くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

機械仕掛けの青い鳥(27)

2019-04-26 23:18:19 | 「機械仕掛けの青い鳥」
 ソラはウミを背にして、牙をむくヴァンパイアのような怪物の方を向きながら、徐々に後ろに下がっていった。 
 ウミはソラの服をつかみつつ、肩幅の広い影の方を向きながら後じさりしていたが、ソラと背中合わせになると、ゾクリと身震いして足を止めた。
「ちょっと、どうして――」と言ったウミの声を聞き、足を止めて振り向いたソラは、異様なものを目にしてその場に凍りついた。
 スーツを着た先生が、腹痛をこらえるように跪き、両手を廊下についていた。と、獣の遠吠えが、堰を切ったように轟いた。
 手足を廊下についたまま、顎を突き出すように上を向いた先生の顔は、骨をポキポキと鳴らしながら長く伸び、犬のような風貌へと変わっていった。同時に先生の着ていたスーツが、内側からはち切れるように裂け、全身を覆うふさふさとした強い毛が、中からもっさりとあふれ出してきた。

 オオオゥ――ッ……。

 凶暴な犬歯を剥き出しにしたまま、狼のような獣に変身した先生が、ヘビのような長い尻尾をのたうつように振り乱しながら、二人に向かって飛びかかってきた。
 互いの手を取りながら、二人はなすすべもなく、その場に立ちつくすしかなかった。
 と、鋭い牙が二人に襲いかかる直前、廊下の天井から、なにかが獣に覆い被さった。
 身動きができなくなった獣は、地響きを立てて横倒しになり、泡のようになったつばきを吹き飛ばしながら、その場でむなしくのたうち回った。
 とっさに目をつぶった二人が、恐る恐る目を開けると、漁網のような網に全身を絡め取られ、身動きもできないほど、ぐるぐる巻きになっている獣がいた。
 助かったのかな……? と、状況を把握できないでいる二人が後ろを向くと、制服を着た警察官が、こちらに背を向けて立っていた。
「さっきの――」と、警察官の顔を見たソラが、思わず口走った。通学路で、三人に声をかけてきた警察官に間違いなかった。
 警察官は無表情のまま、ヴァンパイアのような怪物と向かい合っていた。自然に下ろされた右手には、すでに拳銃が握られていた。
 足を止めた怪物は、宙を舞うようにゆらゆらと動きながら、挑発するように時折甲高い奇声を発し、襲いかかる機会を今か今かとうかがっているようだった。

「二人は、先に行け」と、警察官が後ろを向いたまま言った。

 ひりひりとした緊張感で張り詰めた空気の中、気づかれないように後じさりしていたソラとウミは、警察官の声を聞いて小さくうなずくと、サッと後ろを振り返り、廊下の先に見える玄関に向かって、一目散に走り始めた。
 怪物が、二人を追いかけるように飛び上がった。
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機械仕掛けの青い鳥(26)

2019-04-26 21:42:57 | 「機械仕掛けの青い鳥」
「どうしたんですか、下校時間はとっくに過ぎているはずですけど」こちらに顔を向けている先生が、うっすらと口元に笑みを浮かべて言った。
 ウミは、ソラの後ろに下がると、背中の陰に隠れるようにして、右腕の袖をギュッとつかんだ。
 背中を向けている先生が、ゆっくりと振り向いた。
「どうして、早く帰らないんだ」
 青白いロウソクのような顔が、カッと口を開くと、針の山を思わせる無数の牙が、ぽたぽたと、糸を引きながらよだれをしたたらせた。

「キャー――……」

 耳を覆いたくなるようなウミの悲鳴が、ソラの鼓膜を破るかのように甲高く響いた。
 ソラはウミの手をつかむと、職員室のドアを蹴破るような勢いで、廊下に走り出た。

「待て!」

 もはや先生ではない、ヴァンパイアのような得体の知れない怪物が、二人の後ろを追いかけてきた。
 気持ちの悪い笑い声が、すぐそばまで迫ってきた。広いと思っていた廊下だったが、夢中で走る二人にとっては、あっけないほどすぐに行き止まりになり、学校の外に出るには、狭い階段を下りるしか、ほかに逃げ場がなくなった。
「いそいで!」ソラは階段の横で立ち止まると、息を切らせているウミを先に行かせた。
 追いかけてくる怪物を見る余裕もなく、しかし階段を駆け下りる直前、ソラがちらりと目の端で捉えたのは、奇声を発しながら宙を舞う、黒いマントのような姿だった。
 階段を下りたウミは、玄関には向かわず、走ってきたのとは逆の方向に向かって、再び廊下を走り出した。学校の外に出ようと考えていたソラは「違う」、と舌打ちをしたが、もはや後戻りすることはできなかった。
 ウミに追いついたソラは、横に並ぶと言った。
「向こうの玄関から、外に出るんだ」
「わかった」息を切らせたウミが、短く言った。
 と、真向かいに見える窓の明かりを受けて、人影が見えた。スーツを着た肩幅の広い影は、職員室にいたもう一人の先生に違いなかった。
 走っている二人は互いに声を掛け合わなかったが、通せんぼをするような先生の姿を目にとめると、その足はみるみる勢いを失っていった。
 ゆっくりと、先生が二人の方に向かってきた。
 バサリ、と二人の後ろで風を切るような音がすると、耳に残る気味の悪い声が、廊下にこだました。ヴァンパイアのような怪物が、廊下に降りてきたのだった。
 前後を挟まれた二人は、やむなく足を止めた。
 ヴァンパイアのような怪物は、「ケケケケッ……」と笑いながら、やはりゆっくりと、二人に向かって歩き始めた。
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よもよも

2019-04-26 05:52:14 | Weblog
やれやれ。

仕事でまたも札幌出張…。

26日って言えば、

宇宙の人口の半分

取り返す映画の公開でしょ。

行きたいけど、

はぁ、仕事だし無理。

はぁ…。
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