少し風邪気味だったので、うがいをしようと洗面台においてあるコップを使おうとしたが、大きいのと小さいのが二つある。無意識に小さいのを手に取ったが、大きいのは男性用なんだろうと自然に感じた。部屋を見回しながら叔母の近くに戻ってくる。
「何をあちこち見てるの、まだ自分の住みか探し?」
「うん、まあそういうところ」
弥生は少し気が削がれてしまった。さっきの冗談がもし本当だったら、簡単に引っ越して来れそうにない。
「桜ヶ丘って言うくらいだから、桜で有名だったのかな」
「昔はね、駅周辺が名所だったそうよ」
「今でも坂を上っていくところの桜なんか、私好きよ、ここは駅からも近いし、いい場所ね」
「そろそろ出かけた方がいいんじゃない」
「いいわよ、待たせる位で、私挨拶だけしてすぐまたここに戻ってきたいから」
「でもお昼を一緒に食べるつもりでいるわよ、きっと」
「やだなあ、叔母さん何か理由作ってよ」
「我慢しなさい、その代わり後で好きな服でもバッグでも買ってあげるから」
「そう、それならしょうがないか」
弥生はブランド物のハンドバッグがとても欲しかったのである。
店まで10分も掛からないが、約束より少し遅れて着いた。
健吾が立ち上がり迎える用意をしている。
「勝野さん、娘の弥生です」
「初めまして、勝野千恵子と申します」
「高辻弥生です」
「あの、息子の慎一です」
そういって紹介された中学生の男子は、黙って立ち上がり頭を下げたが、痩せ型で背が高く内向的にみえた。
「健吾さん、私が一緒にお邪魔してすいません」
久美子は、弥生が固まっているのが明らかだったので、何でもいいから喋らなければ、と内心汗をかいていた。
「いえ、とんでもない、いつも頼りにしてしまって、」
「織田久美子と申します」
「勝野です、お話は度々伺っています」
「何をあちこち見てるの、まだ自分の住みか探し?」
「うん、まあそういうところ」
弥生は少し気が削がれてしまった。さっきの冗談がもし本当だったら、簡単に引っ越して来れそうにない。
「桜ヶ丘って言うくらいだから、桜で有名だったのかな」
「昔はね、駅周辺が名所だったそうよ」
「今でも坂を上っていくところの桜なんか、私好きよ、ここは駅からも近いし、いい場所ね」
「そろそろ出かけた方がいいんじゃない」
「いいわよ、待たせる位で、私挨拶だけしてすぐまたここに戻ってきたいから」
「でもお昼を一緒に食べるつもりでいるわよ、きっと」
「やだなあ、叔母さん何か理由作ってよ」
「我慢しなさい、その代わり後で好きな服でもバッグでも買ってあげるから」
「そう、それならしょうがないか」
弥生はブランド物のハンドバッグがとても欲しかったのである。
店まで10分も掛からないが、約束より少し遅れて着いた。
健吾が立ち上がり迎える用意をしている。
「勝野さん、娘の弥生です」
「初めまして、勝野千恵子と申します」
「高辻弥生です」
「あの、息子の慎一です」
そういって紹介された中学生の男子は、黙って立ち上がり頭を下げたが、痩せ型で背が高く内向的にみえた。
「健吾さん、私が一緒にお邪魔してすいません」
久美子は、弥生が固まっているのが明らかだったので、何でもいいから喋らなければ、と内心汗をかいていた。
「いえ、とんでもない、いつも頼りにしてしまって、」
「織田久美子と申します」
「勝野です、お話は度々伺っています」