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再会 50

2008-07-09 04:45:54 | 残雪
その日の夜、かおりを旅館に呼んで、夕食を一緒に取る事にした。
客室で食事をするのは初めてだといって、素直に喜んでいる。
「好きなものを頼んでいいのよ、いつも助けて貰っているんだから」
春子は妹をみるように、かおりに接している。
「お酒も少しは飲んでいいんだろう」
寺井は若い娘を酔わせてみたくなった。
「かおりちゃん、飲めるんでしょう、ここで育った人だから」
「お祝いの時くらいしか飲んだことはないけど」
「じゃあ、三人でお祝いをしましょう」
「なにを祝うのですか」
「決まってるでしょう、私達の未来によ」
「未来に?」
「そう、特にあなたのこれからに乾杯!」
春子はビールを美味しそうに、一気に飲み干した。
かおりは、ゆっくりだが真顔で飲んでいる。
30分程すると、寺井はもう顔が大分赤くなってきた。
「修さんは、この中で一番弱そうね」
「春子さんに敵うわけはないけど、かおりさんも結構強そうだね」
「顔にはあまりでないんですけど」
「かおりちゃんは私より飲めるようになるわ、あなたはこれから大人の世界に入って、どんどん変っていくから」
「そうかしら、まだ味がいいとか、分からないけど」
「これから、どういう仕事をしていきたいの?」
寺井は彼女の将来に興味を覚えた。
「本当は学校に通って、資格をいろいろ取りたいんです」
かおりは寺井を、初めてまっすぐ見て話した。
「修さん、お願いよ、かおりちゃんを応援してあげてね」
「それは僕に出来る限り、力になるよ」
「でも、今は時間がないんです」
「ねえ、思い切って東京へ行っちゃいなさいよ」
「だって家の事とか、弟もいるでしょ、無理よ」
「大丈夫よ、いざとなったら私が面倒をみるし叔父も頼れるから、周りにも親戚はいるでしょ、何とかなるわよ」
「でも・・」
かおりは迷った瞳で寺井の顔を見た。
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