「ありがとう……」
マーガレットは、ランタンの灯りを消しながら、照れたように小さく頭を下げた。
「私、マーガレット。青い鳥を追いかけていたら、この森に迷いこんでしまったの。一人で心細かったけど、あなたに会えて、本当に良かったわ」
「――ウミ、その子と仲良くしちゃだめだ」と、木の陰から出てきたソラが、怒ったように言った。
「魔女と一緒にいた子だぞ。きっと、なにかたくらんでいるに違いないさ」
むすっ、と顔をしかめたウミが、ソラを見ながら言った。
「そうかもしれないけど、一人で困ってるんじゃない。どうして、そんなかわいそうなこと言うの」
ウミは、くるりっ、とソラに背を向けて、火のそばに腰を下ろした。
「ごめんね、マーガレット――」
困ったような顔をしたマーガレットは、二人の顔を交互に見ると、ウミにうながされるまま、火に向かってぺたりと腰を下ろした。
「――ちぇ。なにもわかっちゃいないくせに」ソラはつまらなさそうに舌打ちをすると、その場にあぐらをかいて座り、膝に片肘をついて、手にふくれっ面を乗せた。
「どうして、こんなところでキャンプしているの?」
マーガレットが言うと、ウミが目を丸くして、顔をのぞきこんだ。
「どうしてって、あなたも、森で迷子になったんじゃないの……」
マーガレットは、こくりとうなずいた。
「そうよ。でも、森を歩いてたら、一軒のお家を見つけたの。誰かいやしないかと思って、中に入ってみたんだけど、人がいた気配は確かにあるのに、誰一人として姿が見えないの。でも、きっとそのうち帰ってくるに違いないと思って、窓の外を見ながら、ずっと待っていたんだけど――」
「ほかにも、まだ家があったんだ……」
ウミが独りごとのように言うと、マーガレットは不思議そうな顔をして、首をかしげた。ウミがなにを言ったのか、意味がよくわからない様子だった。
「この近くなの。よかったら、あなた達も一緒に来ない? 家の人は誰も帰ってこないし、食べ物もたくさんあるのよ」
二人の話を聞いていたソラが、うれしそうに言った。
「ウミ、行ってみようよ」
ソラを振り返ったウミは、マーガレットに向き直ると、言った。
「ほんとうに、いいの……」
「うん、大丈夫」立ち上がったマーガレットは、たき火の火をランタンに移すと、ウミの手を引きながら、小走りに歩き始めた。