「私達は大声を出しているつもりでも、体が小さい分、やっぱり声も小さくって、聞こえてはいるけど、言葉までは聞き取れないんじゃない」
「それじゃ、どうしようもないじゃないか」ソラは、不機嫌そうに口を尖らせた。「このまま飛行機に乗せられて、どこかまた、知らないところに連れて行かれちゃうよ」
「――ううん、きっとね」と、首を横に振ったウミが、青い鳥を見上げながら言った。「きっと、青い鳥が大きくなったのは、お兄ちゃんと私の事を伝えようとしたからなんだよ。怪我をしてて、あんなに痛がってたのに、自分からガラスにぶつかっていくなんて、変だもの」
「……」青い鳥を見上げたソラが、黙って首をかしげた。
と、「おーい、ここから出してくれー」
ソラはなにを思ったのか、口の横に両手をあててメガホンのようにすると、青い鳥に向かって大きな声を出した。喉が痛いのを我慢して、しゃがれた声を出すソラを見ていたウミも、一緒に口の横に手をあて、青い鳥に向かって大きな声を出した。
「ここから出してー、助けてー」
ピクリと首を動かした青い鳥が、バタバタッと、急にその場で羽ばたき始めた。
「おいおい、どうしたってんだよ」と、再び暴れ始めた青い鳥を見て、少尉が困ったように言った。「わかってるさ。この飛行機は機体の不調によって本隊から遅れ、現在単機で敵艦に向かっている。任務が達成できるかどうかは、運次第だ」
「聞いた?」
と、ウミがソラの顔をのぞきこんだ。
こくり、とソラがうなずいて言った。
「ウミが言ったとおりみたいだ。なんかずれてるけど、もしかしたら、うまく気持ちが伝えられるかもしれないよ」
口の横に手を当てたウミが、青い鳥に向かって言った。
「――ねぇ、私達、どうなっちゃうの。この飛行機は、どこに向かっているの」
チチッ、チチッ……。
そら耳だろうか。少尉はまた、青い鳥の鳴き声が聞こえたような気がした。
「おまえ、本当に鳥なのかい?」少尉は、自分にじっと目を向けている青い鳥を見ると、独り言のように言った。「こんなにきれいな青色の鳥は、見た事がないよ。まるで、絵本から抜け出してきたみたいじゃないか」