「ゆりこさんには、きっと大事な人がいらっしゃるでしょうけど、それでも僕は構わないです」
「どうしたの、急に改まって」
「だから、僕のことも少しは考えて頂ければと」
「前にも話したでしょう、決まった人はいませんって」
「本当にいないんですね?」
「そうよ、明日からは分からないけど」
「今日まではいないんだ」
嬉しそうな田口の顔を見ているゆりこも楽しくなってきた。
「私も名前を呼ばれたから、これからは良太さん、て呼ばせて貰います」
「光栄です、一歩近づけたみたいで」
「そんな、仕事仲間で同士としてですよ」
「それでいいんです」
「面白い方ね」
二人が個人的に会った初夏の頃から、デパートの売り上げが伸びはじめ、益々忙しくなっていった。
工場は中国にあり、発注から輸入するまでのタイミングが際どくなる事が多い。
いままでは輸入代行業者に任せっきりにしていたが、こちらの要求通りに商品を入荷させるは、現地の状況に詳しい人材が必要になっていた。
そうした折、6月の株主総会で人事の発表があり、新しい役員紹介の社内報が、八王子営業所にもようやく届いた。
ゆりこは昼休みに珍しく会社にいて、それをぼんやり見ていたが、最後の行に、役員待遇として黒木 卓の名前をみつけた。
黒木といえば、府中の 椿 によく来ていた男性と同じ名前だが、関連があるのだろうか。
気になったので、新宿本社にいる同期の阿部友恵と、金曜の夜久し振りに本社近くで会う事になった。
「阿部さん、同期で独身なのは私達だけになってしまったわね」
「実は私もね、今年の秋に決まったのよ」
「そうなの、おめでとう、呼んでくれるんでしょう」
「当然よ、沢田さんは一番の友達ですもの、ところで用事ってなんなの?」
「人事のことばかり聞いて申し訳ないけど、今度の役員待遇になった黒木 卓 だけど」
「どうしたの、急に改まって」
「だから、僕のことも少しは考えて頂ければと」
「前にも話したでしょう、決まった人はいませんって」
「本当にいないんですね?」
「そうよ、明日からは分からないけど」
「今日まではいないんだ」
嬉しそうな田口の顔を見ているゆりこも楽しくなってきた。
「私も名前を呼ばれたから、これからは良太さん、て呼ばせて貰います」
「光栄です、一歩近づけたみたいで」
「そんな、仕事仲間で同士としてですよ」
「それでいいんです」
「面白い方ね」
二人が個人的に会った初夏の頃から、デパートの売り上げが伸びはじめ、益々忙しくなっていった。
工場は中国にあり、発注から輸入するまでのタイミングが際どくなる事が多い。
いままでは輸入代行業者に任せっきりにしていたが、こちらの要求通りに商品を入荷させるは、現地の状況に詳しい人材が必要になっていた。
そうした折、6月の株主総会で人事の発表があり、新しい役員紹介の社内報が、八王子営業所にもようやく届いた。
ゆりこは昼休みに珍しく会社にいて、それをぼんやり見ていたが、最後の行に、役員待遇として黒木 卓の名前をみつけた。
黒木といえば、府中の 椿 によく来ていた男性と同じ名前だが、関連があるのだろうか。
気になったので、新宿本社にいる同期の阿部友恵と、金曜の夜久し振りに本社近くで会う事になった。
「阿部さん、同期で独身なのは私達だけになってしまったわね」
「実は私もね、今年の秋に決まったのよ」
「そうなの、おめでとう、呼んでくれるんでしょう」
「当然よ、沢田さんは一番の友達ですもの、ところで用事ってなんなの?」
「人事のことばかり聞いて申し訳ないけど、今度の役員待遇になった黒木 卓 だけど」