くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

機械仕掛けの青い鳥(7)

2019-04-07 22:08:21 | 「機械仕掛けの青い鳥」
「絶対?」
 ウミが念を押すように言うと、ソラはこくりとうなずき、「うん、絶対――」と妹を見ながら言った。
「じゃあ、いいよ」
 ソラはウミが差し出した箱を受けとると、具合が悪そうにうずくまっている鳥を、まじまじと眺めた。
 青い鳥は、見た限りハトよりは小さかったが、スズメや、友達の家で飼われているセキセイインコよりは、ずっと大きかった。なによりも特徴的なのは、翼をはじめとして、まぶしく晴れた空のように青い色をしていることだった。
「へぇー、きれいな鳥だなぁ」
 と、ソラはあらためて、感心したように言った。心配そうなウミは、ソラの横から、自分の顔を割りこませるようにして、一緒に箱の中をのぞきこんだ。
 ソラは、帰り道で会ったニンジンのことを思い出していた。探しているという貴重な鳥と、特徴がぴたりと一致していた。
 サングラスの男達が探していたのも、青い色の鳥だった。はたして、どちらとも同じ鳥を探しているんだろうか……。
「――えっ」と、ソラは小さく声を上げ、青い鳥の首の辺りを、そっとさわった。
「どうしたの」と、青い鳥とソラの顔を交互に見ながら、ウミが心配そうに言った。
「この鳥、本物……?」と、ソラは、青い鳥の首の辺りを確かめるように指先で探ると、持ち上げていた箱を下げ、ウミにも見えるように傾けた。
「――なんか、変な線が入ってる」と、ウミはソラの顔を見上げて言った。
 ソラは、こくりとうなずいた。
「これって、ほんとに生きてる鳥なのかなぁ」
 箱を床に下ろしたソラは、中の鳥を両手で挟むように持ち上げ、下から見上げたり、横にしてみたり、おかしなところがほかにもないか、ためつすがめつして鳥を調べた。
「やめて、乱暴にしないで――」
 立ち上がったウミは、青い鳥を取り返そうと手を伸ばしたが、ソラはくるり、と無視するように背中を向けた。
 ソラが手にした青い鳥は、精巧に作られたロボットのようだった。体をさわっても、ふかふかとして温かく、たっぷりの羽毛に包まれていて、本物の鳥と変わりはなかったが、首の辺りにのぞく細い線は、たどっていくとくるりと輪を描き、首と胴体とをつなぎ合わせてできた、継ぎ目のようだった。
(どこかにバッテリーでも入ってるのかな)
 と、青い鳥の丸く膨らんだ胸を、ソラがちょっと押し気味に触った時だった。
 ジジジッ――と、青い鳥が急に頭を持ち上げた。カクンカクンと、錆びついたクランクのようにぎこちない動きだったが、ぱっちりと見開かれた二つの赤い瞳は、ソラを見上げて、不思議そうに何度も首をかしげた。
「だめっ」と、あっけにとられているソラの手から、ウミが青い鳥を奪い取った。
「そんなに乱暴にする人には、もう貸さない」
コメント
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