「どうしたの――」お兄ちゃん、とウミは言いかけたが、
(しーっ)と、ソラが唇の前に人差し指を立てているのを見て、あわてて言葉を飲みこんだ。
”もしもし、おたずねしたいことがあるんですが――”
ウミが手にしているインターホンの受話器から、男の声が聞こえてきた。
”もしもし――”
ソラは口を引き結んだままうなずくと、ウミに返事をするように合図を送りつつ、庭につながっている茶の間の窓を指さした。
「はい、ちょっと待っててください。いま行きます……」
ウミは受話器を置くと、青い鳥を片手に抱きながら、ソラが待っている窓に駆け寄った。
窓の鍵をはずしたソラは、音を立てないようにそっと開けると、顔を出して外の様子をうかがった。
庭には、誰もいないようだった。と、ウミがすぐ横にやってきて、ソラの顔を心配そうに見上げていた。
「今のうちに逃げだそう」と、ソラは声を低くして言った。「ニンジンに助けてもらうんだ。ウソだと思うかもしれないけど、本当に探偵なんだってさ」
「えっ?」と、ウミは驚いたように言った。「信じられない」
クククッ……と声を潜めて笑ったウミは、ソラに続いて急いで靴を履くと、足音を立てないように庭に降りた。
ウミが庭に降りるのを待って、ソラはゆっくりと、音を立てないように窓を閉めた。
「ついてきて――」
うなずいたウミを見ると、ソラは背中を家の壁につけるようにして、庭の端に建てられた物置に向かった。物置の裏には、隣の家との境に作られた塀があった。塀を乗り越えるには、ソラでも飛び上がらなければならなかったが、物置がちょうど目隠しになるので、サングラスの男が、ウミの手を取って引っ張り上げる音に気づいても、すぐに見つかる心配はなかった。
「もう少しだから、がんばって」と、ソラはウミの手をつかんで、塀の上に引っ張り上げながら言った。
塀に登ったウミを先に下ろすと、ソラは軽々と飛び降り、心細そうなウミの手を引きながら、隣の家の玄関前までやってきた。
そうっと、塀が終わった柱の陰に隠れると、ウミを背にしながら、ソラは顔だけをわずかにのぞかせて、自分の家の方を見た。
耳を澄ませると、誰か人がいるような気配が伝わってきた。と、どこにいたのか、二人組のうちの一人、金色の髪をした男が煙のように姿を現し、どこか外国の言葉を口にしながら、ソラの家に向かって走り過ぎていった。
「いまだ、行こう――」ソラはウミの手を引くと、隣の家を出て、通りに走り出た。
二人は、ソラがニンジンと出会った場所に向かって、通学路を一目散に走って行った。
途中、ウミの靴が脱げそうになって立ち止まったが、ソラが後ろを振り返っても、二人の後を追いかけてくる人の姿は、見えなかった。
青い鳥を気にしながらまた走り出すと、ウミが前を指さして言った。
(しーっ)と、ソラが唇の前に人差し指を立てているのを見て、あわてて言葉を飲みこんだ。
”もしもし、おたずねしたいことがあるんですが――”
ウミが手にしているインターホンの受話器から、男の声が聞こえてきた。
”もしもし――”
ソラは口を引き結んだままうなずくと、ウミに返事をするように合図を送りつつ、庭につながっている茶の間の窓を指さした。
「はい、ちょっと待っててください。いま行きます……」
ウミは受話器を置くと、青い鳥を片手に抱きながら、ソラが待っている窓に駆け寄った。
窓の鍵をはずしたソラは、音を立てないようにそっと開けると、顔を出して外の様子をうかがった。
庭には、誰もいないようだった。と、ウミがすぐ横にやってきて、ソラの顔を心配そうに見上げていた。
「今のうちに逃げだそう」と、ソラは声を低くして言った。「ニンジンに助けてもらうんだ。ウソだと思うかもしれないけど、本当に探偵なんだってさ」
「えっ?」と、ウミは驚いたように言った。「信じられない」
クククッ……と声を潜めて笑ったウミは、ソラに続いて急いで靴を履くと、足音を立てないように庭に降りた。
ウミが庭に降りるのを待って、ソラはゆっくりと、音を立てないように窓を閉めた。
「ついてきて――」
うなずいたウミを見ると、ソラは背中を家の壁につけるようにして、庭の端に建てられた物置に向かった。物置の裏には、隣の家との境に作られた塀があった。塀を乗り越えるには、ソラでも飛び上がらなければならなかったが、物置がちょうど目隠しになるので、サングラスの男が、ウミの手を取って引っ張り上げる音に気づいても、すぐに見つかる心配はなかった。
「もう少しだから、がんばって」と、ソラはウミの手をつかんで、塀の上に引っ張り上げながら言った。
塀に登ったウミを先に下ろすと、ソラは軽々と飛び降り、心細そうなウミの手を引きながら、隣の家の玄関前までやってきた。
そうっと、塀が終わった柱の陰に隠れると、ウミを背にしながら、ソラは顔だけをわずかにのぞかせて、自分の家の方を見た。
耳を澄ませると、誰か人がいるような気配が伝わってきた。と、どこにいたのか、二人組のうちの一人、金色の髪をした男が煙のように姿を現し、どこか外国の言葉を口にしながら、ソラの家に向かって走り過ぎていった。
「いまだ、行こう――」ソラはウミの手を引くと、隣の家を出て、通りに走り出た。
二人は、ソラがニンジンと出会った場所に向かって、通学路を一目散に走って行った。
途中、ウミの靴が脱げそうになって立ち止まったが、ソラが後ろを振り返っても、二人の後を追いかけてくる人の姿は、見えなかった。
青い鳥を気にしながらまた走り出すと、ウミが前を指さして言った。