近くにいたはずのニンジンも、魔女も、サングラスをかけた怪力の男達も、駆け足でソラの所に向かっていたシェリルも、目が開けられないほどまぶしい光の中、飛び去った青い鳥を追いかけて行ったのか、煙のように消え失せていた。
どういう訳か、サングラスの男達に放り投げられ、仰向けにひっくり返されたはずの車までもが、跡形もなく消え失せていた。気がつかないほどわずかな時間で元に戻し、物音ひとつ立てずに移動させたとしか、考えられなかった。
(みんな、どこに行っちゃったんだろう……)
と、ソラは腕に重さを感じ、見上げていた顔を下ろした。
青い鳥が、目もくらむような光をほとばしらせた直後、ウミが「まぶしいっ」と、腕にしがみついてきたはずだった。ところがいつの間に入れ替わったのか、ソラの腕に抱きついていたのは、見たことのない女の人だった。
「――ちょ、ちょっと」
ソラは迷惑そうに言うと、気を失っている女の人の肩を揺すり、驚かせないようにそっと腕を引き抜いた。
「お兄ちゃん……」と、顔を上げた女の人が、寝ぼけたように言った。
「えっ?」と、ソラは思わず聞き返した。
はっとして目を見開いた女の人は、あわてて両手を引っこめ、逃げるように「誰?」と、後じさりして言った。
「――誰、ですか」
不思議そうな顔をしたソラがたずねると、女の人は「ここにいたお兄ちゃん、どこに行ったか知りませんか」と、不機嫌そうに言った。
「妹がいたはずなんですけど、知りませんか……」ソラが頼りなげな表情を浮かべると、「――嘘つき!」と、女の人は怒ったように言った。「私、あなたの妹なんかじゃありませんから。お兄ちゃんがどこに行ったか、教えてください」
ソラが、困った顔をして言った。「まさか、ウミじゃないよね」
「えっ――」女の人は息を飲むと、唇を噛みながら目を伏せ、確かめるように何度もちらちらとソラを見ると、どぎまぎしながら、ぼそりと口を開いた。
「眞空、お兄ちゃん、なの?」
こくり、とソラはうなずいた。
「私、海密だけど」顔を上げた女の人は、わずかに笑みを浮かべながら言うと、目の前に立っているソラを、あらためて信じられないというように、ためつすがめつして見た。