えっ? と、様子をうかがっていたソラは、目をパチクリとしばたたかせた。そばに置かれていた人形が動き出し、睨み合う二人の間に割って入ったからだった。
「なんなのよ、これ――」と、シェリルもあぜんとして、言葉を失っていた。
メイド服を着た人形のような女の子は、身だしなみを気にするように裾や襟を直すと、凍りついたように口を半開きにしているシェリルに言った。
「どうも申し訳ありません、お姉様。私が飛び出したことで言い争うことになってしまって――。でも、仕方がなかったんですの。私があそこで出て行かなければ、おばさまが怪我をするところだったんですから」
人形のような女の子は、シルビアの方を向いて言った。
「おばさま。無茶はしないでくださいって、あれほど言ったじゃないですか。青い鳥が欲しいのはわかりますけど、人が見つけた物を横取りしようだなんて、とってもいけないことですのよ」
「うるさいねぇ、私にお説教するつもりかい」と、シルビアは鼻に皺を寄せて言った。「いつからそんなに偉くなったんだか……。まぁ、年の割にはしっかりしているのかもしれないけどね。それにしても、おまえはまだ子供のくせに、生意気なんだよ」
「あら、そんなこと言ってもいいんですの? 今だって私が助けなければ、おばさまは大怪我をして、病院のベッドの上でうなされていたところですのよ」
「フン、余計なことに首を突っこむんじゃないよ」と、シルビアは逃げるように歩き出した。
「あら――」と、人形のような女の子が、あわてたように後を追いかけた。「もしかして、逃げるんですの、おばさま」
「大きな声出すんじゃないよ、みっともない――」と、シルビアは憎々しげに言った。「まったくこの娘ときたら、できが悪くってしょうがないんだから」
人形のような女の子が「お詫びしないんですか」と、呼び止めるのも聞かず、シルビアはずんずんと、逃げるように歩き去って行った。
腕を組んだシェリルは、外したサングラスの先をもてあますように噛みながら、立ち去っていく二人をじっと見ていたが、「ハァ……」と小さくため息をつくと、車に乗りこんだ。
ソラは、走り去っていく車の音を耳にしながら、つっかけた靴もそのまま、飛び跳ねるように玄関から家の中に入ると、急いで妹のいる部屋に向かった。
トントン――。
二人の部屋の前にやってくると、ソラは怒っているかもしれない妹の機嫌を損ねないよう、部屋のドアを軽くノックした。
「ねぇ、ウミ。鳥のことで話があるんだけどさ、入ってもいいよね?」
ソラは耳を澄ませたが、中からはなにも聞こえてこなかった。
「お兄ちゃんの机もあるんだから、入るよ――」
ガチャリ、とソラが部屋のドアを開けると、ウミが鳥を両腕で抱きしめながら、窓から隠れるように頭を低くして、床に座っていた。
「なんなのよ、これ――」と、シェリルもあぜんとして、言葉を失っていた。
メイド服を着た人形のような女の子は、身だしなみを気にするように裾や襟を直すと、凍りついたように口を半開きにしているシェリルに言った。
「どうも申し訳ありません、お姉様。私が飛び出したことで言い争うことになってしまって――。でも、仕方がなかったんですの。私があそこで出て行かなければ、おばさまが怪我をするところだったんですから」
人形のような女の子は、シルビアの方を向いて言った。
「おばさま。無茶はしないでくださいって、あれほど言ったじゃないですか。青い鳥が欲しいのはわかりますけど、人が見つけた物を横取りしようだなんて、とってもいけないことですのよ」
「うるさいねぇ、私にお説教するつもりかい」と、シルビアは鼻に皺を寄せて言った。「いつからそんなに偉くなったんだか……。まぁ、年の割にはしっかりしているのかもしれないけどね。それにしても、おまえはまだ子供のくせに、生意気なんだよ」
「あら、そんなこと言ってもいいんですの? 今だって私が助けなければ、おばさまは大怪我をして、病院のベッドの上でうなされていたところですのよ」
「フン、余計なことに首を突っこむんじゃないよ」と、シルビアは逃げるように歩き出した。
「あら――」と、人形のような女の子が、あわてたように後を追いかけた。「もしかして、逃げるんですの、おばさま」
「大きな声出すんじゃないよ、みっともない――」と、シルビアは憎々しげに言った。「まったくこの娘ときたら、できが悪くってしょうがないんだから」
人形のような女の子が「お詫びしないんですか」と、呼び止めるのも聞かず、シルビアはずんずんと、逃げるように歩き去って行った。
腕を組んだシェリルは、外したサングラスの先をもてあますように噛みながら、立ち去っていく二人をじっと見ていたが、「ハァ……」と小さくため息をつくと、車に乗りこんだ。
ソラは、走り去っていく車の音を耳にしながら、つっかけた靴もそのまま、飛び跳ねるように玄関から家の中に入ると、急いで妹のいる部屋に向かった。
トントン――。
二人の部屋の前にやってくると、ソラは怒っているかもしれない妹の機嫌を損ねないよう、部屋のドアを軽くノックした。
「ねぇ、ウミ。鳥のことで話があるんだけどさ、入ってもいいよね?」
ソラは耳を澄ませたが、中からはなにも聞こえてこなかった。
「お兄ちゃんの机もあるんだから、入るよ――」
ガチャリ、とソラが部屋のドアを開けると、ウミが鳥を両腕で抱きしめながら、窓から隠れるように頭を低くして、床に座っていた。