ギッギギー――と、蝶番が耳障りな音を立てた。
「ごめんくださーい……」と、ソラは心持ち首をすくめながら、薄暗い部屋の中に入っていった。
カーテンが降ろされている部屋は、子供部屋のようだった。壁に向かって、木製の学習机が二つ、並べられていた。机の後ろには、ソラの背丈にちょうど合う位のベッドが、やはり二つ並べられていた。学習机とベッドの間は、椅子が後ろに十分引けるほどの間隔が開けられていた。ベッドとベッドの間も、大人が余裕を持って歩けそうなほど、十分に広く開けられていた。
二人は、誰かベッドで眠っているのではないか、と目をこらしたが、きちんと整えられたベッドには、誰もいなかった。
と、ソラは足下になにかが落ちているのを見つけて、手を伸ばした。
「それって、鳥なの?」ウミが、ソラが拾い上げたものをのぞきこむように見ながら、不思議そうに言った。
「もしかして、ぼく達が追いかけていたのって、この紙の青い鳥だったのかな」
振り返ったソラが持っていたのは、鳥の姿をかたどった模型飛行機だった。いったい誰が飛ばしていたのか、描かれた鳥の絵は、青い鳥をモデルにしたとしか思えないほど、しっかりと特徴を捉えていた。
「なーんだ――」と、ウミが残念そうにため息をついた。
「誰が飛ばしていたのかわからないけどさ、また探し直しだね」ソラは、しかたがないというように小さく首を振った。
「まったく、迷惑なんだから」
プイッと部屋を出たウミは、こわごわ家の中に入ってきた時とは打って変わって、どしんどしんと足音も高く、閉めたドアに向かって、大股で歩いていった。
「えっ――」
外に出ようとドアを開けたウミが、凍りついたように立ちつくした。
「お兄ちゃん……」と、ウミは外を見たまま、消え入りそうな声で言った。
手にした模型をソファーの前のテーブルに置くと、ソラは「どうしたの?」と言いながら、ウミのそばに駆けていった。
目を見開いたウミが、なにかを言おうとして振り返った。けれどソラは、ドアの向こうに広がる景色を見たとたん、なにも聞かなくても、ウミの言おうとしたことが、すぐにわかった。
「なにがあったんだろう……」
ソラはつぶやきながら、半開きになったドアを開けて、外に出た。