くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

機械仕掛けの青い鳥(70)

2019-06-09 21:42:17 | 「機械仕掛けの青い鳥」
 双眼鏡を下に降ろしたマーガレットは、窓から離れると、目を剥いて怒っているシルビアの正面に向かい、

「申し訳ございません……」

 踵をそろえて立つと、両手でスカートの裾をつまみ上げ、後ろ足を引きながら、深々と頭を下げた。
「よしよし。そうだよ、わかればいいんだよ」と、両手を腰に当てたシルビアは、気持ちよさそうに軽く目を閉じながら、自慢するように胸を張って言った。「いつもそのくらい素直でいてくれりゃあ、私だって、鬼じゃないんだ、頭ごなしに叱りつけたりなんて、しやしないのさ」
「――あっ、おばさま、二人が動き出しましたわ」
 マーガレットはいつの間にか、窓から身を乗り出して双眼鏡をのぞきこみ、外の様子をうかがっていた。

「キーッ――」

 と、歯を剥きだして顔をくしゃくしゃにしたシルビアが、耳を塞ぎたくなるような奇声を上げた。
「おまえったら、何度言ったらわかるんだい。人の話は最後まで聞かなきゃだめじゃないか」
 シルビアの声が聞こえていないのか、夢中になって窓の外を見ているマーガレットが言った。
「――あら、おばさま、あの子達、森の中に入っていこうとしていますわ……」
「なんだって……」
 シルビアは、人が変わったように怒りを収めると、マーガレットと交代して、窓の外に顔をのぞかせた。
「ちょっと双眼鏡を貸しておくれ。どれどれ、ナニナニ――」
 シルビアがいるのは、ソラ達がいる家のはるか頭上。顔をうんと上に向け、やっと見えるほど高い場所にある、木の上に作られた三角屋根の小屋だった。
 眼下に見えるソラとウミは、家の外に出て、なにやら前後左右に広がる森を見比べていた。
「おやおやホントだね、あの子達、森の中に行こうとしてるよ」と、シルビアは困ったような顔をして言った。「あの小僧、近所の悪ガキとばかり思ってたけど、急にしっかりし始めたじゃないか。けどね、残念だけど、ここは私が作った森なんだ。食べ物だってありゃしないし、外にだって自由に出られやしないよ」

 クックックッ……。
コメント
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