タン、タタンッ――。
拳銃が二度、光を瞬かせて火花を吹くと、ヴァンパイアのような怪物は、よろよろと、胸に手を当てて崩れ落ちた。
バサリ、とおびただしいほどの羽ばたきが起こった。目の前にいる怪物の姿が、急に輪郭を失い、ゆらゆらと陽炎のように揺れると、無数のコウモリが現れ、黒い固まりとなって、警察官に襲いかかった。
コウモリに襲いかかられた警察官は、懸命に抵抗したが、全身にコウモリの大群をまとわりつかせたまま、力なくうつ伏せに倒れてしまった。
逃げたソラとウミの二人を追って、コウモリが再び舞い上がると、身につけていた制服と拳銃を残し、警察官はその場から跡形もなく消え失せていた。
横向きになったまま、力なく倒れている獣をやすやすと飛び越え、玄関に向かっていたソラとウミだったが、無数のコウモリが竜巻のような塊となって、二人の行く手に立ち塞がった。
「来るな!」
と、ソラは着ていた上着を脱ぎ、ムチのように振り回して、襲いかかってくるコウモリを追い払おうとした。
ウミは、しゃがみこんで耳を両手で押さえたまま、悲鳴を上げた。
「ふん――」
と、風を切る音とともに声が聞こえ、サクリッ、サクッと真っ二つに切断されたコウモリが、ばらばらと廊下に落ちていった。
きらりと光を反射する刃が、薄暗い廊下を何度も切り裂いた。
チャキン――。
黒ずくめの装束を身につけた忍者が、片膝を突き、剣を素早く背中のさやに収めた。
わずかの間で、たくさんのコウモリが切り落とされたが、黒い塊となったコウモリの大群はひるまず、現れた忍者に狙いを定めると、竜巻のように渦を巻いて襲いかかった。
と、懐に手を差し入れた忍者が、なにやら丸い物を取り出し、大きく振りかぶると、足下に投げつけた。
ボンッ――。
火の粉と共に霧のような煙があっという間に沸き上がり、目の前が白一色に覆われてしまった。