くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

機械仕掛けの青い鳥(63)

2019-06-02 20:29:05 | 「機械仕掛けの青い鳥」
 若い警察官は、タイヤを鳴らしながら急ブレーキをかけると、対向車に正面からぶつかりそうになりながら、巧みに方向を変え、サイレンを鳴らして、アクセルを目一杯踏みこんだ。

 車を止めたとたん、後ろからけたたましいサイレンの音が聞こえ、ジョンは思わず運転席の前に深く潜りこみ、息をひそめて姿を隠した。
 タンタン、タタン――と、小気味のいい足音が通り過ぎ、パトカーがその後を追いかけて行った。
 恐る恐る、フロントガラスの下から顔をのぞかせたジョンは、パトカーが通り過ぎたのを確認すると、急いで車のエンジンをかけ、縦列駐車をしていた場所から勢いよく飛び出した。Uターンをした車が、タイヤを鳴らして止まると、ジョンは硬いシフトレバーに手こずりながら、ギアーをチェンジし、引き返そうとした。
 バックミラーに目を向け、後ろから走ってくる車がないか確認すると、斜め後ろの家になにかが立て掛けてあるのを見つけた。シェリルが捨てていった、ライフル銃だった。
 ジョンは迷わず車を降りると、ライフル銃を手に取り、思わぬ収穫に顔をほころばせた。舌なめずりをしながら車に戻ったジョンは、急いでホテルに引き返して行った。まとまった報酬を手に入れるには、どうしても手に入れなければならないものだった。

「成功したら、残りの半分を支払ってやるよ――」

 見たことのない男は、ウィスキーの入ったショットグラスを一気に飲み干すと、そう言って笑った。助けを借りなければ、一人で歩けないくらい、アルコールに飲まれてしまった夜の記憶だった。しかし次の日の朝、目が覚めると、財布の中にはいつの間にか、驚くほどの大金が入っていた。
 夢だったのか、現実だったのか、はじめは信じる気もなかったが、時間が刻一刻と過ぎて行くにつれ、示された期限が日一日と近づいてくるにつれ、残りの報酬が惜しくて、居ても立ってもいられなくなってしまった。
 とりあえず、標的の牧師がいる街まではやって来た。ただ、刑務所を逃げ出し、警察から追われている身では、たとえ多くの現金を持っていても、厳しい取り締まりの目をかいくぐりながら、肝心のライフル銃を手に入れることなど、とうていできはしなかった。
 やっと手に入れた拳銃も、ホテルでうたた寝をしている間に盗まれてしまった。計画を実行することは、もはや絶望的になっていた。
 これで、まとまった金が手に入る――。ジョンは含み笑いを浮かべ、早くも残りの報酬を手に入れたつもりになっていた。

 ――――――  

 ズッキューン――。

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