「こんど新しい役員さんが来られましたね」
「黒木君なんだけど、彼を入れたのも僕なんだよ」
ゆりこは漸く今日の目的に近づいてきた。
「誰も知らない方なんですけど」
「そう、不動産業は長くやっていて、うちの会社もテナントビルを探していた時、僕は何回かあっているんだ」
「国立の、前の所長も知り合いだったのではないですか?」
「よく知っているね、滝沢所長が急に辞めたので、身辺調査をした時、黒木君の名前も出てきたけど、会社には関わりがない事が分かったんだ」
山口は黒木を信用しているようだ。
会場に戻ってみると、その黒木は新役員たちの輪の中で、大人しそうにしている。
「黒木君、ちよっと」
山口は手招きで呼んだ。
「紹介しておこう、沢田君だ、君は暫く中国へ行ったきりになるが、僕がいない時は、代理を彼女にやって貰う予定だからな、我々三人が最初の中国貿易担当になる」
それを聞いた黒木が慌てた様子で近寄ってきた。
「黒木です、この度山口常務にお世話になる事になりました、宜しくお願いします」
ゆりこはどう答えてよいか分からず、会釈しかできなかった。
「常務、私に代理なんて無理ですよ」
黒木が離れた後、思わず愚痴がでてしまった。
「最初は電話の取次ぎでもやってくれればいいんだよ、本格的に動き出すのは来年だから」
ゆりこはよっぽど断ろうかと思ったが、黒木との接点が多くなりそうなので、様子を見る事にした。
新規開拓は大変だが、地区別に力を入れようと意見が一致して、田口とゆりこはJR横浜線に乗り、みなみのを訪れた。
熟成した多摩に比べ、駅が出来てからまだ10年ちょっとの正にニュータウンである。
駅前からなだらかな上り坂が西側に続き、歩きやすい。住宅街の中に、小さくて洒落たカフェやレストランがある郊外の町は、ドラマの一場面を作れる様な新しい魅力がある。
「黒木君なんだけど、彼を入れたのも僕なんだよ」
ゆりこは漸く今日の目的に近づいてきた。
「誰も知らない方なんですけど」
「そう、不動産業は長くやっていて、うちの会社もテナントビルを探していた時、僕は何回かあっているんだ」
「国立の、前の所長も知り合いだったのではないですか?」
「よく知っているね、滝沢所長が急に辞めたので、身辺調査をした時、黒木君の名前も出てきたけど、会社には関わりがない事が分かったんだ」
山口は黒木を信用しているようだ。
会場に戻ってみると、その黒木は新役員たちの輪の中で、大人しそうにしている。
「黒木君、ちよっと」
山口は手招きで呼んだ。
「紹介しておこう、沢田君だ、君は暫く中国へ行ったきりになるが、僕がいない時は、代理を彼女にやって貰う予定だからな、我々三人が最初の中国貿易担当になる」
それを聞いた黒木が慌てた様子で近寄ってきた。
「黒木です、この度山口常務にお世話になる事になりました、宜しくお願いします」
ゆりこはどう答えてよいか分からず、会釈しかできなかった。
「常務、私に代理なんて無理ですよ」
黒木が離れた後、思わず愚痴がでてしまった。
「最初は電話の取次ぎでもやってくれればいいんだよ、本格的に動き出すのは来年だから」
ゆりこはよっぽど断ろうかと思ったが、黒木との接点が多くなりそうなので、様子を見る事にした。
新規開拓は大変だが、地区別に力を入れようと意見が一致して、田口とゆりこはJR横浜線に乗り、みなみのを訪れた。
熟成した多摩に比べ、駅が出来てからまだ10年ちょっとの正にニュータウンである。
駅前からなだらかな上り坂が西側に続き、歩きやすい。住宅街の中に、小さくて洒落たカフェやレストランがある郊外の町は、ドラマの一場面を作れる様な新しい魅力がある。