青い鳥を見上げていたソラが、不意に目を下ろすと、自分の体が少しずつ、地面から持ち上がっているのに気がついた。
「うわっ、浮いてる」
ソラが驚いて声を上げると、同じように浮き上がっているウミが、ソラを見て言った。
「お兄ちゃん、体から光が出てるよ」
「えっ――」足をばたつかせたソラが自分の手を見ると、指先から徐々にまぶしい光があふれ、だんだんと全身に広がっていくのがわかった。「なんだろう、これ……」
宙に浮かびながら頭を地面に向けたウミが、
「マーガレットも、一緒に」
と、悲しそうな顔をしているマーガレットに、手を伸ばした。
「ごめんね、一緒には行けないの」マーガレットは、ニッコリと笑顔を浮かべて言った。「だって私、人形なんだもん」
ウミが耳を疑っていると、マーガレットの体が見る見るうちに強ばり、ニッコリとやさしそうな笑みを浮かべたまま、木目のくっきりと浮き出た人形に変わってしまった。
「マーガレット……」と、ウミは、ぴくりとも動かなくなったマーガレットを見ながら、信じられないというように言った。
「うわあああっ」
と、ソラがウミの前をかすめ過ぎていった。驚いたウミがあわてて顔を上げると、にわかに吹きつけた強風が、渦を巻きながら二人をグングン高く舞い上がらせた。
「キャー」
と、大きく横にあおられたウミが、恐ろしさのあまり目をつむり、悲鳴を上げた。
「ウミ、手を伸ばして――」
ウミがうっすらと目を開けると、強い風に振り回され、上下に揺れているソラが、手を伸ばして近づいて来るのが見えた。
「――お兄ちゃん」
ウミの伸ばした手が、ソラの手をしっかりつかむと、バツンと布が裂ける音が聞こえ、二人は、目もくらむほど真っ白い光の中に飲みこまれていった。