くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

機械仕掛けの青い鳥(77)

2019-06-16 20:25:11 | 「機械仕掛けの青い鳥」
 先ほどまでいたシルビアの姿は、どこにも見えなかった。
「誰か人の声がしたと思ったんだけど」と、ソラが目をこすりながら言った。
「申し訳ありませんわ。青い鳥にそっくりな鳥を見つけたものですから、ついつい大きな声が出てしまったんですのよ」
「ほんと!」と、ソラは身を乗り出して言った。「でも、こんなにおいしい料理がお腹いっぱい食べられるんなら、このままずっと、ここにいたいなぁ……」
 ソラはつぶやくように言うと、ソファーに座り直し、心地よさそうな寝息を立てて、またすやすやと眠ってしまった。
 ソラとウミは、一度も目を覚ますことなく、明くる朝までぐっすりと眠り続けた。
 …………
「イタタタタ……」と、横になったまま背伸びをしたソラは、顔をしかめた。窮屈な姿勢のままソファーで寝ていたせいで、肩や首が寝違えたように痛んでいた。
「痛い――腕がしびれちゃってる」と、体を起こしたウミは、力の入らない腕を顔の前に立て、ぶらんぶらんさせながら言った。

「おはよう。さぁ早く顔を洗ってきて、朝ご飯はもうとっくにできあがってますわよ」

 と、二人の声に気がついたマーガレットが、掃除の手を休めて顔をのぞかせた。二人が寝ている間も、マーガレットは嫌がることなく、一人で家の中の仕事をてきぱきと片づけていた。
 ソラとウミは、眠い目をこすりこすり立ち上がると、ロボットのようなぎこちない動きで、洗面所に向かっていった――。

「お兄ちゃん。青い鳥、いつ探しに行く?」と、ウミはソラの顔をのぞきこむように言った。「家の人も、いつ帰ってくるかわからないし、今ある食べ物も、補充しなければすぐになくなっちゃうでしょ」
 二人は、遅い朝食を食べた後、腹ごなしに散歩に出ていた。食事の後、ウミは後片づけをするマーガレットを手伝おうとしたが、そんな事はしなくていいから、と二人そろって外に追い出されてしまった。
「考えたんだけどさ」と、ウミと並んで歩いているソラが、足下の地面に目をやりながら言った。「家の人が帰ってくるまで、ここにいてもいいんじゃないかなって、そう思うんだけど」
「――どうしちゃったの、そんなのお兄ちゃんらしくない」と、ウミは立ち止まって言った。「私もマーガレットも、元の場所に戻ろうとしてがんばってるのに」
「でも、ここにいれば食べ物はあるし、ふかふかのベッドだってあるじゃないか」と、ウミを追い越して立ち止まったソラが、振り返って言った。「寒くて火をおこしたり、夜中にお腹が減ってべそをかくなんてこと、もう二度としなくて済むんだよ」
「いつまでもここにいられるわけないよ。今は留守にしている人達だって、いい人とは限らないし、早くここを出て、青い鳥を捜しに行かなくちゃ」
 はっ――と、ウミは思い出したように言葉を途切った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする