「おい、ソラ――」と、呼び止めるニンジンの声を耳にしながら、ソラはサングラスをかけた二人組の男が、こちらに向かって歩いてくるのを見て、走り出そうと前に出した足を、地面に食いこませるようにして立ち止まった。
「窓からのぞいてた人だよ」と、ウミがソラに言った。
ソラは、黙ってうなずいた。
と、二人組の男が歩いてくる手前の道から、爆音を轟かせた赤いスポーツカーが、勢いよく走り出してきた。
スポーツカーは、男達の行く手を遮るように止まると、運転席のドアが勢いよく開き、長い髪をなびかせたシェリルが、サングラスをはずしながら、飛び出すように降りてきた。
「どうしよう」と、ソラとウミは手をつなぎながら、足踏みをするようにキョロキョロと辺りを見回した。
ドゴン――。
と、道を塞ぐように止まっていた赤いスポーツカーが、軽々と宙に躍り上がった。
「なっ」と、その様子を見ていたニンジンは、声を洩らしたまま口を半開きにして凍りついた。
二人組の男達は、ソラ達の方に向かって、何事もなかったかのようにゆっくりと歩いてきた。
車を降り、駆け足でソラ達のもとに向かっていたシェリルが、後ろの男達を振り返って「チッ――」と、憎々しげに舌打ちをした。
「――だめっ」
と、ウミが大きな声で言いながら、手を伸ばして宙を見上げた。
ソラが顔を上げると、青い鳥が弱々しく翼を羽ばたかせ、頭上高く舞い上がろうとしていた。
青い鳥を追い求めて、その場に集まった全員が、そろって顔を上げた。
カッ――
と、目をそらせたくなるほどまぶしい光が、青い鳥の胸からほとばしった。
すべての色が消え、すべての音が消え、真っ白い光だけが、なにもかもすべてを包みこんでしまった。
やがて、徐々に目を開けることができるようになった彼らは、誰もがあり得ない、と我が目を疑った。