「ちぇっ、こんな時ばっかり、お兄ちゃんが先頭なんだからさ」
ソラはつまらなさそうに言うと、玄関の正面に立ち、「ごめんくださーい、誰かいませんかー」と言いながら、恐る恐る家の中に入っていった。
ギシリ、ギシシ――
と、一歩進むたび、古ぼけたフローリングの床が、乾いた音を鳴らした。
「ごめんくださーい、誰かいませんかー」
ソラが言うと、目の前の壁に鳥の影がサッと浮かび上がった。鳥の影は、あっと息を飲む間に急降下を始めると、すぐに小さくなって見えなくなってしまった。
「今の、見た?」思わず足を止めたソラが、真っ直ぐ前を向いたまま言った。
「お兄ちゃん、やっぱり、この家の中に青い鳥がいるんだよ」ソラと同じく、鳥の影に気がついたウミが、どこかうわずった声で言うと、スタンとためらうことなく家の中に入り、後ろ手にばたん、と勢いよくドアを閉めた。
バタンッ――
と、ドアが閉まった大きな音に驚き、あわてて足を止めたソラが、後ろを振り返って怒ったように言った。
「おい、冗談やめろよな。心臓が口から飛び出してくるかと思ったよ」
ほっと胸をなで下ろすソラを見ながら、ウミが言った。
「ドアを閉めたから、きっと、もうどこにも出口はないはず。とうとう、青い鳥を捕まえられるかもしれないね」
ソラは大きくうなずくと、影が消えたところに向かって、慎重に足を進めていった。閉めたドアの前に立っていたウミも、どこかおっかなびっくりだったが、家の中にそうっと、足音を忍ばせるように入っていった。
ギシリ、ギシシ――
テレビのある部屋の奥、ドアが半分ほど開いている部屋があった。カーテンが閉められているのか、中の様子は暗くてよくわからなかった。赤茶色をした三人掛けのソファーの後ろを通り、おとなしい花柄の壁に沿って進むと、ソラは勇気を振り絞って、ドアノブをつかんだ。
ウミは、ソラの後ろにぴったりと張りついていた。ソラが着ているシャツの背を、手に汗をかくほどギュッとかたくつかみながら、首を伸ばすように顔をのぞかせ、不安そうにドアの奥をうかがっていた。
ソラはつまらなさそうに言うと、玄関の正面に立ち、「ごめんくださーい、誰かいませんかー」と言いながら、恐る恐る家の中に入っていった。
ギシリ、ギシシ――
と、一歩進むたび、古ぼけたフローリングの床が、乾いた音を鳴らした。
「ごめんくださーい、誰かいませんかー」
ソラが言うと、目の前の壁に鳥の影がサッと浮かび上がった。鳥の影は、あっと息を飲む間に急降下を始めると、すぐに小さくなって見えなくなってしまった。
「今の、見た?」思わず足を止めたソラが、真っ直ぐ前を向いたまま言った。
「お兄ちゃん、やっぱり、この家の中に青い鳥がいるんだよ」ソラと同じく、鳥の影に気がついたウミが、どこかうわずった声で言うと、スタンとためらうことなく家の中に入り、後ろ手にばたん、と勢いよくドアを閉めた。
バタンッ――
と、ドアが閉まった大きな音に驚き、あわてて足を止めたソラが、後ろを振り返って怒ったように言った。
「おい、冗談やめろよな。心臓が口から飛び出してくるかと思ったよ」
ほっと胸をなで下ろすソラを見ながら、ウミが言った。
「ドアを閉めたから、きっと、もうどこにも出口はないはず。とうとう、青い鳥を捕まえられるかもしれないね」
ソラは大きくうなずくと、影が消えたところに向かって、慎重に足を進めていった。閉めたドアの前に立っていたウミも、どこかおっかなびっくりだったが、家の中にそうっと、足音を忍ばせるように入っていった。
ギシリ、ギシシ――
テレビのある部屋の奥、ドアが半分ほど開いている部屋があった。カーテンが閉められているのか、中の様子は暗くてよくわからなかった。赤茶色をした三人掛けのソファーの後ろを通り、おとなしい花柄の壁に沿って進むと、ソラは勇気を振り絞って、ドアノブをつかんだ。
ウミは、ソラの後ろにぴったりと張りついていた。ソラが着ているシャツの背を、手に汗をかくほどギュッとかたくつかみながら、首を伸ばすように顔をのぞかせ、不安そうにドアの奥をうかがっていた。