ソラが家の近くまでやってくると、別のクラスの生徒が何人か、二人組の、黒いサングラスをかけた外国人のような男に呼び止められ、なにかを聞かれているところに出くわした。黒っぽいスーツに身を包んだ彼らは、ニンジンよりも背が高く、どちらともがっちりとしていて、まるで服を着たゴリラのようだった。
「きみ、この近所の子だろ――」と、男の一人が、通り過ぎようとしたソラに声をかけた。「ちょっと、聞かせてくれないかな」
外国人だとばかり思いこんでいたソラは、意外にもよどみのない、流ちょうな発音で声をかけられ、ぎくり、と驚いて立ち止まった。
「そんなに怖がらなくてもいいよ」と、金色の髪をしたもう一人の男が、笑いながら顔を上げ、ソラを見ながら言った。
「――じゃあみんな、どうもありがとう」金色の髪の男はすぐに顔を戻すと、話をしていた別のクラスの生徒にお礼を言った。
こくり、と小さく会釈をした子供達は、ちらりとソラの方を見ると、別段おびえた様子もなく、何事もなかったようにおしゃべりをしながら、歩き去って行った。
「別にあやしい者じゃないよ、ちょっと教えてくれるだけでいいんだ」と、先に声をかけてきた男が、近づいてきた。
「なんですか……」と、わずかに緊張した様子のソラが、身構えるように言った。
「青い色の鳥なんだけど、この辺で見かけなかったかな――」生徒達を見送っていた金色の髪の男が、壁のように大きな体を振り向かせて言った。「めずらしい鳥でね、大切に世話をしていたんだけれど、間違って逃がしちゃったんだ。どこかで見なかったかな」
「青い鳥?」
首をかしげたソラが、顎に手をあてて考えるように言うと、男達は「水色の絵の具みたいな、青い色をした鳥なんだ」と、声をそろえて言った。
「おじさん達の鳥なの」と、ソラが眉をひそめるように言った。
「ああ」と、手前にいる男が、うなずくように言った。「まぁ、正しくはおじさん達の鳥じゃないんだけどね、とっても貴重な鳥で、目を離した隙に逃げてしまったんだよ。逃げ出した時、きっとケガをしただろうから、早く手当てしてやらなきゃならないんだ」
「見かけなかったけど――」と、ソラはニンジンが言っていたことを思い出して言った。
「同じような鳥を探していた人は、いたよ」
「――」と、男達は顔を見合わせた。表情が見えないサングラスの奥で、無言のまま、互いの意志を確認したようだった。
「どんな人だったかな」と、近づいてきた手前の男が、ソラの顔をのぞきこんだ。「おじさん達みたいな人だったかい?」
「ううん」と、ソラは首を振った。「どっちかって言うと、ぼく達みたいな感じ」
「きみみたいな、子供だったかい――」と、男が眉をひそめて言った。
ソラは首を振り、違うよ、と言った。
「探偵だよ」
「きみ、この近所の子だろ――」と、男の一人が、通り過ぎようとしたソラに声をかけた。「ちょっと、聞かせてくれないかな」
外国人だとばかり思いこんでいたソラは、意外にもよどみのない、流ちょうな発音で声をかけられ、ぎくり、と驚いて立ち止まった。
「そんなに怖がらなくてもいいよ」と、金色の髪をしたもう一人の男が、笑いながら顔を上げ、ソラを見ながら言った。
「――じゃあみんな、どうもありがとう」金色の髪の男はすぐに顔を戻すと、話をしていた別のクラスの生徒にお礼を言った。
こくり、と小さく会釈をした子供達は、ちらりとソラの方を見ると、別段おびえた様子もなく、何事もなかったようにおしゃべりをしながら、歩き去って行った。
「別にあやしい者じゃないよ、ちょっと教えてくれるだけでいいんだ」と、先に声をかけてきた男が、近づいてきた。
「なんですか……」と、わずかに緊張した様子のソラが、身構えるように言った。
「青い色の鳥なんだけど、この辺で見かけなかったかな――」生徒達を見送っていた金色の髪の男が、壁のように大きな体を振り向かせて言った。「めずらしい鳥でね、大切に世話をしていたんだけれど、間違って逃がしちゃったんだ。どこかで見なかったかな」
「青い鳥?」
首をかしげたソラが、顎に手をあてて考えるように言うと、男達は「水色の絵の具みたいな、青い色をした鳥なんだ」と、声をそろえて言った。
「おじさん達の鳥なの」と、ソラが眉をひそめるように言った。
「ああ」と、手前にいる男が、うなずくように言った。「まぁ、正しくはおじさん達の鳥じゃないんだけどね、とっても貴重な鳥で、目を離した隙に逃げてしまったんだよ。逃げ出した時、きっとケガをしただろうから、早く手当てしてやらなきゃならないんだ」
「見かけなかったけど――」と、ソラはニンジンが言っていたことを思い出して言った。
「同じような鳥を探していた人は、いたよ」
「――」と、男達は顔を見合わせた。表情が見えないサングラスの奥で、無言のまま、互いの意志を確認したようだった。
「どんな人だったかな」と、近づいてきた手前の男が、ソラの顔をのぞきこんだ。「おじさん達みたいな人だったかい?」
「ううん」と、ソラは首を振った。「どっちかって言うと、ぼく達みたいな感じ」
「きみみたいな、子供だったかい――」と、男が眉をひそめて言った。
ソラは首を振り、違うよ、と言った。
「探偵だよ」