「――お兄ちゃん」と、ウミはじっとソラの顔を見ると、小さく首を振りながら言った。「私達って、いま大人になってるんだよ。こっちは知ってても、見た目だけじゃ、誰もお兄ちゃんだなんて、わかりっこないよ」
「ちぇっ、忘れてた――」と、ソラは大きくため息をついた。
がっかりしながら家の前に到着すると、ソラが玄関のドアを開けようとして、ノブに手を伸ばした。
「あれ、鍵がかかってる」ソラはガチャガチャと、何度もノブを回しつつ、外からのぞき窓に目を当てて、中をのぞきこもうとした。どうしてドアが開かないのか、原因がわからず、あせっているようだった。
「――どうしちゃったの」と、ウミが怒ったように言った。「私達、ベランダから外に出たんだから、鍵なんか開いてるわけないじゃない」
ソラはぴたりと動きを止めると、赤くなった顔を振り向かせて言った。
「うるさいな、そんなこと知ってるに決まってるだろ。もしかしたら、お母さんが帰ってきてるかもしれないって、考えただけさ」
口をとがらせ、ふくれっ面をしたソラがインターホンを押すと、母親のやさしい声が「どちら様ですか?」と聞こえてきた。
「ただいま、お母さん」
二人は、満面の笑みを浮かべながら、声をそろえて言った。
「お帰りなさい」と答えた母親は、ちょっと待っていなさい、と言うと、いくらも間を置かず、ドアの鍵をはずす小気味のいい音が聞こえた。
「ただいま――」
ソラがドアを開けて玄関に入ろうとすると、はっと目を見開いた母親が、通せんぼをするように立ち塞がった。
「あの、どちら様ですか?」
「えっ……」と息を飲み、後ろ向きで下がったソラと、ドアの横に立っていたウミは、声も出せないまま、じっと母親の顔を見ていた。
「――子供達は、どこですか」
玄関のドアに手をかけたまま、母親は意を決したように外に出てくると、目の前にいる二人が、よもやソラとウミの兄妹などとは思いもせず、二人がどこに行ったのか、問い詰めるように行方をたずねた。
二人は互いの顔を見合わせると、ソラが口ごもりながら言った。
「ぼく達が、そうなんだけど……」
母親は耳を疑うように眉をひそめると、なにも言わず玄関の中に戻り、ばたんと勢いよくドアを閉めたとたん、カチャリカチャッとすぐに鍵をかけてしまった。
「ちぇっ、忘れてた――」と、ソラは大きくため息をついた。
がっかりしながら家の前に到着すると、ソラが玄関のドアを開けようとして、ノブに手を伸ばした。
「あれ、鍵がかかってる」ソラはガチャガチャと、何度もノブを回しつつ、外からのぞき窓に目を当てて、中をのぞきこもうとした。どうしてドアが開かないのか、原因がわからず、あせっているようだった。
「――どうしちゃったの」と、ウミが怒ったように言った。「私達、ベランダから外に出たんだから、鍵なんか開いてるわけないじゃない」
ソラはぴたりと動きを止めると、赤くなった顔を振り向かせて言った。
「うるさいな、そんなこと知ってるに決まってるだろ。もしかしたら、お母さんが帰ってきてるかもしれないって、考えただけさ」
口をとがらせ、ふくれっ面をしたソラがインターホンを押すと、母親のやさしい声が「どちら様ですか?」と聞こえてきた。
「ただいま、お母さん」
二人は、満面の笑みを浮かべながら、声をそろえて言った。
「お帰りなさい」と答えた母親は、ちょっと待っていなさい、と言うと、いくらも間を置かず、ドアの鍵をはずす小気味のいい音が聞こえた。
「ただいま――」
ソラがドアを開けて玄関に入ろうとすると、はっと目を見開いた母親が、通せんぼをするように立ち塞がった。
「あの、どちら様ですか?」
「えっ……」と息を飲み、後ろ向きで下がったソラと、ドアの横に立っていたウミは、声も出せないまま、じっと母親の顔を見ていた。
「――子供達は、どこですか」
玄関のドアに手をかけたまま、母親は意を決したように外に出てくると、目の前にいる二人が、よもやソラとウミの兄妹などとは思いもせず、二人がどこに行ったのか、問い詰めるように行方をたずねた。
二人は互いの顔を見合わせると、ソラが口ごもりながら言った。
「ぼく達が、そうなんだけど……」
母親は耳を疑うように眉をひそめると、なにも言わず玄関の中に戻り、ばたんと勢いよくドアを閉めたとたん、カチャリカチャッとすぐに鍵をかけてしまった。