「――けど知る限り、生き物が特殊な力を発揮するのは、ほんのわずかな間だけだろ。命を奪うほどの毒を持っていたとしても、たいていは威嚇するだけで、その場を切り抜けようとする。だとすれば、青い鳥も同じで、自分に危険が迫って仕方なく力を発揮しただけで、変えられてしまったこの姿も、一時的に変化しただけで、いずれは元に戻るんじゃないだろうか」と、ニンジンが自信ありげに言った。
「いつ、元の姿に戻れるの――」と、ウミが鼻にしわを寄せて言った。
「考えたんだけど、青い鳥は自分が捕まえられそうになったから、特殊な力を発揮したんだよな」ニンジンが言うと、二人はこくりとうなずいた。「――なら逆に言うと、青い鳥はどこかに逃げようとして、奇妙な力を使ったんだ。青い鳥がどこに逃げようとしたのか、その場所がわかれば、きっとあの鳥を捕まえることができる。鳥を捕まえれば、元の姿に戻るヒントがわかるかもしれない。少なくとも、あの青い鳥がどんな力を持っているのか、確かめることはできるはずだ」
「ウミ、あの鳥、どこで見つけたの?」と、ソラがはげますように言った。
「――学校の近くの、電信柱のところ」ベソを掻くように鼻をすすったウミが、声を震わせて言った。「怪我をしてうずくまっていたのを、私が見つけたの」
「あきらめちゃだめだって、ウミ」と、ソラが力強く言った。
「確率は低いだろうが、怪我をして動けなかったんだ。同じ場所には舞い戻っていないにしても、どうしてそこにうずくまっていたのか、理由がわかるものが、なにか見つかるかもしれない」と、ニンジンが言った。「行こう、鳥を見つけた場所に案内してくれ」
ニンジンが言うと、ウミは二人の顔を交互に見ながら、唇をギュッと引き結んだ。
「この道をまっすぐ進めば、学校のそばまで行けるはずだよ」と、ソラが先頭に立って歩き始めた。
――――……
人通りのない道を抜けると、学校の校門がわずかに見えてきた。心持ち早足で進んでいくと、固く閉ざされた校門の奥に、下校時間が過ぎて生徒達のいなくなった学校の校舎が、でんとそびえるように現れた。すべて閉じられた窓は、大きく西に傾いた日の光を、静かに反射していた。
校門の前まで来ると、三人は回れ右をし、ウミが青い鳥を見つけた時のことを思い出しながら、友達と帰った道のりをたどって行った。
「あれ、この道って、通学路じゃないよね」と、ニンジンを肩車して歩いているソラが言った。
「今日は特別なの」と、ウミが立ち止まって振り返った。「ユカリちゃんが、きれいなお花が咲いていたのを見つけたんだもん。そんなこと言うんなら、お兄ちゃんだって――」
「なんだよ、言ってみろよ」と、ソラが唇をとがらせて言い返した。
「おいおい、仲がいいのはわかるけどな、つまんないことでいがみ合うなって」と、ニンジンがあきれたように言った。「中身は子供なのに、見た目が大人ってのは、どうにもやりづらいな」
「いつ、元の姿に戻れるの――」と、ウミが鼻にしわを寄せて言った。
「考えたんだけど、青い鳥は自分が捕まえられそうになったから、特殊な力を発揮したんだよな」ニンジンが言うと、二人はこくりとうなずいた。「――なら逆に言うと、青い鳥はどこかに逃げようとして、奇妙な力を使ったんだ。青い鳥がどこに逃げようとしたのか、その場所がわかれば、きっとあの鳥を捕まえることができる。鳥を捕まえれば、元の姿に戻るヒントがわかるかもしれない。少なくとも、あの青い鳥がどんな力を持っているのか、確かめることはできるはずだ」
「ウミ、あの鳥、どこで見つけたの?」と、ソラがはげますように言った。
「――学校の近くの、電信柱のところ」ベソを掻くように鼻をすすったウミが、声を震わせて言った。「怪我をしてうずくまっていたのを、私が見つけたの」
「あきらめちゃだめだって、ウミ」と、ソラが力強く言った。
「確率は低いだろうが、怪我をして動けなかったんだ。同じ場所には舞い戻っていないにしても、どうしてそこにうずくまっていたのか、理由がわかるものが、なにか見つかるかもしれない」と、ニンジンが言った。「行こう、鳥を見つけた場所に案内してくれ」
ニンジンが言うと、ウミは二人の顔を交互に見ながら、唇をギュッと引き結んだ。
「この道をまっすぐ進めば、学校のそばまで行けるはずだよ」と、ソラが先頭に立って歩き始めた。
――――……
人通りのない道を抜けると、学校の校門がわずかに見えてきた。心持ち早足で進んでいくと、固く閉ざされた校門の奥に、下校時間が過ぎて生徒達のいなくなった学校の校舎が、でんとそびえるように現れた。すべて閉じられた窓は、大きく西に傾いた日の光を、静かに反射していた。
校門の前まで来ると、三人は回れ右をし、ウミが青い鳥を見つけた時のことを思い出しながら、友達と帰った道のりをたどって行った。
「あれ、この道って、通学路じゃないよね」と、ニンジンを肩車して歩いているソラが言った。
「今日は特別なの」と、ウミが立ち止まって振り返った。「ユカリちゃんが、きれいなお花が咲いていたのを見つけたんだもん。そんなこと言うんなら、お兄ちゃんだって――」
「なんだよ、言ってみろよ」と、ソラが唇をとがらせて言い返した。
「おいおい、仲がいいのはわかるけどな、つまんないことでいがみ合うなって」と、ニンジンがあきれたように言った。「中身は子供なのに、見た目が大人ってのは、どうにもやりづらいな」