ギョロリと目を剥いた大きな顔が、首を回して後ろを向いていた。口をあんぐりとさせたウミは、男の顔をまじまじと見上げたまま凍りつき、腰が抜けたように力なく、膝立ちになっていた。
チチッ、チチッ……。
青い鳥が、ウミの頭上に舞い上がった。大きな影が、短い鳴き声と共にウミの顔を横切っていった。
「イテテテテ……」壁からずり落ちたソラは、両手に息を吹きかけながら、赤くなった手の平を、何度もせわしく擦り合わせた。
バサリ、バササ――
と、翼の羽ばたく音が聞こえた。
ソラは、頭上を横切った影に驚き、首をすくめるように顔を上げた。
「おまえっ、どこから入ってきたんだよ」
後ろを向いた男が言うと、飛行機がググン、とまた思わぬ方向に流されてしまった。
「くそっ、ちゃんと動け――」
前を向き、操縦桿を握り直した三浦少尉の肩越しから、青い鳥が飛び出してきた。よろめいた青い鳥は、主計器板の上に落ちると、わずかに弾んでガラス張りの風防の奥に転がった。バタバタと翼を羽ばたかせながら、青い鳥は何度もガラスに体をぶつけ、おびえたように暴れていた。
――――
ウミの手を離れた青い鳥は、どういうわけか数倍にも巨大化し、二人の頭上を越えて、正面のガラスにぶつかっていった。ソラは、座りこんでいるウミのそばに急いで行くと、壁の上で見た事を話して聞かせた。
ブルルル、ルルーン
プロペラがうなりを上げると、周りを覆っていた真っ白い雲が、あっという間に後ろに流れ去り、まぶしい光が操縦席に充ち満ちた。
あちらこちらに見える雲の間を、深緑色をした機体が、規則的なエンジン音を響かせながら、風を切るように飛んでいた。青い空にも負けないほど青く澄み渡った海が、水平線の向こうまで、延々と続いているのが見えた。
「よし、その調子だ」
雲を抜けた機体が、ゆったりとした飛行を取り戻した。ほっと息をついた少尉が、落ち着いた様子の青い鳥に話しかけた。
「おまえ、この飛行機がどこに行くのか、知っているのかい」
風防ガラスの奥にいる青い鳥は、キョトンとした目を少尉に向けた。
チチッ、チチッ……。
青い鳥が、ウミの頭上に舞い上がった。大きな影が、短い鳴き声と共にウミの顔を横切っていった。
「イテテテテ……」壁からずり落ちたソラは、両手に息を吹きかけながら、赤くなった手の平を、何度もせわしく擦り合わせた。
バサリ、バササ――
と、翼の羽ばたく音が聞こえた。
ソラは、頭上を横切った影に驚き、首をすくめるように顔を上げた。
「おまえっ、どこから入ってきたんだよ」
後ろを向いた男が言うと、飛行機がググン、とまた思わぬ方向に流されてしまった。
「くそっ、ちゃんと動け――」
前を向き、操縦桿を握り直した三浦少尉の肩越しから、青い鳥が飛び出してきた。よろめいた青い鳥は、主計器板の上に落ちると、わずかに弾んでガラス張りの風防の奥に転がった。バタバタと翼を羽ばたかせながら、青い鳥は何度もガラスに体をぶつけ、おびえたように暴れていた。
――――
ウミの手を離れた青い鳥は、どういうわけか数倍にも巨大化し、二人の頭上を越えて、正面のガラスにぶつかっていった。ソラは、座りこんでいるウミのそばに急いで行くと、壁の上で見た事を話して聞かせた。
ブルルル、ルルーン
プロペラがうなりを上げると、周りを覆っていた真っ白い雲が、あっという間に後ろに流れ去り、まぶしい光が操縦席に充ち満ちた。
あちらこちらに見える雲の間を、深緑色をした機体が、規則的なエンジン音を響かせながら、風を切るように飛んでいた。青い空にも負けないほど青く澄み渡った海が、水平線の向こうまで、延々と続いているのが見えた。
「よし、その調子だ」
雲を抜けた機体が、ゆったりとした飛行を取り戻した。ほっと息をついた少尉が、落ち着いた様子の青い鳥に話しかけた。
「おまえ、この飛行機がどこに行くのか、知っているのかい」
風防ガラスの奥にいる青い鳥は、キョトンとした目を少尉に向けた。