「ただいま――」
と、片手にランドセルを持ったソラが、部屋の中を探るようにキョロキョロしながら、茶の間にやってきた。
情報番組を放送しているテレビが、つけっぱなしにされていた。
ウミの赤いランドセルが、テレビと向かい合わせに置かれたテーブルの間に、放り出されていた。
「ウミ……」
と、ソラは小さな声で言いながら、ソファーの上にランドセルを置いた。
背伸びをするように奥の台所をのぞいたが、隠れていそうな食卓テーブルの下にも、妹の姿はなかった。
(どこに行ったんだろう)
ソラが二人の部屋に行こうとすると、和室の襖が、わずかに開いているのに気がついた。
そっと和室に近づき、ソラが静かに襖を開けると、ウミがこちらに背中を向けて、ぺたりと畳にお尻をつけて座っていた。
「どうしたの――」
ソラは部屋に入ると、ぽつりとつぶやくように言った。
「学校でなにかあった?」
くるり、と顔を上げたウミは、外の物置から引っ張り出してきたのか、少し汚れた靴の箱を、大事そうに抱えていた。
「お兄ちゃん……」と、ウミは悲しそうな顔をして言った。
ソラは黙って近づくと、蓋のない箱の中をのぞきこんだ。
「えっ、鳥?」ソラは、驚いたように言った。
ウミが持っていた箱の中には、見たこともないきれいな青色の鳥がいた。ティッシュペーパーをふかふかに敷き詰め、その上にちょこんと乗せられた鳥は、どこかにケガを負っているのか、首をすくめてギュッと目をつぶり、まるで動かず、じっと痛みをこらえているようだった。
「どこにいたの」
ソラが箱の中に手を伸ばそうとすると、ウミはサッと箱を抱き上げ、そっぽを向くように体をねじると、怒ったように言った。
「怪我をして苦しそうだったの――」
「なんで怒ってるんだよ」と、むすっとしたソラが、口をとがらせるように言った。「ウミのお兄ちゃんなんだから、見せてくれたっていいだろう」
「絶対捨てたりなんかしないんだから」と、ウミは鼻をすすりながら言った。
「お兄ちゃんだって、捨てたりなんかしないよ。怪我してるかもしれないんだから、見せてみろって」
「――ウソじゃないよね」と、顔を振り向かせたウミが、疑うような目でソラをた。
さっと立ち上がったソラは、胸を張って気をつけをすると、左手を高く持ち上げて言った。
「神様に誓って、うそは言いません」
と、片手にランドセルを持ったソラが、部屋の中を探るようにキョロキョロしながら、茶の間にやってきた。
情報番組を放送しているテレビが、つけっぱなしにされていた。
ウミの赤いランドセルが、テレビと向かい合わせに置かれたテーブルの間に、放り出されていた。
「ウミ……」
と、ソラは小さな声で言いながら、ソファーの上にランドセルを置いた。
背伸びをするように奥の台所をのぞいたが、隠れていそうな食卓テーブルの下にも、妹の姿はなかった。
(どこに行ったんだろう)
ソラが二人の部屋に行こうとすると、和室の襖が、わずかに開いているのに気がついた。
そっと和室に近づき、ソラが静かに襖を開けると、ウミがこちらに背中を向けて、ぺたりと畳にお尻をつけて座っていた。
「どうしたの――」
ソラは部屋に入ると、ぽつりとつぶやくように言った。
「学校でなにかあった?」
くるり、と顔を上げたウミは、外の物置から引っ張り出してきたのか、少し汚れた靴の箱を、大事そうに抱えていた。
「お兄ちゃん……」と、ウミは悲しそうな顔をして言った。
ソラは黙って近づくと、蓋のない箱の中をのぞきこんだ。
「えっ、鳥?」ソラは、驚いたように言った。
ウミが持っていた箱の中には、見たこともないきれいな青色の鳥がいた。ティッシュペーパーをふかふかに敷き詰め、その上にちょこんと乗せられた鳥は、どこかにケガを負っているのか、首をすくめてギュッと目をつぶり、まるで動かず、じっと痛みをこらえているようだった。
「どこにいたの」
ソラが箱の中に手を伸ばそうとすると、ウミはサッと箱を抱き上げ、そっぽを向くように体をねじると、怒ったように言った。
「怪我をして苦しそうだったの――」
「なんで怒ってるんだよ」と、むすっとしたソラが、口をとがらせるように言った。「ウミのお兄ちゃんなんだから、見せてくれたっていいだろう」
「絶対捨てたりなんかしないんだから」と、ウミは鼻をすすりながら言った。
「お兄ちゃんだって、捨てたりなんかしないよ。怪我してるかもしれないんだから、見せてみろって」
「――ウソじゃないよね」と、顔を振り向かせたウミが、疑うような目でソラをた。
さっと立ち上がったソラは、胸を張って気をつけをすると、左手を高く持ち上げて言った。
「神様に誓って、うそは言いません」