「お兄ちゃん、ここ、どこだと思う」
フサッ――
と、青々と葉を茂らせた木の枝が、やさしく吹くそよ風に揺られ、耳をくすぐるような小気味のいい音を立てた。
「どこかの森、なんだよね……」ソラは深々と広がる木々を背にして、振り返った。
ウミは外に出ると、ソラと一緒に辺りを見回した。
「これもやっぱり、青い鳥のしわざなの?」と、ウミがソラに聞いた。
「そうみたいだけど、なんか変だよ」頭上を見上げたソラが、頭をめぐらしながら言った。「青い鳥が、どこにも見あたらない」
「……」難しい顔をしたウミは、口を真一文字に結ぶと、木の上に見え隠れする空を見上げた。
二人が立っているのは、どことも知れぬ深い森の中だった。青々とした葉をたっぷりと茂らせ、塔のように高く、壁のように聳える太い木々は、まるで地上を覆い尽くしている屋根のようだった。ユサユサと揺れる葉の間から、ちらりちらりと見える空は、どこまでも青く広々としていて、やわらかそうな雲だけが、ふわりふわりと気まぐれに漂っていた。
――――……
「どうだい、あの子達の様子は?」
ファァ……と、眠そうにあくびをしながら、シルビアが言った。
「かわいそうに、とっても困っているみたいですわよ、おばさま」
双眼鏡をのぞいているマーガレットが、ガラスのない、木の壁を切り抜いただけの四角い窓から、身を乗り出すようにして外を見ていた。
シルビアは、ふかふかの絨毯の上にゴロリと横になっていた。組んだ腕を枕にして頭をあずけ、片膝を立てて組んだ足を、ぶらんぶらんと、退屈そうに揺すっていた。
「どんな小さなことでもいい、見逃すんじゃないよ」シルビアは、またあくびをしながら言った。
「ハイハイ。わかってますってば、おばさま」と、マーガレットはわざと語尾を強くして、つまらなさそうに言った。
「――さっきからなに言ってんんだい、この子は。ワタシのことは、奥様とお言いって、そう言ってるじゃないか」
虫の居所が悪かったのか、急にかんしゃくを起こしたシルビアが、その場にすっくと立ち上がった。
「まったく、生意気な子だよ。勘違いするのもいい加減におし。ちょっとばかし仕事を言いつけると、すぐにこうだ。私はね、おまえの親戚でも、仲のいいお隣さんでもない。ご主人様だよ」
フサッ――
と、青々と葉を茂らせた木の枝が、やさしく吹くそよ風に揺られ、耳をくすぐるような小気味のいい音を立てた。
「どこかの森、なんだよね……」ソラは深々と広がる木々を背にして、振り返った。
ウミは外に出ると、ソラと一緒に辺りを見回した。
「これもやっぱり、青い鳥のしわざなの?」と、ウミがソラに聞いた。
「そうみたいだけど、なんか変だよ」頭上を見上げたソラが、頭をめぐらしながら言った。「青い鳥が、どこにも見あたらない」
「……」難しい顔をしたウミは、口を真一文字に結ぶと、木の上に見え隠れする空を見上げた。
二人が立っているのは、どことも知れぬ深い森の中だった。青々とした葉をたっぷりと茂らせ、塔のように高く、壁のように聳える太い木々は、まるで地上を覆い尽くしている屋根のようだった。ユサユサと揺れる葉の間から、ちらりちらりと見える空は、どこまでも青く広々としていて、やわらかそうな雲だけが、ふわりふわりと気まぐれに漂っていた。
――――……
「どうだい、あの子達の様子は?」
ファァ……と、眠そうにあくびをしながら、シルビアが言った。
「かわいそうに、とっても困っているみたいですわよ、おばさま」
双眼鏡をのぞいているマーガレットが、ガラスのない、木の壁を切り抜いただけの四角い窓から、身を乗り出すようにして外を見ていた。
シルビアは、ふかふかの絨毯の上にゴロリと横になっていた。組んだ腕を枕にして頭をあずけ、片膝を立てて組んだ足を、ぶらんぶらんと、退屈そうに揺すっていた。
「どんな小さなことでもいい、見逃すんじゃないよ」シルビアは、またあくびをしながら言った。
「ハイハイ。わかってますってば、おばさま」と、マーガレットはわざと語尾を強くして、つまらなさそうに言った。
「――さっきからなに言ってんんだい、この子は。ワタシのことは、奥様とお言いって、そう言ってるじゃないか」
虫の居所が悪かったのか、急にかんしゃくを起こしたシルビアが、その場にすっくと立ち上がった。
「まったく、生意気な子だよ。勘違いするのもいい加減におし。ちょっとばかし仕事を言いつけると、すぐにこうだ。私はね、おまえの親戚でも、仲のいいお隣さんでもない。ご主人様だよ」